アニメ『セーラームーン』シリーズ彩る名曲たち 「ムーンライト伝説」から「月色Chainon」まで、大人も惹きつける魅力を考察
1991年より少女漫画雑誌『なかよし』で連載され、単行本の累計発行部数は全世界で3,000万部を突破。テレビアニメシリーズの最高視聴率は16.3%と、少女だけではなく大人の女性や男性をも虜にした『美少女戦士セーラームーン』(以下、『セーラームーン』)。2014年には武内直子による原作を忠実に描いた新作アニメーション『美少女戦士セーラームーンCrystal』がスタートし、25周年プロジェクトとして製作が発表された劇場版『美少女戦士セーラームーンEternal』前編がついに1月8日公開となった。
主人公・スーパーセーラームーン/月野うさぎをはじめとする愛と正義のセーラー戦士たちがスクリーンに登場するのは実に25年ぶり。原作4期「デッド・ムーン編」にあたる、ちびうさとペガサス(エリオス)の初恋と戦士たちの成長した姿を描く。
どんなに時が経っても色褪せない『セーラームーン』の魅力。それは、個性豊かなキャラクターと女の子なら誰もが憧れるコスチュームや変身アイテムの可愛さはもちろん、本格的な敵との戦闘シーン、そして、少女向けとは思えない繊細な心理描写とともに描かれる人間ドラマだろう。正直子どもの頃にはすべてを理解することはできなかったが、大人になって見返すとその作り込まれたストーリーに驚かされる。
そんな『セーラームーン』の魅力をより強固なものにしているのが、これまた大人も惹きつけられる楽曲の数々。主題歌だけではなくセーラー戦士たちのキャラソンまで、数え切れないほどの楽曲がこれまで発表されている。これは個人的な思い出で、なおかつオリジナル曲でもないが、『美少女戦士セーラームーンS』第99話で挿入歌として狩人の「あずさ2号」が使われていたのは幼いながらに衝撃的だった。
誰もが知っている『セーラームーン』の代表曲といえば、アイドルグループDALIが歌う初代オープニング主題歌の「ムーンライト伝説」だろう。テレビ番組のアニソンランキングで必ずと言っていいほど上位にランクインするこの曲は、B.B.クィーンズやDEENといった名だたるアーティストの曲も手掛ける小田佳奈子が作詞、川島だりあ(小諸鉄矢名義)が作曲を担当している。
普通女の子たちが変身して戦うファンタジーと聞けば、思い切りキュートでポップな楽曲を想像してしまう。対して「ムーンライト伝説」は、短調で叙情的なメロディ。そして、何より〈ゴメンね 素直じゃなくて〉という出だしのフレーズで心を持っていかれる。〈月の光に導かれ何度も巡り会う〉という歌詞から分かるように、この曲は前世からの恋人であるタキシード仮面(地場衛)を想うセーラームーン(うさぎ)の気持ちを歌っているのだが、そこに描かれている切ない乙女心は大人になっても理解できるものだ。
一方、『美少女戦士セーラームーンR』のEDテーマとなった石田よう子(現在は石田燿子)が歌う「乙女のポリシー」は明るいメロディで、うさぎのひたむきさが表現されている。ただ可愛らしいだけではなく、〈どんなピンチのときも絶対あきらめない〉〈コワいものなんかないよね〉といった前向きな歌詞が印象的。『セーラームーン』は平和な日常と大切な人のために戦うセーラー戦士たちの物語であり、それを観ている女の子たちに、守られるだけではなく時には誰かのため、自分の夢のために一歩踏み出す勇気を与えてくる楽曲が多い。
『美少女戦士セーラームーンSuperS』後期、そして今回の映画でも後編のエンディングテーマに起用されているポップチューン「“らしく”いきましょ」もその一つ。こちらは原作者である武内自身が作詞を担当しており、軽快な伴奏とともに“思春期エイジ”、子どもと大人の狭間で揺れ動く恋心が綴られている。〈年上のヒトとふたまたかけてる〉というフレーズなどは特に大人っぽく、この曲が流れた当時はドキッとさせられた人も多いのではないだろうか。