米津玄師好調のバイラルチャート上位に現れた“もさを。”は何者か 日常と願望をシンプルに表現した「ぎゅっと。」の魅力

 歌詞についても触れていこう。カップルの幸せな日常と未来への願望を女性視点で綴った内容。面白いのは、一人称に「私」と「あたし」を使っているところ。前者は主人公の女性の現状に対して、後者は未来への願望(=言うなれば、女性特有の自我)に対して使われているように感じられる。前者は“彼氏の前でこう見られている、こう見られたい自分(=女性)”で、後者は“女性の本音=本質”なのだろう。恋愛で幸せな日常を永遠に積み重ねるためには、相手と真正面から向き合う以上に、“相手のための自分”を持続させることも大切である。私事になるが、結婚して間もなく10年。この歌詞には、ちょっと、頭を殴られた感じ。相手を慮る気持ちって、本当に大切。もちろん自我も同じくらい大切なんだけれども。

 優しさと言えば、もさを。は「ぎゅっと。」がヒットしていく中で、粋な優しさを見せている。SNS上でイントロのコード進行が難しいと言われれば、そこを簡単にしたバージョンをアップしたり、男性視点で綴った歌詞のバージョンをアップしたりと、自然に相手に寄り添う姿勢を見せている。このスタンスと行動力は、今後の彼の活動において肝になってくると思う。

■伊藤亜希
ライター。編集。アーティストサイトの企画・制作。喜んだり、落ち込んだり、切なくなったり、お酒を飲んだりしてると、勝手に脳内BGMが流れ出す幸せな日々。旦那と小さなイタリアンバル(新中野駅から徒歩2分)始めました。
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