郷ひろみから学ぶ、“当たり前を続ける”ことの大切さ 著書『黄金の60代』から伝わる一貫した生き方
『黄金の60代』から見える「郷ひろみ」という人
『黄金の60代』を読み進めていくうちに「郷ならこう考えるだろうな」「なるほど、郷らしいな」と、彼の言動を理解し予測している自分に気づく。それほど郷の、ものの見方や取り組み方は一貫している。
それでいて、ときおり想像のななめ上をいくから面白い。「人は進化する」「矛盾には魅力がある」と語る郷は、“あえて違う道を進んでみる”ことを恐れない。けれど気まぐれではなく、明確な理由と目標をもって道を選ぶ人だ。
彼の意外な選択に驚かされ、年齢を理由にしないチャレンジに勇気づけられる。
時代の変化を恐れず、ワクワクとした心で向き合えるからこそ、郷はいつまでも若く、輝かしくあり続けることができるのだろう。
現在も、年間100回ほどのステージに立ち続ける郷ひろみ。歌に対する誇りを持ちながら、いまなお向上心が止むことがない。
「変わらない」というのは、ファンへの誠意だ。郷ひろみは、郷ひろみであり続けるために一切の手加減をしない。ファンや視聴者への甘えもない。
妥協をゆるさないこの人のファンでいられたら……幸せだと思う。本書における、歌やダンス、そして「歌って踊る」ことに対する郷の解釈も、実に読み応えがあった。
そんな郷が、験担ぎや神頼みを大切にしているのは意外だった。しかし郷は言う。「やるだけのことをやった人間が最後に神様にお願いをするから、神様も願いを聞き入れてくれる」。「60代からの自身の成功を信じてやってきて、やっと神頼みをしていい段階に入れる気がする」と。
いつか60代を迎えたとき、自分はこう言えるだろうか。こんな実直な生き方をしたいと思う。郷の生き様は、多くの人の希望や、目標になり得る。
郷が綴った、自身の「引き際」。これがまた、最高にカッコいい。
「人に肩を叩かれ、「ひろみさん、もう引き際じゃない?」とはいわせない」「僕は、自分で自分の肩を叩く」
彼の、大切で大きな目標は「郷ひろみを続けること」だという。そして、まだまだ引き際を考える時機ではないという郷ひろみ。
もちろんだ。まだまだ、郷ひろみでいてくれなくては。こんな時代だからこそ、太陽のように熱を絶やさないあなたがいてくれなくては困る。
郷ひろみはこれからも、人知れず「当たり前」を、コツコツと続けていくだろう。自分自身のため、待っている人のため、そして、華やかなステージのために。
■新 亜希子
アラサー&未経験でライターに転身した元医療従事者。音楽・映画メディアを中心に、インタビュー記事・コラムを執筆。
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