声優 木村昴が放つ、人々を楽しませる圧倒的なパワー 苦悩の日々から出世作での覚醒まで、今に至る人気の根源に迫る
アニメ『ドラえもん』(テレビ朝日系)のジャイアン役としてお茶の間に浸透し、音楽原作キャラクターラッププロジェクト『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』の山田一郎役として、アニメとヒップホップカルチャーとの架け橋に。そして今年10月からは『おはスタ』(テレビ東京系)の新MCとして、子どもたちにとっての「朝の顔」に就任。アニメファンに限らず、幅広い層に対して確固たる地位を築いている声優 木村昴。パワフルでポジティブな姿勢で道を切り拓き続けている木村は、どのような道をたどってきた人なのだろうか。
木村の声優としてのキャリアのスタートは、前述した『ドラえもん』でのジャイアン役からだ。児童劇団に所属していた木村は、もともとはミュージカル俳優を目指していた。ジャイアンのオーディションを受けたのも記念のつもりだったが、見事合格し、「14歳のジャイアン」が誕生したというのは有名なエピソードだ。
そこから高校卒業までジャイアンだけを演じてきた木村は、何を演じようとしてもジャイアンの声になってしまうことに壁を感じていた。そんな時、アニメーション監督の幾原邦彦に出会う。アニメ『輪るピングドラム』(MBSほか)の高倉冠葉役のオーディションを受けた木村は、幾原から「君ほど下手くそな人に会ったことない」と衝撃の言葉をかけられる。それでも、木村の声が好きだと幾原は木村を抜擢し、そこからアフレコまでの間、ジャイアン以外の声が出るようにと、ずっと稽古してくれたのだという。この出来事が、木村の演者としての幅を広げるきっかけとなる。
木村と言えば、もう一つ欠かせないのが『ヒプノシスマイク』の山田一郎役だろう。小学生の時からラップを聴いていたという木村は、もともと大のラップ好き。『ヒプノシスマイク』のオファーが来た時には、「こんな巧い話があっていいのか」と思ったという。
今や一大コンテンツとなった『ヒプノシスマイク』だが、もともとアニメとヒップホップという2つのカルチャーの立ち位置は遠い。ファン層も大きく異なるところに切り込んだ『ヒプノシスマイク』は、かなりの挑戦だったと言える。“ラッププロジェクト”という新しい試みを成功させるには、何よりもまず「ラップってかっこいい!」と思わせる楽曲を提示することが不可欠だった。そんな中、座長として一番手を務める木村が発揮したラップスキルは、ラップミュージックに関心がなかったであろう多くのアニメファン層の心を掴む説得力を持っていた。
それだけでなく、好良瓶太郎として山田一郎のソロ曲「俺が一郎」「Break the wall」や、Buster Bros!!!「IKEBUKURO WEST GAME PARK」などのリリックを手がけたり、ほとんどラップ経験のない共演者たちにアドバイスするなど、先導者としての役割も担った。『ヒプノシスマイク』というコンテンツの爆発的な成功の一因は、間違いなく木村昴あってこそと言えるだろう。
ヒップホップジャンルにおける木村の活躍は『ヒプノシスマイク』に留まらない。他の出演アニメでラッパー役を演じたり、2019年4月から『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)のナレーターを担当するなど、「ラップ声優」としての地位を確固たるものにしている。