藤原さくら『SUPERMARKET』は、どう生み出されたのか 参加ミュージシャン/プロデューサーの証言から現在の音楽性に迫る

 今回、藤原が特に苦心した曲はおそらくVaVaとのコラボ曲「生活」だろう。

「自分が今Hip Hopにすごく興味があって、アルバムでもそういうアプローチがしたいなと思った時に、VaVaさんの名前がスタッフからも挙がって」(藤原)

 しかし、普段はアコギやピアノを演奏しながらメロディを紡いでいく藤原にとって、「まずトラックありきでそこにラップを乗せていく」というヒップホップスタイルの作曲プロセスは、戸惑うことの連続だったという。

「VaVaさんから連絡をいただいて。『Hip Hopだったらこういう歌い方にした方がいいよ』とか、『ここは削った方が気持ち良くなると思う』みたいなアドバイスが、実際にVaVaさんが歌ったトラックと一緒に送られてきたんです。どれも自分にはなかった発想だったので、ものすごく参考になりました。それがあったからこそ、メロディが今の形に落ち着いたのだと思う。ギターから作っていたら、このメロディにはならなかったんじゃないかな」(藤原)

 他にも、Twilight Hot Guysのメンバーとレコーディングした「Ami」では、PixiesやThe Cureら80〜90年代のロックにインスパイアされ、「Right and light」では、Q-ティップとノラ・ジョーンズの「Life Is Better」に着想を得た藤原が、一昨年のEP『green』『red』をトータルプロデュースしたmabanuaと共に、異なるピアノのサンプル音源をレイヤーしたアブストラクトなトラックを作り上げている。これまではアレンジやサウンドプロダクションのほとんどの作業をプロデューサーらに託していた藤原だったが、今作では共に試行錯誤を繰り返しながら自らのイメージを形にしていった。だからこそ、ここまでアグレッシブで振り幅の大きい、「攻めた」アルバムに仕上がったのだろう。

藤原さくら - Ami (Documentary)

「自分で作った曲について『こういう形にしたい』とちゃんと言えるようにならなきゃダメだなと思いました」(藤原)

 本作を聴きながら、デビューしたばかりの彼女にインタビューしたときのことを思い出していた。その時彼女は、敬愛するポール・マッカートニーについて「エンターテイナーでもあるし、すごくコアな曲もあれば、世界中の人の心に届くような曲もあって」と話していたのだが、本作『SUPERMARKET』の「振り切り方」を見ると、彼女はまた一歩ポールに近づいたような気さえする。音楽以外の分野にも果敢に挑戦し、楽曲はマニアックなものから直球のポップミュージックまでレパートリーに持つ藤原さくら。少なくとも、「アコギを持ったシンガーソングライター」というイメージは、今の彼女にはもはやほとんどない。

「私自身『ギターを弾きたい』『自分の曲には絶対アコギを入れたい』みたいな感覚は全くなくて。『この曲には、本当にギターが必要なのか?』と考えるようになりました。必要だったら弾くし、必ずしも自分が弾かなくてもいい。いろんな楽器が演奏できるようになりたいという気持ちは、デビューの頃から変わらないです」(藤原)

■リリース情報
『SUPERMARKET』
発売:2020年10月21日(水)
完全生産限定盤SUPER Type
CD+特典ブックレット+配信ライブチケット
7inchアナログサイズパッケージ
5,400円+税

完全生産限定盤MARKET Type
CD+特典ブックレット
7inchアナログサイズパッケージ
4,000円+税

通常盤
CD
3,000円+税

12inchアナログ
4,000円+税

■ライブ情報
『Sakura Fujiwara Live 2021 “SUPERMARKET”』
2021年1月16日(土)東京 中野サンプラザ

SUPERMARKET特設サイト
オフィシャルサイト

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