ばってん少女隊、ファンと作り上げた“楽しい(=ふぁん)時間” 有観客単独公演で見せたメンバーの成長

 ライブ後半戦に突入すると、「MILLION SUMMERS」「よかよかダンス」と新旧の盛り上げ必至ナンバー、「おっしょい!」「OiSa」と落差の激しい楽曲を立て続けに披露。ふと気づけば前者2曲はKEYTALKの小野武正が手がけた楽曲であり、後者2曲は渡邊忍(ASPARAGUS)の提供楽曲だ。それぞれ初期と現在の楽曲であることから、グループの音楽的進化やそれを表現する実力の向上も実感できたのではないだろうか。中でも、異色中の異色ナンバー「OiSa」は不思議な中毒性を持っており、和傘を使った演出は同曲のMVを彷彿とさせるものがあった。この曲も今後のグループにとって、なくてはならない1曲に成長することだろう。

 初めてマイクスタンドを使った、大人っぽいアクションを交えた「Dear My Blues」を経て、「Over」では観客のハンドクラップに乗せて5人が美しいハーモニーを響かせていく。5人の歌声の力強さと個々の異なる声の表情、それらをうれしそうに伝える彼女たちの笑顔など、生だからこそ伝わるものも多く、そんな彼女たちを優しい空気で包み込む観客の笑顔含め、やはりライブ会場でないと得られない感動もあることを実感させられた。そして、上田の「これからもみんなで一緒に“Happy”な気持ちになりましょう!」を合図に「Happy」でライブ本編をピースフルに締めくくった。

 アンコールでは、これまでのライブではおなじみの出囃子「but-show TiME」に続いて、ライブTシャツとショートパンツに着替えた5人が「BDM」でライブを再開。パワフルなギターロックに乗せて歌う5人の声は、ライブ本編以上に力強いもので、久しぶりのワンマンライブを通じて体が温まり、「ここからが本番」と言わんばかりの声量とキレのあるダンスで観る者を楽しませてくれる。また、続く「ハカタダンスホールベイべー」ではスウィング感の強いリズムに乗せて、華やかなパフォーマンスを見せてくれた。

 久しぶりの単独ライブを心底楽しんだメンバーは、「すごくドキドキで待ち構えていたけど、皆さんの笑顔がマスク越しにここまで伝わってきました」(星野)、「また通常通り、皆さんに会えますように」(上田)、「関東は本当に久しぶり(のライブ)。またできますように」(瀬田さくら)、「私自身、ライブハウス(でのワンマンライブ)は1年以上ぶりで、緊張も不安もあったけど、皆さんが手拍子やペンライトから楽しんでいることが伝わりました!」(春乃きいな)、「こんな(大変な)ことがあったけん、あとは楽しいことしか待ってないと思います」(希山愛)とそれぞれの思いを吐露。そして、改めてファンへの感謝の気持ちを込めて「ありがとーと」を元気一杯に歌い踊り、久しぶりの単独ライブを大成功のうちに締めくくった。

 もし今日のセットリストが、観客が思うように声をあげられる“健康な世の中”で披露されていたら……たら・れば話をしても意味がないかもしれないし、この内容も今のような情勢でなかったら実現しなかったものかもしれない。でも、できることならこの『ふぁん』の世界観をもう一度“健康な世の中”で楽しんでみたい。そう思ったのは筆者だけではないはず。きっと“健康な世の中”になった頃には、今よりもさらに成長したばってん少女隊が、今回のライブ以上の歌とパフォーマンスを見せてくれることだろう……その日を楽しみにしながら、今後も5人の成長を見届けていきたい。

■西廣智一(にしびろともかず)Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

■セットリスト
ばってん少女隊 リリース記念LIVE “ふぁんtasy” 2020
2020年11月1日(日)KT Zepp Yokohama
00. ふぁんtasy
01. スウィンギタイ
02. ますとばい!
03. Dancer in the night
04. Just mean it!
05. でぃすたんす
06. OTOMEdeshite
07. ジャン!ジャン!ジャン!
08. MILLION SUMMERS
09. よかよかダンス
10. おっしょい!
11. OiSa
12. Dear My Blues
13. Over
14. Happy
<アンコール>
15. but-show TiME
16. BDM
17. ハカタダンスホールベイベー
18. ありがとーと

ばってん少女隊 オフィシャルサイト

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