ミニアルバム『Bored? Yeah, Me Too』インタビュー

Ken Yokoyamaが語る、新体制での変化と手応え 「書きたいことの質感が変わってきた」

今、そんなに強い打ち出しをしたくない

一一新作の話ですけど、最初からミニアルバムを思い描いてました?

Ken:いやいや全然。かなり二転三転したんだよね。レコーディングも2回飛んだし。12月にアルバム録ろうって言ってたのが、まず俺の体調不良で飛んで。で、今年の4月にレコーディングするつもりだったけど、コロナでぶっ飛んで。そのたびに曲が多くなって、最初はフルアルバムを目指すつもりだったけど、一枚にぶっ込むのは違うなって。これはまた別の話になるけど、世の中、もはやアルバム至上主義でもないでしょう。サブスクがこれだけ普及して、その概念も壊れていって。だからアルバム一枚に19〜20曲も入れたくなくて、分けようと。「じゃあこれだけ曲数あるならミニアルバムだな」って。

Minami:自粛期間中に決まったんですよね。Webミーティングで。

Ken:そう。次のアルバムのことも見据えて「ミニアルバムに何曲くらい持っていける?」って話をして。

一一コロナが作品のカラーを決めていったところもあります?

Ken:タイトルとアートワークはあると思うけど、曲はそうでもない。聴く人はもちろん絡めて考えると思うけど、コロナ前に曲はできてたし。

一一とりあえず言えるのは、今回は楽しい曲が多い。「あぁKen Bandってこんなワクワクする音だった!」って思い出しましたね。

Ken:うん。空気が変わったのは俺も感じる。なんだかんだ、ドラムが変わったことに集約されんのかなぁ? やっぱ4人の集団なわけだから。1人が変わればそれぞれの関係性もまた変わって。

Jun:もちろん前は前で、前の4人の良さがあったんだけど。ただ、メンバーが変わるなら、みんな単純に前よりも良くしたいって思うわけで。あとEKKUNは悩むことがあっても、だいたい前向きに対処してくれるから。それ見てたらこっちもモチベーション上がっていく、っていうのはあったかもしれない。

EKKUN:単純に嬉しいじゃないですか、「ここがいいね」って言われたら。「こういうふうにしたい」とか、そういう話ができるだけで嬉しいから。

一一具体的な変化で言えば、全員参加のコーラスが増えました。

Ken:うん。EKKUNが歌えるから、だったら使わないのはもったいない。

Minami:そう。 EKKUN上手なんですよ。いい声してる。

Ken:そのぶんJunちゃんが歌うところ減ったかなぁ?

Jun:それはいいよ。そこは歌いたがりな人に任せておけば。

EKKUN:歌いたがり……って言われると引っかかるんですけど(笑)。

一一叩きながら歌うのが好きなんですか?

EKKUN:いや? 細かく言うと、叩きながら歌うのは得意じゃないんです。ずっとムズいなと思ってたんですけど、レコーディングで改めてボーカルブースに入ると、なんか知らないけどすーごい高まってきて(笑)。変なテンションになって、歌うのが楽しくなっちゃいましたね。

Ken Yokoyama -Woh Oh (OFFICIAL VIDEO)

一一「Woh Oh」なんてシンガロングのための一曲だし、「You Are My Sunshine」も、みんなが知ってる名曲をみんなで歌おうって感じのカバー。

Minami:「You Are My Sunshine」は歌詞変えようと思ったら許可出なかったんですよね。

Ken:下ネタを書いて、カバーの申請出したら見事に撥ねられて。

Minami:しょうがなく原曲のまま歌ってるんですよ。

一一……ちなみに、どんなふうに変えようと?

Ken:んーとね、●●●●みたいな(爆笑)。それは撥ねられました。

一一良かったと思います(笑)。そういうくだらなさも大事ですけどね。

Ken:そう、大事。すごく大事。

一一今回は思想やメッセージが先ではない。もちろん言いたいことは書かれているけど、意見が先行してはいなくて。

Ken:うん。かつては、それこそ『Best Wishes』なんか意見の塊みたいなアルバムだし、「俺ってそうだったよな」って自分で葛藤するところもあるんだけど。たぶん今、そんなに強い打ち出しをしたくない、誰かを批判したり傷つけたりしたくないんじゃないかな。自然とそういう時期になったんだと思う。もちろんビシッと言う曲もあるんだけど、それも世の中に対してじゃなくて、自分はこうだ、っていうアングルだし。ちょっと書きたいことの質感が変わってきた。どっちがいいとか悪いとか、俺にはわかんないけど。

一一どっちもあっていいと思うけど、ただ、主義主張が強くなると重たくはなりますよね。

Ken:そう。あとは自分でもその罠にハマっていってしまう。「俺は発しなきゃいけないんだ!」みたいな。でも別にそうじゃない自分もいるわけで。

一一1曲目、「Runaway With Me」はEKKUNお披露目のツアーの時からやっていた曲です。

Ken:EKKUNが入って一番最初に作った新曲だもんね。

EKKUN:そうなんです。

一一逃げるっていう発想も、Kenさんにしては珍しい。

Ken:うん。だって俺、基本は逃げないもん。キリッ。

一一こう書いたのは、世の中の憂鬱なムードから逃げる意味もあるし、気づけば少し硬くなっていたKen Bandの空気を逃がす意味もあるのかな、と。

Minami:なんか……こう思ってるの俺だけかもしれないけど、最近のライブでKenさんが強いこと発信しても、お客さんが戸惑うじゃないけど、ちょっと壁とか距離感があるなって感じていて。そういう部分は今求められてないのかなぁって思うようになってたんですね。

一一ええ。震災直後に日の丸を掲げて、そこに賛同したファンの熱量が今も同じなのかって言えば、ちょっと微妙で。

Minami:そうそう。だんだん薄れてきてるなぁって。まぁそれをいつまでも持つ必要はないのかもしれないけど。去年ライブをやってる時、その温度差は感じてましたね、僕は。

Jun:それは俺も感じてた。震災もほぼ10年前ですからね。あん時は「なんとかせにゃ!」って強い思いがあって『Best Wishes』が生まれていって。でも今、たとえばコロナに対して「ウチらがなんとかせにゃ!」とはならない。そういう問題でもないしね。で、世の中ではSNSでの誹謗中傷とかが問題になって、中には「あれだけ発信してたKen Yokoyamaなんだから、今言うべきじゃないか」みたいなことを言う人もいて。そういうの見ると「……ちょっと待てよ? ウチら活動家でも何でもねぇよ」って。バンドマンだし、楽しくバンドやりたいし、パンクバンドだから必ずしも政治的なことを言わなきゃいけないとはまったく思ってないから。

Ken:人に言われてやるものでも、期待に応えてやるものでもないしね。俺、正直言うと、日の丸を掲げた最初の頃は「これに違和感がある奴が一人もいなくなるまで続ける」っていう決意を持ってやってたのね。でも最後、飽きて。

一同 ははははははははは!

Ken なんかこれ伝統芸みたいだなと。掲げたい気持ちは今もあるけど、もはや「うおー、俺も持ってきた!」みたいな反応も込みで伝統芸と受け取られる空気があって。Minamiちゃんも言うように、ちゃんと刺さってないまま、一部エンタメ化してたよね。

Jun:そういうことを考えるきっかけができるくらい、十分やってきたしね。で、「もっと深いところまでやれ」って言うなら「それは活動家に任せなさい」っていう話で。

Ken:ね。たとえば今の発言も、ネットに載ると「日の丸掲げるのに飽きたとは何事だ!」って言い出す人がいると思うのね。「それは活動家に言ってくれ」と。そういうことだよね。俺らはもう好き勝手にやるから。

一一いい意味での方向転換がKenさんの抑うつ状態から始まったというのは、皮肉なのか、偶然なのか必然なのか、何でしょうね?

Ken:やっぱり……いろんな事象を無意識でキャッチしてて、このまま行ったらデッドエンドですよ、っていうのを感じてたんじゃないかな。それが直接抑うつの原因だとは自分でも思わないけど。でも止まれて良かったのかもしれない。それは実感してる。今はバンドにとっていい時期だなって。

一一うん。ほんとにこの作品は全ファンが待っていたものだと思います。まぁ、ライブはしばらく見られないけど。

Ken:うん。やりたいけどね。

一一コロナについてはどう考えてます?

Ken:いや、もう状況に合わせていくだけで、意見は持てないかな。言うことも特にない。これっていう解決策もないし、怒ってもしょうがない。

Jun:少しずつライブやってる人もいるし、それは全然いいと思う。ウチらはウチらでやれるタイミングを今後考えていくのかもしれないし。ただ、今は音作り、レコーディングをやってて、そっちが楽しいから。

一一愚問かもしれないけど、配信ライブの予定はありますか。

Ken:考えてない。やるバンドをジャッジする気持ちもまったくないけど。でも俺たちのライブはお客さんもいて成り立ってるから。まぁいずれ「やろっか」ってなるかもしれないけど、今のところは考えてないかな。

一一わかりました。フルアルバムのレコーディングはこの後に?

Ken:年内にはできれば。

Jun:いっぱいネタはあるから。

Ken:うん。ボツにした曲も含めて25〜26曲は作ってるから。今も曲作りしてるし。だからこれ聴きながらアルバムを待って、コロナの件が良くなるのを待つしかないよね。お互い、俺たちも、楽しみにしてくれてる人たちも。

Ken Yokoyama 1st Mini Album「Bored? Yeah, Me Too」Trailer【レーベル直販CD】
『Bored? Yeah, Me Too』

■リリース情報
1st Mini Album
『Bored? Yeah, Me Too』
発送開始日:2020年9月25日(金)
価格:¥1,650(税抜)
<収録曲>
1.Runaway With Me
2.Woh Oh
3.Balls
4.Still I Got To Fight
5.Count Me Out
6.You Are My Sunshine

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