『Tuxedo~タキシード~』インタビュー
Lead、最新シングル『Tuxedo~タキシード~』で音楽シーンに吹き込む新風 積極的な発信に取り組む心境も語る
2002年にデビューし、エネルギッシュなパフォーマンスを身上にダンスボーカルシーンで活躍し続けているLead。4~9月にはレギュラー番組『Leadバラエティ』(TOKYO MX)がオンエアされ、アニメ『鬼滅の刃』のコスプレ&主題歌カバー企画などでも話題を呼んだ彼らが、9月23日に33作目のシングル『Tuxedo~タキシード~』をリリース。エルヴィス・プレスリーのカバー「監獄ロック」を含め“ロカビリー”をテーマに選んだいきさつや、もう1つの表題曲候補として生まれた意欲作「Wild Fight」の制作の裏側などについて語ってもらった。またコロナ禍においても複数のプラットフォームからさまざまな形で発信を続けてきた彼らに、この数カ月間の意識の変化についても聞いてみた。(古知屋ジュン)
ロカビリーとラップの組み合わせが斬新なタイトル曲
――タイトル曲の「Tuxedo~タキシード~」ですが、去年リリースの『Summer Vacation』やアルバムからのシングルカット『H I D E and S E E K/サンセット・リフレイン』とはだいぶ方向性が違っていて驚きました。
谷内伸也(以下、谷内):大きな括りで言えばダンスミュージックなんですけど、今回は1950年代のサウンドがテーマなので、だいぶ遡った感はありますね。ここ最近は基本的に打ち込みのサウンドが多かったから、今回は生音だしファンのみんなをびっくりさせたかな? とは思います。
――Leadといえばこれまでのリリース曲でも昔のサウンドのリバイバル、たとえばグループサウンズをモチーフにした「想い出ブレイカー」(2014年)、歌謡曲テイストの「SPEED STAR★」(2010年)などにも挑戦されてきましたが、今回ロカビリーをテーマにしたのは……?
鍵本輝(以下、鍵本):僕らのレギュラー番組『Leadバラエティ』でいろんな洋楽カバーに挑戦しようという企画があって。その中で今流行っている洋楽というよりも、過去に一世を風靡した楽曲だったり、隠れ名曲的なものを掘っていこうと。まず2曲目に収録した「監獄ロック」(エルヴィス・プレスリーのカバー)の話が走り出して、その流れの中で表題曲の「Tuxedo~タキシード~」が生まれたんです。懐かしいサウンド感だけれども古臭さは全然感じないし、これはこれで新しいなという風に僕は思っていて。
――なるほど。先日MVが公開されましたが、振りも含めてミュージカル的な要素もありますね。
鍵本:この手のサウンドだと、楽曲のテイストは違いますけど時代背景的に『ウエスト・サイド・ストーリー』のイメージが蘇ってくる人もいるかもしれませんね。そこまでミュージカル風にしよう、みたいな考えはなかったんですが。
――一言でロカビリーと言っても、いろんなニュアンスの楽曲があるじゃないですか。実際に聴いたら突き抜けるほど明るくて。
古屋敬多(以下、古屋):曲調がまさにパーティをイメージできて、かなりテンションが上がるタイプの音楽かなと思うし、それがなぜかミュージカルにハマるというのはあると思います。
――敬多さんはミュージカルでも活躍されていますよね。これまでの出演作の中でもレトロなサウンドを蘇らせるような企画が結構ありましたが。
古屋:たとえば『プリシラ』(2016年、2019年)では60年代から80年代のヒット曲、マドンナの曲とかを歌わせてもらいました。昔の曲って哀愁があって夢があって、すごくいい曲が多いなと思うし、この「Tuxedo~タキシード~」にもそういう魅力を感じていますね。
鍵本&谷内:哀愁……?
古屋:楽しかったり明るい中に、淡さ、儚さみたいなものをどうしても感じちゃうんですよ。
鍵本:いや、感受性がすごいな!
古屋:そんな思いを抱きつつ歌ったり、“ほうきダンス”(後述)を踊ってます(笑)。
――歌詞の中にプロム=卒業パーティが出てきますけど、おとなしい日本人が大手を振って騒げるような明るさみたいなものがありますよね。
鍵本:でも内に秘めたパーティ感って、日本人が一番強く持ってる気がします。「意外とパリピじゃん」と思うし。
――ロカビリーとラップの組み合わせも結構珍しいんじゃないかと思いました。ちょっと思いつかないようなのせ方というか、リズム的にも難しいでしょうし。
谷内:トラックを聴いて「これはラップ、どうしようか?」という感じで、レコーディングでもかなり迷って試行錯誤しましたけど、最終的には楽しかったですし、勉強になったなと思います。
――あとはMVがYouTubeでプレミア公開されたときに国内外から書き込みがあって「ライブで映えそう、盛り上がりそう!」と期待している声も多かったですね。
鍵本:ライブ映えは間違いないですね。Leadはゴリゴリに踊りまくって攻める曲が多いんですけど、ここまで振り切れた感じで「楽しもうぜ!」みたいな楽曲って意外と少なかったなと思います。
――今回はDA PUMPのTOMOさんの振付も見どころの1つだと思います。Leadの振付はステップを含めるとかなり難しい曲が多いと思うんですが、今回はみんなで踊れるようなわかりやすさを盛り込んできたことも結構意外でした。
谷内:これまで、こういう振り切ったイメージの楽曲……たとえば「想い出ブレイカー」なら、「このサウンドでこんなにバキバキに踊る?」という方向性でいくのがLeadだったんです。今回はコロナ禍で気持ちが沈みがちな時期なので、より簡単にみんなで参加して楽しさを作れる感じにしたいということもあって、TOMOくんに振付をお願いして。上がってみたらすごくキャッチーで、しかもトレンドを押さえつつTOMOくんのフィルターを通してオリジナルのものに仕上げているのはさすがだなと思いました。
――TOMOさんといえば海外で流行っている動きを独自の解釈で盛り込む振付がお得意というイメージがあります。今回の“ほうきダンス”のベースになっているモップダンスは、去年辺りからSNSでもかなり見かけるようになりました。
古屋:どこからネタを仕入れてくるのか、常に網を張っているんでしょうね。
谷内:TOMOくんは海外にも友達が多いから、素早くそういったトレンドをキャッチしていそうな感じもあります。
――ほうきダンスを踊るコツというと?
鍵本:ひたすら楽しんで踊ってもらうのが一番かな。あの動きは、もうみんなが学校のそうじの時間に遊んでいたように、ほうきをエアーで持って動かすだけなので。
谷内:何か別の小道具持っても楽しいかも、杖とか傘とかね?
古屋:日常の中で楽しんでくれたら一番ですよね。一応流れとしては、右から掴んで左で掴むという、これだけなので。
鍵本:TikTokなどのネタにも自由に使ってもらえたらと思います。モップダンスはアメフトの選手がトライ決めた時にゴール前でのパフォーマンスに入れたりするものなので、そういうシーンで遊んでもらったりしてもいいし。
谷内:1人が踊りだしたらみんなが続くようなノリで楽しんでもらえたら嬉しいです。
――ところで、TOMOさんとのコラボは初めてですか?
鍵本:事務所のダンスイベント『UNITED~RISING DANCE FESTIVAL~』(2010年)で一緒に踊ったりしたことはありましたけど、作品で絡むのは初かもしれないですね。同じDA PUMPのYORIくん、KIMIくんにはライブの振付をお願いしたこともあるんですけど。
古屋:個人的な話なんですけど、僕はデビュー前にアクターズスクールの福岡校に通っていて、TOMOくんは名古屋校だったんです。小6くらいの時かな、全国のアクターズスクールの合同イベントの時にTOMOくんには出会っていて。だからTOMOくんがDA PUMPに加入した時に感動の再会を果たしたんですよ。今回、ほうきダンスが生まれたのはまさに運命ですね(笑)。
――約20年越しのプロジェクト(?)ということで……今回は振付もそうですけど、楽曲のクリエイター陣も(「U.S.A.」などを手掛けた)同じ事務所のshungo.さんが作詞、作曲は12年ぶりの阿久津健太郎さんという布陣で。
谷内:健太郎さんには「LOAD」(2008年)やクリスマスソング「Ding Dong」(2007年)でお世話になっていて。
鍵本:この楽曲でお世話になるから久々にLINEしましたね。でも嬉しかったです、昔の作品でお世話になったのはもちろん、僕にギターを教えてくれた先生でもあるので。
古屋:僕も1回、ベースをレクチャーしてもらったことがあるんですよ。
――この曲がつないだ様々な再会があったのですね。最初に聴いたときには意外な印象がありましたが、新たなチャレンジの一環ということで。
鍵本:ここまで年代を遡ったからこそ大人世代の方にとっては懐かしいと思ってもらえて、逆に僕たち世代の少し上から下の世代の人にとっては新しいと思ってもらえるような世界観にできたと思います。今このジャンル、テイストで踊っている人たちも、僕が思い付く限りではいないので、今の音楽シーンにちょっと違う風が吹かせられるんじゃないかなと。