高橋優が語る、デビューから10年抱き続ける反骨精神 「僕は幸いにも過去の栄光が全然ない」

高橋優、10年抱き続ける反骨精神

『PERSONALITY』は自分の生き写しのようなアルバム

ーー高橋優の10年間は、そういうことだと思うので、みなさんぜひたどり直してみてください。じゃあ、変な話、完璧に満足した作品はまだ存在しない?

高橋:いや、その都度自分の中で最高傑作ができたと思って、全部出し切ったなと思います。一週間くらいは。

ーーあはは。短っ。

高橋:いやあ、幸せな一週間だったなって(笑)。完成したら本当に自分の生き写しだと思うし、「こういう者です」って名刺代わりに配りたくなるし、でもこうして取材を受けたりして、いろんな人と話をしてみると、「まだ口にしたことのない思いがあったな」とか、だんだん出てくるんですね。それとか、姪っ子や甥っ子に「優くんの歌は難しくて歌えない」とか言われて、「じゃあ簡単な歌って何だろう?」とか、おのずと次の課題が見つかっていったりする。音楽に呪われてしまった人は、なかなか呪いが解けないんだなというか、性懲りもなくやっちゃってる感じですね。で、また次のアルバムができたら「もうこれで全部出した、完璧だ」と思って、一週間したらまた次の課題が見つかるとか。

ーーその繰り返しですね。そしてまた新しいアルバムができました。タイトルは『PERSONALITY』。

高橋:いやもう、これは僕の生き写しだと思っています、本当に。まだ一週間経っていないんで(笑)。

ーー来週会ったら、また違うことを言ってるんでしょうね(笑)。

高橋:いや、でもこれこそ10年目の集大成ですから。この『PERSONALITY』というアルバムに関して言うと、コロナ禍があったから、インディーズの頃以来ですよ、こんなに曲作りだけに向き合えたのは。歌詞も入念にかみ砕いて、別に締め切りもなかったから、本当に好きに書けた曲たちですね。

ーーやっぱりコロナの影響は、大きかったですか。

高橋:結果的には、すごく休ませてもらった感じでした。こういうものだと思って10年間やってきたけど、走り続けていたんだなということを実感できたというか。たとえば「東京うんこ哀歌」なんていう曲を書いて、こんなの使われないから書く意味ないなと思うんですよ、忙しかったら。これをコンペに出しても絶対採用されないじゃないですか。でも時間があると、うんこの曲にこだわってみようかなという気持ちにもなれるんですよ。世界観をしっかり投影して、情景描写に哀愁を入れたり、めっちゃ細部までこだわるプラモデルみたいな。それを作ったからといって賞をもらえるわけではないけれど、「曲作りの楽しみはそこだな」ということを思い出せたので。もともと誰かに評価されたくて曲作りをしていたわけじゃなくて、自分の表現したいことをして、「面白い」と言ってもらえたら、俺が表現したことは誰かを喜ばせられるものなんだという喜びから、次の動機が生まれていった気がするんですけど、それは喜ばせること前提の曲作りとは微妙に違うと思っていて。

ーーそう思いますね。

高橋:それってタイアップでは大切じゃないですか。先方のリクエストに応える曲作りとか、大事なことだけど、そもそものところはイタズラみたいなものだったと思うんですよ、僕の曲作りって。エロ本と一緒に隠していたんですから。一緒にじゃないですけどね。エロ本はベッドの下で、曲は机の引き出しだったんですけど。

ーーそれはどっちでもいいです(笑)。

高橋:でも扱いは一緒というか、ちょっと恥ずかしいもので、イタズラめいたものというか、自分の中の初期衝動から曲作りが始まって、そこから「この曲、好き」と言ってもらえる人間関係が始まる。その一番の原動力が、この10年間になかったわけではないけど、いろんなタイプの曲作りをさせてもらったんですよ、走りながら。で、コロナのおかげで家にずっといるから、またそのイタズラな曲作りというか、自分の原動力はどこにあったのかをあらためて思い出して、立ち返れたというか、そういうことがあったから。コロナウイルスなんてなくなればいいと思っていますけど、この期間があってできたアルバムではあるのかなと思います。

ーーパターンとしては同じですよね。『僕らの平成ロックンロール②』の時も、『STARTING OVER』の時も、そして今回も。

高橋:そうですね。ただ経験はあるし、今回はアレンジャーさんをすごい変えたんですよ。それって10年間やってこれたおかげで、どういうアレンジにしても、たとえばアレンジャーさんがそこにいると、その人が信頼するエンジニアさんがいて、ギタリストやドラマーもみんなその人たちのチームの中に僕が一人で入っていくみたいな、そういう姿勢だったんですよ。今までは自分のバンドがあって、よく使うスタジオがあって、そこに誰かを呼ぶという形でやってもらっていたけど、そこがきっと10年間で変わった部分と言うか、今回はそういう実験的なことをやってみようかという、これはさすがに高橋優じゃないだろ、というところまでやってみようと。でも歌ったら高橋優になるだろうなという自信がそこにはあるので。

ーー「room」とか、そうですよね。今までではありえない、R&Bテイストの曲で。

高橋:そうですね。「room」は8月に配信リリースさせてもらったんですけど、もっと批判的な声も聴こえてくるかな? と思ったんですよ。今までと違いすぎるから、どういう声が返ってくるのかな? と思ったけど、最近のリスナーの人たちは耳が肥えていらっしゃるから、「おお、こっちで来たんだ」みたいに、楽しんで聴いてくれる人たちがすごくたくさん見受けられたのでうれしかったですけど、このアルバムがどう受け取ってもらえるのかがすごく楽しみです。「room」は氷山の一角だったということがわかると思います。

ーーこれまでで最も音楽的に豊かなアルバムだと思います。みなさんお楽しみに。

高橋:自分の生き写しのようなアルバムだと思いますので、ぜひ聴いてもらえたらと思います。

布施明や山嵐、高橋優が選んだ人生のバイブル的な楽曲たち

ーーそして今回選んでもらったプレイリストですけれども、これはどういうテーマで選んだ曲たちですか。

高橋:多感な時期にいっぱい聴いた曲です。高校・大学時代の僕のバイブルと言っても過言ではない曲たちですよね。山嵐とか、今でも元気を出したい時に聴きますね。高校の時に『ミュージックステーション』に出て、「WIDE VISION」を歌ったんですよ。で、秋田には僕がやらせてもらっているフェスのほかにもう一個、『男鹿ナマハゲロックフェス』というのがあって、その中心人物の一人が山嵐の武史さんで、僕も何度も呼んでもらって、山嵐のセッションで一緒に歌ったりとか。高校の時に聴いていた人たちと同じステージに立つという経験をさせてもらったけど、それでもまだ憧れのままみたいな。山嵐とBRAHMANは、同じステージに何度も立たせてもらったけど、やっぱり憧れは憧れのままですね。でもあえて今日、この中から1曲推すとしたら布施明さんにしようかな。知ってます? この「愛の6日間」って。

ーーいや、実は知らなくて、調べたら、「この歌詞がヤバイ」みたいなくくりでバズっていて、聴いてみたら本当にこれはすごいと思いました。

高橋:この歌はいいですよ。なかにし礼さんの書く歌詞が大好きなんですけど、この「愛の6日間」ってカラオケにあんまり入っていなくて、あったらラッキーと思って必ず歌います。一緒に行く人の中に女の子がいると、必ず「え、何、この歌?」っていうことになるので、男子諸君にはお勧めしたいです。歌ってほしい。恋愛って、男性のほうが下手に出る、「君が好きだよ」みたいな歌が多いじゃないですか。でもこの歌は真逆ですからね。6日目まで抱いてあげないって言ってますから。〈1日目はキスをかわわすだけで お前を抱いてあげない〉って。ずーっとそれが3日目も4日目も続くんですよ。どうやったら抱くのか? というところまで聴いてほしいですね。

ーー挙げてもらった曲はどれも詞が深くて、その人にしか書けない個性がはっきり出ているものばかりだと思います。では、あえてこの中に自分の曲を付け加えるとすると?

高橋:実は、メガネツインズの曲を入れようと思ったんですね。メガネツインズの「Fitting」という歌があって、あの曲ってすごくいいこと歌ってると思うんですよ。僕が書いたんですけど(笑)。メガネツインズは亀田誠治さんと僕がやっているメガネのグループで、メガネ界隈のことしか歌わないと決めて曲を書いてるんですよ。「Fitting」という歌は、一番最初にメガネを発明した人は、「これをかければ見えなかったものが見えるようになるぞ」とみんなに勧めるわけです。で、別の人がかけたら逆に、見えていたものが見えなくなる。メガネにはそれぞれに度が入っていて、その人にしか合わないものじゃないですか。でも宗教とかメディアとか、一個のメガネをかけさせようとしている行為に感じることがあるんですよ。人が争う理由の一個として、「無理やり同じメガネをかけさせようとしていないかい?」と。みんな視力が違うし、見えているものが違うわけだから、ということをバラード歌っているんですけど、めっちゃいい曲そうな気がしません?

ーーしますします。

高橋:でしょ(笑)?ぜひ聴いてみてください。その価値観は、その曲にしか表現しなかったんですよ。それはここに挙げたような曲からの影響を確実に受けているし、自分にしか歌えない部分が入っているし、今のご時世にもピッタリの曲なんじゃないか? と思っています。

■リリース情報
高橋優
配信シングル「自由が丘」
2020年9月21日(月)配信
配信はこちら

高橋優 7thアルバム
『PERSONALITY』
2020年10月21日(水)発売

【期間生産限定盤A】(2CD)
WPCL-13242~3 / 4,000円+税
<DISC1(CD)>※期間生産限定盤A、期間生産限定盤B、通常盤共通
1.八卦良
2.room
3.RUN
4.自由が丘
5.LIFE
6.DANCE WITH ME
7.アスファルトのワニ
8.CLOSE CONTACT
9.フライドポテト
10.ABC
11.本命
12.東京うんこ哀歌
13.ORION
14.one stroke
15.PERSONALITY

<DISC2(CD)>※期間生産限定盤Aのみ
one stroke show 〜ファンが選んだ初の弾き語りベスト10+幻の弾き語り曲「 開け放つ窓」〜

1.こどものうた
2.駱駝
3.素晴らしき日常
4.福笑い
5.少年であれ
6.同じ空の下
7.リーマンズロック
8.BEAUTIFUL
9.虹
10.プライド
11.開け放つ窓
 
【期間生産限定盤B】(CD+DVD)
WPZL-31777~8 / 4,000円+税
<DISC1(CD)>※期間生産限定盤A、期間生産限定盤B、通常盤共通
1.八卦良
2.room
3.RUN
4.自由が丘
5.LIFE
6.DANCE WITH ME
7.アスファルトのワニ
8.CLOSE CONTACT
9.フライドポテト
10.ABC
11.本命
12.東京うんこ哀歌
13.ORION
14.one stroke
15.PERSONALITY

<DISC2(DVD)>※期間生産限定盤Bのみ
(Music Video)
1.パイオニア
2.太陽と花
3.明日はきっといい日になる
4.さくらのうた
5.産まれた理由
6.光の破片
7.ロードムービー
8.虹
9.ルポルタージュ
10.プライド
11.ありがとう
12.Mr.Complex Man (スペシャルエディット)
13.one stroke(未完成版)
14.room
15.自由が丘

(Documentary)
THE LIVE 2010-2020 〜Road of 10th Anniversary Document〜
 
【通常盤】(CD ONLY)
WPCL-13241 / 3,000円+税
<DISC1(CD)>※期間生産限定盤A、期間生産限定盤B、通常盤共通
1.八卦良
2.room
3.RUN
4.自由が丘
5.LIFE
6.DANCE WITH ME
7.アスファルトのワニ
8.CLOSE CONTACT
9.フライドポテト
10.ABC
11.本命
12.東京うんこ哀歌
13.ORION
14.one stroke
15.PERSONALITY

■関連リンク
高橋 優 オフィシャルサイト
ワーナーミュージック・ジャパンHP

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