ヤバイTシャツ屋さん、打首獄門同好会、岡崎体育……ヒットの理由は“楽曲以外”にもあり? 2020年の活動に迫る

 斬新な発想と言えば打首獄門同好会も忘れられない。コロナ禍で有観客のライブが出来ない事態に陥ると、「VRライブハウスプロジェクト」を始動。通常の動画配信よりも一層ライブをリアルに体感出来るように始まった彼ら独自のプロジェクトだ。定期的に数曲のパック販売が行われ、ライブハウスを主戦場とする彼らのファンを、コロナ禍の間も楽しませた。

 VRライブハウスプロジェクトと平行して、ボーカルを務める会長こと大澤敦史はTwitter上で「1分ソングクリエイター作品」を立て続けにアップ。そんな“1分ソングクリエイター”を収録した作品集は、ストレートなタイトル「新型コロナウイルスが憎い」で大きな話題となった。2月のYouTube配信でもオープニングで流されたこの曲は、この秋に改めて作り直され、アルバム『2020』に収録される予定となっている。「新型コロナウイルスが憎い」というタイトル通り、コロナ禍で生活が一変したすべてのリスナーに響く魂の叫びになっている。

 思えば今年の2月、ワンマンツアーの千秋楽がコロナウイルスの影響で中止となった打首獄門同好会。業界内でも早い段階からコロナ禍の影響を受けていた彼らだったが、YouTube配信で当時はまだ浸透していなかった無観客ライブの先駆けとなるなど、常にコロナの猛威と戦ってきた。この1年は彼らにとってコロナと戦い続けた日々で、音楽だけでない、様々な要素からもその姿勢を随所に感じさせる。前述した『2020』はこの1年の集大成となる作品だろう。

 前述した2組以上に異色の活動を展開するのは岡崎体育だ。昨年は岡崎が以前より目標として掲げていたさいたまスーパーアリーナでのワンマンライブ『BASIN TECHNO』を成功に収め、12月にはソニー・ミュージックアーティスツへの所属も発表した。今年に入ってからは音楽活動と並行してテレビへの出演も目立つようになった。大きな話題を呼んだのは、今年高い支持を得たドラマ『MIU404』への出演だろう。綾野剛と星野源がW主演を務める刑事ドラマに岡崎は犯人役で出演。そのハマリっぷりは放送時にSNSでもトレンド入りするほど話題となった。そして今年10月からは子供向けバラエティ番組『おはスタ』のレギュラーに抜擢。以前よりアニメ『ポケットモンスター』(ともにテレビ東京系)などの主題歌も担当してきた岡崎。その老若男女から愛されるキャラクターはテレビを中心に、音楽ファンだけでない新たな層への求心力となっている。

 近年の音楽シーンは最新技術やストリーミングの活用が重視されてきたが、アナログな手法をあえて活用することで、既存のメディアもアイデア次第でまだまだ求心力があることを証明したヤバT。生活の中にコロナが侵食した2020年の中で、「生活密着型ラウドロック」という名に相応しく、withコロナな生活を誰もが過ごした2020年を映し出した打首獄門同好会の活動スタイル。そしてTikTokなどの台頭で音楽とリスナーの距離感も変わりつつある中、音楽ファンだけでない層へも積極的にリーチする岡崎体育の活躍は、音楽と人の新たな関係性を生みだすきっかけとなるのではないだろうか。

 三者三様、それぞれ全く異なるスタイルではあるが、3組とも今ある価値観に縛られない斬新な活動を見せている。彼らがムーブメントを生み出したのはそのアイロニカルさや独自の表現だけだなく、メディアとの距離感や今までにない取り組みが若者を中心に新鮮に届くからだ。これらかもその斬新な発想力で音楽を届け続けてほしい。

■ふじもと
1994年生まれ、愛知県在住のカルチャーライター。ブログ「Hello,CULTURE」でポップスとロックを中心としたコラム、ライブレポ、ディスクレビュー等を執筆。
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