DEATHSTARSからGHOSTEMANEまで マリリン・マンソンに通ずる“ゴス”な世界観の海外アーティスト
同じくアメリカ出身のMOTIONLESS IN WHITEは昨年5枚目のフルアルバム『Disguise』をリリースしたばかり。ブレイクダウンの多用やダウンチューニングのインフレーションなど、ジャンルの類型を追究しがちなメタルコアシーンにおいて独自の路線をひた走る稀有な存在だ。例に漏れずゴスなメイクを施した姿で活動している。初期から用いられているシンセサイザーによるメランコリックなアレンジは、楽曲をダークでコンセプチュアルなものに方向付けているし、生きることの息苦しさについて歌っていることで内向性に拍車をかけている。最新作ではよりヘヴィなサウンドへと舵が取られているものの、自己の苦悩の烈しさがありありと描かれた詞はかえって鬱屈とした世界へと籠る。ヘヴィネスが諸刃の剣に思えるほどの危うさは、ヴィジュアル系の持つ破滅的で儚いアジテーションに近い。
そして、今最もポスト・マリリン・マンソンに近い位置にいるのが、ヘヴィメタル/ハードコアパンクをバックボーンに持つ米国のラッパー・GHOSTEMANEだと言っていいだろう。主要な音楽フェスにヒップホップアーティストとして出演するのみならず、フランスの大規模メタルフェス『HELLFEST』への出演も果たしている。こうしたジャンル横断型の活動がマンソンを思わせるのだが、白く塗られた血色のない肌に黒と赤のシャドウで縁どられた目元といったビジュアルもまたその系譜にある。楽曲ではトラップメタルと呼ばれる、重低音の強調されたビートにエクストリームミュージックのスクリームに通ずるボーカルが乗った、流行のスタイルを展開。一方で注目すべきはその‟ゴス”ぶりがサブカルチャー的な上辺だけのものではなく、「Nihil」では〈Cut me up to little pieces like you're Ed Poe〉とゴシック小説の代表的作家エドガー・アラン・ポーを比喩に用いるなどリリックに正統な文脈を感じさせることである。
マンソンのデビューから約25年、薄れつつあるゴスとヘヴィミュージックの融合の衝撃は、しかし今だにアンダーグラウンドで更新され続けている。様々な要素が合流し、絡み合い、編み出されていくヘヴィミュージックのテキスタイルは、今後どのような様相を呈していくのだろうか。
■清家咲乃
1996年生まれ。青山学院卒。BURRN!編集部を経て現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。
ヘヴィミュージックを中心に、ルーツロックからヒップホップまで幅広く好む。
『エクストリーム・メタル ディスク・ガイド』などに寄稿。