AA=、配信ライブであることを超えた表現 演奏とビジュアル演出による“作品”としての世界観と可能性

 AA=が、10月31日に初の配信ライブ『SPEEDSTAR RECORDS presents DIGITAL LIVE “AA= DISTORT YOUR HOME”』を開催した。本記事では、小野島大氏が執筆したオフィシャルレポートを掲載する。

恐ろしく刺激的で完成度の高い「作品」

 凄まじい体験だった。

 上田剛士、白川貴善(vo)、児島実(g)、ZAX(ds)という4人編成で行われたAA=の初の配信ライヴは、およそ手前の「配信ライヴ」というものに対する先入観や思い込みをぶち壊すような画期的なものだった。音も映像もキレキレで、最高にカッコ良かった。私たちはAA=の生のライヴがいかに凄いか、よく知っている。だがこの日の配信ライヴの素晴らしさは、「生のライヴさながら」だったからではないのだ。

 コロナ以降、もはや当たり前の日常となった配信ライヴ。その内容は千差万別だが、求められるクオリティは以前と比べればはるかに高くなっている。ただ演奏する様子を何のひねりも工夫もなく映すだけのものでは、多くのファンは満足できなくなっているのだ。それはつまり、ネット回線を通じてモニター越しで感じるしかない歌や演奏は、満員の観客の人いきれの中で体験する生のライヴと同じでは決してありえない、ということだ。配信ライヴであれば配信ライヴならではの見せ方がある。緻密で強靱な演奏やメンバー同士が相互に刺激しあうことで起こる化学反応といったライヴ本来の魅力と、モニター画面を通じて見る「映像作品」であることを高次に両立させること。この日のAA=の配信ライヴは、ラウドでエネルギッシュなロック・バンドとしての魅力を1ミリも損なうことなく、映像としても恐ろしく刺激的で完成度の高い「作品」となっていた。正直、つい集中力が散漫になりがちな配信ライヴで、ここまでダレずに最初から最後まで画面に惹きつけられたものは滅多にない。終了後、鑑賞者たちが口々に「DVD化希望」とチャットしていたのは、アーティストがこの配信ライヴを一回限りの刹那的なものではなく、何度も見られる「作品」として強く意識し作り込んでいった証拠である。

 この日特に際だっていたのはヴィジュアル演出だ。背後の大型スクリーンに間断なく映し出されるさまざまな映像、映し出される歌詞の一部、注意深く見ないと見逃してしまうような一瞬のメッセージ。カラフルな照明が光の雨のように降り注ぎ、時に空間を白く、赤く、ダークに染めていく。演奏と完全に一体化し、曲のイメージを具現化している。バックライトに照らされ4人のメンバーがシルエットになる瞬間には何度もぞくりとさせられた。モニターを通して「鑑賞」されることを意識して、すべてが緻密に計算され配置されているはずだが、映像エフェクトが先行するのではなく、あくまでもライヴ演奏を中心に据えながら、さまざまなヴィジュアル演出を加えることで、トータルなAA=の世界観を見せていく手腕は見事と言うしかない。

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