『白いページの中に / 朝が来るように』インタビュー
Leolaが語る、映画『ホテルローヤル』主題歌と表現のターニングポイント 「等身大の自分に近づけたい」
11月13日、Leolaのニューシングル『白いページの中に/朝が来るように』がデジタルリリースされた。「白いページの中に」は11月13日公開の映画『ホテルローヤル』主題歌で、1978年にリリースされ、これまでも多くのアーティストが歌い継いできた柴田まゆみの名曲カバーとなっている。これまでハッピーな鼓動感が詰まったボーカルで、たくさんのチアフルな曲を生み出してきたLeolaだが、今回の「白いページの中に」ではこれまでのLeola像とはまた違う、ひとりの歌い手としてより繊細に、エモーショナルに歌の世界を描こうという姿が垣間見える。誰の心にもある、ノスタルジックで普遍的な思い出と寄り添うような、温かな声がやさしい。
今年は第2章を迎えるくらいの気持ちだと語るLeola。その大きな1曲にもなりそうな今回のカバーに至るきっかけと、現在の思いを語ってもらった。(吉羽さおり)
「想像力を掻き立てる歌じゃなきゃいけない」
ーー今回どのような経緯で「白いページの中に」をカバーすることになったのですか。
Leola:これは、武(正晴)監督のリクエストで映画の主題歌として「白いページの中に」を使いたいというのがあったんです。それで、この曲を歌ってくれる人を探しているということで、いろんな方を伝ってLeolaがいいんじゃないかという声を上げてくださったらしくて。
ーーこれまでのLeolaさんのイメージとは違った曲で、また歌い方も変化がありますね。このお話が来たときはどう感じましたか。
Leola:最初この曲を聴いたときに、この曲に含まれている世界がすごく広いなって思ったんです。趣がある曲で、とても奥が深いなと思ったので、「すべてをちゃんと表現できるのかな?」って不安になりましたね。
ーートラック自体はアレンジまででき上がっていて、そこに歌を入れるような感じで?
Leola:はい。このアレンジを聴いたとき、新しくなっているんだけど、原曲の良さを残しつつ、さらに優しく素朴な感じに仕上げてあったので。より原曲の世界を崩さないように歌わなきゃいけないなと思いました。今までの自分の歌い方とも違うものにしなきゃいけないかなっていうのも考えながら歌っていました。
ーー確かに原曲へのリスペクトが高いアレンジになっていますね。「白いページの中に」はこれまでいろんな方が歌ってきた曲でもあって、それぞれのアレンジがあったと思うのですが、こうした原曲を忠実に彩ったアレンジだからこそ、より歌にスポットが当たるカバーだなと感じました。
Leola:そうですよね。この曲は様々な世代の方が歌い継いできた曲で、どんな方がカバーをしているのかを調べて聴かせてもらったりしたんですけど、いろんな「白いページの中に」があってすごいなと思って。なので自分は2020年の女性シンガーとして、この「白いページの中に」という曲の歴史に新たな1ページを重ねることができたらすごく嬉しいなと思いました。実際、歌う前にある程度想像しながら、こんな感じになるのかなと思ってはいたんですけど、子どもっぽく受け取られてもダメだし、かといってすごく大人にするのも違うと思って、あまり声の抑揚をつけず感情を出さないように歌おうというのはありました。柴田まゆみさんがそういうふうに歌っている感じがしたので。
ーー柴田まゆみさんは淡々と景色を描くように歌っていますね。Leolaさんの普段の曲は、グッとテンションを上げて歌う曲も多かったと思うので、まったく違ったアプローチですね。
Leola:いつもは歌詞の言葉を理解して、それが声でちゃんと伝わるように感情を込めることを意識しているんです。ハッピーな曲だったら、ニコニコ笑いながら歌ったりもするタイプなので。ただ今回はまったく違うというか、本当に風景画を描いているようなイメージかもしれないです。
ーーレコーディングまでには、歌い方について試行錯誤はあったんですか。
Leola:一度試しで録らせてもらって、プロデューサーさんと「ここはもっとこうしよう」など意見を交わして。それを一旦持ち帰って、飲み込んで、もう1回レコーディングをするという感じで、時間を空けてもらって録りました。たぶん1日では無理だったなと。この曲って、聴く人によって想像する景色や人が全然違うと思うんです。そこも含めて、想像力を掻き立てる歌じゃなきゃいけないなって。これまでって、あまりそういうことを考えたことがなかったんです。本当に、難しい曲です。
ーーLeolaさん自身は、この曲でどんな風景が浮かんで、またどんな思いを乗せようと?
Leola:この歌詞を読んでいて色っぽさを感じていたんですけど、自分の過去の中にも重なる景色があるなと思って、故郷の風景を思い出しました。例えば、故郷を離れてみてわかった両親の愛情の深さだったり友達との居心地の良さだったり。私は熊本出身なんですけど、地元にいた頃はちょっと嫌だなと思っていた部分も、離れてみてすごく恋しくなったりもして。離れてみてようやく、ああいうのってよかったなとか、今思うとすごく心地よかったんだなとか、元気もらっていたんだなって感じられるのがすごく幸せで。そういう気持ちに重ねて歌っていました。
ーー全体的に憂いのトーンがあるんだけど、そこに感情の機微や温かさなどいろいろなものが含まれている歌声になっていて、Leolaさんはこういう声・表現を持っていたんだなと気づかされました。
Leola:そうなんですよね、自分でもこういう曲を歌えるんだなって思いました。
「映画の役柄をひとついただいたような気持ち」
ーーこういうフォーキーな歌謡曲はこれまであまり歌ってこなかったんですか。
Leola:母がもともと歌謡曲・フォークソングが大好きだったので、カラオケで歌ったりはしていたんですけど。そういうときって自分の声をしっかり聴くというよりも、どちらかというとその楽曲を楽しんで歌っていたので。今の自分の感情と声で表現しなきゃいけないとなったら、向き合い方が全然違うなって思いました。いつもなら、こう表現しようってやってみることが結構すんなりとできたりするんですけど、思ったように声が出ていないことにギャップがあって。思うように歌えないな、どうすればこれを素敵に歌えるんだろうなっていうのは思いました。
ーーちなみにこの曲を歌うと決まってから、実際にレコーディングするまでどれくらいだったんですか。
Leola:最初にお話を聞いたのが昨年末くらいで、レコーディングの2カ月前でした。ちょっと歌ったものをまず監督に聴いてもらって、決定しましたとなってからレコーディングしていたんです。
ーーすごくタイトな時間の中で、変化をしていったんですね。
Leola:モードを切り替えるようなところはありました。この曲に関しては、いつもの感じではダメだなって思って。
ーー今年の4月末から、Instagramで1日1曲のカバーチャレンジをしていたじゃないですか(8月に100曲達成)。その流れもあったので、今回のカバー曲リリースにすんなり繋がってくる部分もありそうです。
Leola:全然狙ったわけじゃないんですけど、いい具合に繋がってよかったなと思ってます(笑)。カバーチャレンジすることも、今年に入ってこの曲を準備していたからというのもあるんですけど、誰かの書いた曲を自分の声で表現してみる面白さを感じ始めていたときでもあって。今年はそういう年になったなと思います。
ーーシンガーとしての面白さに目覚めている?
Leola:そうですね。ただ真似をするのも違うし、「ヒット曲はこういう部分が響いているんだな」「自分の声で歌ったらこうなるんだな」「ギターで弾いてみたらどうなるのかな」とか、そういうところも勉強になりましたし。カバーはすごく楽しかったんです。
ーー自分の声のキャラクターや、こんな部分も出るんだなという発見もありそうですね。
Leola:それこそこの曲もそうなんですけど、これまで元気よくハッピーに歌ってきたので、それとは違った強さだったり、アグレッシブな感じもやってみると意外に好評だったりして。SNSのコメントを見ながら、「こういうのも反応がいいんだな」「じゃあこういうのもアリだね」っていう新たな発見はありました。
ーー映画の予告やCM等もスタートしていますが、曲への反響は届いてきていますか。
Leola:今まではあまりLeolaの音楽に接してこなかった世代の方とかが、映画の予告を見て聴いてくださって、この楽曲を若い子が歌い継いでくれるのは嬉しいっていうコメントを見たりとか。あとは原作者の桜木紫乃さんからも、「思わず泣いてしまいました」という、すごく素敵なコメントをいただけてよかったなって思います。
ーー映画はご覧になっているんですか。自分の歌が作品と重なったときは、どんな印象でしたか。
Leola:不思議な感じでした。原曲の良さを引き継いでいるからこそだと思うんですけど、この映画自体もすごくノスタルジックで、異世界や別の時代に連れて行ってもらえるような映画だと思うんです。そこに自分の声でこの曲がかかったときに、自分も一緒に、その時代にタイムスリップしたような気持ちになって。自分じゃないみたいな感じ(笑)。でも楽曲と映画がぴったりで、すごく不思議な感覚でした。今までも劇場で自分の曲を聴かせてもらうことは何度かあったんですけど、全然違うというか。参加させてもらっているという感じがすごくしました。自分は演じているわけではないんですけど、映画の最後には演じさせてもらった感じ、役柄をひとついただいたような気持ちになりました。「私、歌手役やってるの?」みたいな(笑)。
ーーLeolaさんのこれからにとって、大きな1曲になりそうですね。
Leola:ターニングポイントには確実になるのかなって思います。