米津玄師のライブは複合的なパフォーマンス発表の場に 『STRAY SHEEP』付属映像で堪能する貴重なステージ

 さらに、この公演のハイライトとも言えるのが鐘の音から始まった「amen」である。せり出したステージはリフト構造を持っていて、上空の構造物と一体となって両者が巨大なモンスターの“顎”のように動くのだ。その中でダンサーたちが悶え苦しむようなパフォーマンスを見せる。迫力満点の演出だ。

 踊っているのは舞踊家の辻本知彦率いるTEAM TSUJIMOTO。「Moonlight」では月を背景に美しいデュエットダンスを披露していたが、この「amen」では10名に及ぶそのダンサーたちが魑魅魍魎の“うじゃうじゃ感”を演出。楽曲のダークな世界観を存分に引き出していた。そのほか、「Paper Flower」や「Lemon」でのただ光らせるだけではない神秘的なライティングも見事だし、ドラムパフォーマンス集団「鼓和-core-」によるスネアのパフォーマンスも力強い。隊列を組みながらのスネアの演奏は、会場に漂う荘厳な雰囲気をより一層強調していた。

 こうしたチームの協力は米津にとっては2018年頃から始まったもので、彼の“変化”の象徴とも言える部分だ。クリエイティブ性が一段と上がり、参加人数も増え、単なる音楽ライブを超えた複合的なパフォーマンスの発表の場といった様相を呈している。そもそもライブというものに対して消極的だった彼だが、こうした映像を見る限りでは、今ではライブもしっかりと腰を据えて取り組んでいるようである。

 彼自身、曲作りだけにとどまらない才能を発揮しているマルチなアーティストゆえ、今後も彼のライブが多方面の分野と連携し、“総合芸術”として展開していくことも予想される。先日の『フォートナイト』とのコラボイベントも先進的だったように、これからも状況や環境に応じた、米津玄師ならではのライブ活動に期待したい。

■荻原梓
J-POPメインの音楽系フリーライター。クイックジャパン・リアルサウンド・ライブドアニュース・オトトイ・ケティックなどで記事を執筆。

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