『SUPER MAGIC TOKYO KARMA』インタビュー

石若駿率いるSMTKに聞く、バンドの成り立ちや作曲とインプロのバランス 信頼感があるからこそ生まれる自由な音楽

自由さと信頼感が作り出す突き詰めた“音楽”

――では、5月27日にリリースするアルバム『SUPER MAGIC TOKYO KARMA』の具体的な曲についてお伺いしたいと思います。まず細井くんの作曲が、「3+1=6+4」、「すって、はいて。」、「長方形エレベーターとパラシュート」ですね。

SMTK 1st Album『SUPER MAGIC TOKYO KARMA』 Official Teaser ④ 長方形エレベーターとパラシュート

細井:「3+1=6+4」は自宅でエフェクターで遊んでいたらできた曲です。わりと明確にオマージュしている音楽があって、Radioheadと、ギタリストの市野元彦さんを自分の中で混ぜてみたんです。あと、この曲は駿のドラムが3台鳴ってて、それぞれ別テイクで、上と右と左にいるので、ビートも楽しめるんじゃないかなと思います。「すって、はいて。」は散歩をしているときにメロディが浮かんだんですけど、家で詰めているうちに、スティーヴ・ライヒと、ジム・オルークと、君島大空のメロディが浮かんで、実はそれぞれが入っていて。僕の好きなミュージシャンに向けて書いた曲です。

――確かに、序盤のギターとサックスでメロディを回していくパートはライヒっぽい、ミニマルな感じですね。

細井:リズムが5拍子に変わるところがジム・オルークっぽくて、5拍子の最後に出てくるメロディがキミ(君島大空)。そして、松丸契の感情的な素晴らしいソロで締めてくれています。「長方形エレベーターとパラシュート」は、夢で見た風景を曲にしました。夢の中で、長方形のエレベーターが上がって行って、いつの間にか建物も越えて、天空まで行ってしまって(笑)、「ヤバい!」と思った途端に、パラシュートでゆっくり落ちて来る。そんな夢を見たので、その様子を前後半に分けて、パラシュートはテンポダウンで表現してみました。

――松丸くんが書いたのは、タイトル曲の「SUPER MAGIC TOKYO KARMA」と、「Otoshi Ana feat.荘子it(from Dos Monos)」ですね。

SMTK 1st Album『SUPER MAGIC TOKYO KARMA』 Official Teaser ① SUPER MAGIC TOKYO KARMA

松丸:「SUPER MAGIC TOKYO KARMA」はプリプロの前日の深夜に急いで作り上げた曲です。サックスのハーモニーパートを4つ入れてて、微かにテクスチャーになる程度でミックスされているんですけど、そのために初めてテナーサックスを録音しました。あと、冒頭の声も僕の声です(笑)。超高カロリーな曲ですが展開が最高に気持ち良いので最後まで聴いて欲しいですね。「Otoshi Ana」は徳太郎さん(細井)のギターのギリギリギリという音がブレイクのところに少し入ってて、それをアイソレート(=独立)させるのが上手くできたなと。あれは奇跡の音だと思うし、めちゃめちゃかっこよくて、そこだけ何度も聴いて楽しんでいます(笑)。

SMTK - Otoshi Ana feat.荘子it [from Dos Monos] (Official Music Video)

――「Otoshi Ana」には荘子itが参加していて、ラップもビートもかっこいいですよね。

松丸:ここ数年トップチャートを占領し続けているトラップの、細かいハイハットのパターンとずっしりしたベースが一緒に原動力になる曲を入れたくて。簡単に言うとフリーな音楽と、ずっとトップチャートを占めてるビートを組み合わせたら面白いかなと。808,MPC,DAWのプログラミングの歴史が生み出したこの時代の重要なビートを生のこの編成でやることに意味があると思ってます。

石若:トラップのビートって、個人的に初めて世に出た演奏になりました。結構自分でも面白くなっちゃったので、いろんなドラマーとも共有したいです。

――マーティさんの作曲は「Let Others Be the Judge of You」、「My Country is Burning」、「ドタキャン」の3曲ですね。

SMTK 1st Album『SUPER MAGIC TOKYO KARMA』 Official Teaser ③ ドタキャン

マーティ:「Let Others Be the Judge of You」はイントロが大好きです。ギターのエフェクト、オーバーダブがめっちゃよかったですね。4年前のHishakaku Quartetでもレコーディグした曲なんです。

――「Let Others Be the Judge of You」とEP『SMTK』に収録されていた「Snack Bar」はマーティさんのリーダーアルバム『Trio Ⅰ』にも収録されていますよね。

マーティ:そうです。だから、3回レコーディングしました。その中でも、SMTKでのレコーディングが一番好きですね。「My Country is Burning」はオーストラリアで起こった山火事のことを思いながら作った曲です。面白いプログロック(プログレ)のトラックで、契くんのサックスが最高です。「ドタキャン」もHishakaku Quartet(James Macaulay(tb)、Niran Dasika(Tp)、Marty Holoubek(b)、石若駿(ds&pianica))でライブレコーディングをしたことがあるけど、SMTKでの音は徳ちゃんのノイズや駿くんのプレイもすごかったです。

――石若くんは「Where is the Claaaapstaaack??」を書いていますね。

SMTK 1st Album『SUPER MAGIC TOKYO KARMA』 Official Teaser ② Where is the Claaaapstaaack??

石若:「クラップスタック」っていうのは、最近のドラマーがよく使っている、クラップの音が出るシンバルのことです。ポテトチップスみたいに曲がってて、3枚重なっていて、叩くとクラップの音が出るんです。それがすごく好きだったので、クラップスタックをフィーチャーした曲を書こうと思いました。

細井:この曲で僕は重ね録りをたくさんしたんですが、すごく印象的だったのが、駿のハーモニーの感覚って、ピアノを弾いたハーモニーの感覚というよりも、もっと音の位置を見てるんですよね。だから、駿が僕にオーダーしたのって、「ここは低い弦で」とか「ここは高い方で」みたいな指示で、完成形を聴いてみると、確かに音の位置がよくわかってびっくりしました。

石若:ギターの音楽が好きだから、妙なこだわりが自分の中にあって、徳ちゃんにはレコーディングでいろんなオーダーをしちゃいました(笑)。ギターって、例えばオーバードライブをかましたときに鳴らした実際の音と、オーバードライブをかましたおかげで鳴る高い倍音があって、それを組み合わせるのが面白いし、さらに耳を澄ますとテンションの音が聴こえたりもして、そういうのを探して組み合わせていくのが好きなんですよね。違うギターで同じ弦をを弾いても音が変わるし、わざと少しだけチューニングをずらしてみたり、また直してみたり。そうやって音の微妙な違いを突き詰めて作っていくのがすごく楽しかったです。

――SMTKの曲はライブで聴くとまた印象がガラリと変わったりすると思うので、ぜひアルバムの曲をライブで聴きたいところですが、それがいつになるかは今わからないですよね。最後に、新型コロナウイルス(COVID-19)による現在の状況をどのように感じているか、それぞれ話していただけますか?

石若:自分の話で言うと、今まで毎日忙しくしてたのが、急にたくさん時間ができて、今まで冷静に考えられてなかったことを、じっくり考えることができています。なので、ポジティブに考えればですけど、もしかしたら、今ってアーティストにとっていい時間なんじゃないかとも思っていて。忙しい時間が続くと、流されたり飲み込まれたりすることもあるから、この時間を使っていろんなことを整理して、みんなが本当に自分の好きなことに向かえたらいいと思うし、自分もそういうマインドになっているのは確かですね。

松丸:僕もいろんなことと向き合う時間になっているんですけど、家にいても作業や練習ができるので、じっくり楽器とも向き合いつつ、DAWをいじったり、ピアノを練習したり、苦手分野にも挑戦する時間にしてます。

――マーティさんはどうですか?

マーティ:とにかく今は練習ばかりしています。あとは、本を読んだり、料理もいっぱい作って、超楽しい時間を過ごしていますね。それはそうと、先生、俺の日本語はどう?

松丸:ばっちり(笑)。

――松丸くんが先生なんだ(笑)。

マーティ:日本語の先生。あと、人生の先生。

石若:契はいろんな人生を経てますからね(笑)。

細井:僕はこれまで我ながらのんびり過ごしていて、ライブはもちろん好きですが、「好きなことのひとつ」と思っていたんです。だけどそこから離れてみて、「すげえ(ライブが)好きなんだな」って、改めて思ったんですよね。すぐにでもライブがしたいし、みんなに会いたいし、自分が好きなものにより気付ける時間になってます。あと、自分たちがライブできる環境を今まで支えてくれていた家族、ライブハウス、聴いてくれる人たちへの感謝の気持ちを改めて実感する時間になっているなと思います。

1stアルバム『SUPER MAGIC TOKYO KARMA』

■リリース情報
1stアルバム『SUPER MAGIC TOKYO KARMA』
価格:¥2,500(税抜)
発売日:2020年5月20日(水)
TRACK LIST(曲順未定):
01. SUPER MAGIC TOKYO KARMA (composed by Kei Matsumaru)
02. 3+1=6+4 (composed by Tokutaro Hosoi)
03. Otoshi Ana feat.荘子it (from Dos Monos)  (composed by Kei Matsumaru, lyrics by 荘子it)
04. Let Others Be the Judge of You(composed by Marty Holoubek)
05. Where is the Claaaapstaaack??  (composed by Shun Ishiwaka)
06. ドタキャン  (composed by Marty Holoubek)
07. My Country is Burning (composed by Marty Holoubek)
08. すって、はいて。(composed by Tokutaro Hosoi)
09. 長方形エレベーターとパラシュート(composed by Tokutaro Hosoi)

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