『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』主題歌で歌われる、煉獄から受け継いだ意志 映画を観た後に楽しみたいLiSA「炎」歌詞の世界

 鬼の肉体は切ってもすぐに再生し、日輪刀という特別な刀で首を落とさない限り殺すことができない。鬼に対して人間の肉体はあまりにも弱い。猗窩座との戦いで、煉獄は深手を負ってしまう。「人間は脆い」と嘆く猗窩座に対し、煉獄は、それこそが人間の美しさだ、と跳ねのける。煉獄を支えているのは、亡き母の「弱き人を助けることは強く生まれた者の責務です」という言葉だ。そして、重傷とは思えない力で、再び刃を握ってみせる。

〈君の言葉 君の願い/僕は守りぬくと誓ったんだ〉

 この詞は、母から受け取った煉獄の意志でもあり、そしてさらに煉獄から受け取った炭治郎の意志にもなっていく。

 最期の時、煉獄は炭治郎たちを前に、胸を張って生きろ、と伝える。「己の弱さや不甲斐なさにどれだけ打ちのめされようと 心を燃やせ 歯を喰いしばって前を向け」、と。

 確かに人は脆い。鬼と比べればなおさらそうだろう。だが、次の世代を守り、思いを伝えていくことで、遥かな未来にまで至ることができる。煉獄が父の背中を見、母の言葉から受け取った意志は、途切れずに炭治郎たちに受け継がれていく。

〈託された幸せと 約束を超えて行く/振り返らずに進むから/前だけ向いて叫ぶから〉

 〈さよなら ありがとう〉という言葉から始まる「炎」という曲は、人生が別れの繰り返しであることを暗示するかのようだ。炭治郎たちはこれからも〈燃え盛る旅の途中〉であり、この先にも、取り合った手を離さなければならない時がくるだろう。そのたびに、自分の力の至らなさに涙を流し、強くなりたいと願うのだろう。

 「炎」で歌われているのは、これまで炭治郎が歩んできた過酷な道のりであり、これからも続く残酷な未来の暗示だ。だがそれと同時に、煉獄から受け継いだ、決して消えない炎のような意志でもある。

 〈心に炎を灯して/遠い未来まで……〉という結びの詞が歌われるのを聴くと、これまで連綿と紡がれてきた意志と想いに胸を揺さぶられるとともに、炭治郎たちの行く末を確かに照らす光があることを感じることができるのではないだろうか。

LiSA 『炎』 -MUSiC CLiP-

■満島エリオ
ライター。 音楽を中心に漫画、アニメ、小説等のエンタメ系記事を執筆。rockinon.comなどに寄稿。満島エリオ Twitter(@erio0129

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