チョコレートプラネット、四千頭身、オリエンタルラジオ藤森……瑛人「香水」、芸人の間でも人気の理由
「香水」のMVは、なぜこれほどまでに芸人の間で人気を博しているのか。その一つに楽曲とMVとのギャップが挙げられるだろう。〈クズになった僕〉〈人に嘘をついて軽蔑されて〉という自身を卑下するような歌詞があるため、楽曲を聴いた人は誰もがイケイケな男性像を想像する。しかし、7月24日の『ミュージックステーション3時間スペシャル』(テレビ朝日系)に瑛人が出演した際にも話題になったように、本人はニコニコしていて好青年そのもの。そのためMVにも不思議な爽やかさがあり、それがシュールな印象を生み出している。チョコレートプラネットや四千頭身の再現動画がクスリと笑えるのも、長田や後藤自身が素朴で、どことなく哀愁を生み出しているからではないか。反対に、何かと恋愛関係で世間を賑わせているイメージのある藤森やクロちゃんが歌うと、それはそれでリアルな面白さがある。
また、TikTokやYouTubeの文化が芸人の間にも浸透しているのも大きいだろう。以前は芸人のネタはテレビやお笑いライブでしか見られなかったが、EXITや四千頭身をはじめとし、最近の芸人はそれぞれがSNSのアカウントを持っていることが当たり前になりつつある。特にTikTokは、カップルYouTuber “夜のひと笑い“の投稿をきっかけに生まれたと言われるひらめの「きゅんです!のうた。」や、倖田來未「め組のひと」に合わせてポーズを取る動画など、元ネタをパロディした投稿が多い。バズればブレイクが狙える今の時代、芸人たちもそんなSNSの文化を普段から意識していると思われる。特に今年の春は新型コロナウイルスの影響で、芸人たちがネタを披露するライブも相次いで中止・延期となった。テレビの収録も制限されていた彼らにとって、SNSは唯一残された活動の場所。そこに「香水」ブームが到来し、チョコレートプラネットを筆頭に上手く波に乗っていった芸人も多かったのだろう。
2013年から『歌ネタ王決定戦』が始まったように、“歌ネタ”も一つのジャンルとして確立されている昨今。大塚愛「さくらんぼ」やオースティン・マホーン「Dirty Work」、そして瑛人「香水」のように、芸人のネタの中で使用され話題になる楽曲も増えている。“音楽”と“お笑い”が相互に影響を与え、新たなブームを巻き起こすかもしれない。
■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。Twitter:@bonoborico