高橋美穂の「ライブシーン狙い撃ち」第14回

[Alexandros]、back number、RADWIMPS……ライブ映像作品から改めて感じる音楽の力

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、数々のライブが延期や中止となり、それどころか日常の外出もままならない日々。しかし、ライブ映像作品は、数々のアーティストがリリースしている。その中から、今の日本のロックシーンを背負って立つ存在と言っても過言ではない3バンドの作品をピックアップしたので、チェックしてみてほしい。

『Sleepless in Japan Tour -Final-』

 まずは4月1日にリリースされた[Alexandros]の『Sleepless in Japan Tour -Final-』。ライブハウスからアリーナまで駆け巡ったツアーの、さいたまスーパーアリーナで行われた最終公演(2019年6月16日)の模様が収録されている。その演奏の深さと広さに、アルバム『Sleepless in Brooklyn』の、今のロックシーンのボーダーレス指数をはかるリトマス試験紙のような革新性を感じた。さらに改めて思うのは、“ロックバンド”のカッコよさの最新型をメジャーフィールドで伝えてくれる彼らの存在の大きさだ。遅咲きで波乱万丈な歩みを経て、海外のオーディエンスのようなシンガロングを巻き起こす現状からは、ロックバンドらしい物語性が感じられる。それだけではなく、シンプルに佇まいからも“ロックバンドってカッコいい!”とドキドキさせてくれる。 “ラグジュアリー”で“ファッショナブル”といったキーワードが掲げられるロックバンドは、日本において数少ない。“この場所に行きたい!”と思えるキラキラしたロックスター像を、彼らは体現している。

[Alexandros] -「Sleepless in Japan Tour -Final-」(Teaser)

 それでいて、勇退を発表した庄村聡泰(Dr)も含めた4人で、この日のライブを振り返った裏話たっぷりの副音声からは、飾らない素顔が見える。さらに、Disc2に収録されたツアーの前半戦に行われた金沢Eight Hallの模様には、ライブハウス育ちの骨太感が表れている。総じて、虚像ではないロックバンドの魅力がパッケージされていると思う。

 続いては3月25日にリリースされた、back numberの『NO MAGIC TOUR 2019 at 大阪城ホール』。ツアーの中から、8月24日に行われた大阪城ホールの模様が収録されている。何よりもオーディエンスを大切にする、求められているものを差し出すというところからか、歌詞を明瞭に届けることに重心を置いているように見えるパフォーマンス。しかし背景には、初回限定盤のDISC2のドキュメントを観てもわかるように、バンドの細やかな音作りもある。その成果が、どの楽曲のイントロでも起きていた大歓声なのだと思う。つくづく“楽曲が愛されているバンド”であることが伝わってきた。

back number – HAPPY BIRTHDAY<NO MAGIC TOUR 2019 at大阪城ホール>期間限定公開
back number – 雨と僕の話<NO MAGIC TOUR 2019 at大阪城ホール>期間限定公開

 さらに、DISC1には紛れもないロックバンドの衝動が、DISC2には和気藹々とした雰囲気が収められており、人間臭さも感じられた。彼らの楽曲は“弱い自分”……つまり“普通”な人間像を、美しい表現に昇華しているように聴こえる。プロフェッショナルな尽力は、その生(なま)の姿、生(なま)の声、すなわち“NO MAGIC”な音楽を届けるためのものなのではないか、そんなことを思った。それが一人ひとりへのものとして届いていることは「SISTER」で大写しになったオーディエンスの表情から伺えたし、彼ら自身もそのように届けたいと思っているということは「最深部」のMCから感じることができた。

back number – 大不正解<NO MAGIC TOUR 2019 at大阪城ホール>期間限定公開

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