加山雄三に聞く、レジェンドから新世代まで様々なミュージシャンとの交流と人生を楽しむ秘訣

新しい音楽を理解するためには若者と一緒に演奏しなきゃダメ

ーーところで加山さんは、今回のメンバーよりさらに若い世代のミュージシャンとも積極的に交流し、THE King ALL STARSとしてロックフェスにも出演されていますよね。

加山:新しい音楽を理解するためには若者と一緒に演奏しなきゃダメだし、自分の音楽も若い人たちといることで多少なりとも若返るというかね。で、音楽が若返るということはステージの内容も変わってくる。それでTHE King ALL STARSを始めたんだけど、そうすると出演する場所もロックフェスが多いんだよね。普段の自分のステージとは全く違うから、来てるお客さんの反応も違う。

ーー世代の離れたミュージシャンと接する時に気をつけていることなどありますか?

加山:とにかく「音楽」に没頭すること。そうすれば、お互い何をするのが喜ばれるか分かるじゃない。コミュニケーションなんていうのは感覚だからね。最初は向こうも「年寄りだから」って気を使うかもしれないけど、そんなこと払拭するほどのテンポで持って入り込んでいけば全然問題ないよね。

ーー「音楽」を介せば、世代なんて関係ないと。

加山:世代も国籍も関係ない。言葉の要らないコミュニケーションだからね。「音楽」の本質ってそういうものだと思う。「若者向けの音楽」「年寄り向けの音楽」とか言われるけどさ、幾つになっても若者向けの音楽が好きな人もいれば、若くても年寄り向けの音楽を好んで聴く人もいる。自由なわけだよ。そんな音楽に携わっているということ自体が、幸せなことだと思っているんだ。

ーー普段、音楽はどのようにして聴いているのでしょうか。特に新しい音楽の情報は、どうやって仕入れているのですか?

加山:それは色々あるよ。倅や孫が「これいいよ」って教えてくれたのを、携帯で聴いたり、ダウンロードしてiPodで聴いたりすることもあるし。今の担当マネージャーと初めて会ったとき、DJ MASTERKEYを聴いてたら「それ、一体どこで知ったんですか?」ってびっくりしてたな(笑)。最近だとDYGLが良かった。これはそのマネージャーも知らなかったけどね。

ーーDJ MASTERKEYやDYGLまで聴いているんですか……。

加山:自分じゃ新しいかどうかも分かってなくて(笑)。名前が知られてるとか、どういう立ち位置だとかそんなの全然関係なく、サウンド的に面白いと思ったら何でも聴くよ。GLIM SPANKYの時もそうだったな。でも、その時に無名でも出てくる人は出てくるよね。PUNPEEが「お嫁においで」をカバーしてくれた時も、まだそこまで有名じゃなかったけど、ちゃんと売れるべくして売れてるから。

作詞家・岩谷時子、ビートルズ……60年の間で印象に残る出会い

ーー昭和、平成、令和と常に第一線で活躍し続けてきた加山さんですが、特に音楽活動の面で、この60年を振り返って印象に残っていることを教えてください。

加山:僕の場合は岩谷時子(2013年10月逝去)という素晴らしい作詞家と出会ったのは大きかった。曲を作っても詞がなきゃ意味がない。僕は「しがない(詞がない)作曲家」だからさ。

ーー(笑)。いい作詞家さんとの出会いも重要ですよね。

加山:岩谷時子さんと出会ってなかったら、今の僕はないよね。あの人に依頼した曲だけでも150曲くらい歌えちゃうもんね。事実今、コンサートをやっているけど、岩谷時子さん作詞の曲だけをやってる。彼女の歌詞は、季節や場所にとらわれないんだよね。「旅人よ」という曲も、別に「旅」について“だけ”書かれているんじゃなくて、もっとスケールの大きなテーマになっている。「君といつまでも」くらいだもんね、はっきりと目の前に相手がいるようなラブソングは。「海、その愛」も、シンプルだけどめちゃくちゃスケールの大きな歌詞だろう?

ーーシンプルで余白がある分、聴き手は自分自身を自由に投影できるのかもしれないですね。

加山:まさにそういうことなんだよね。それがすごいと思うんだ。

ーーThe VenturesやThe Beatlesとの交流についても聞かせてもらえますか?

加山:洋楽と最初に接点を持ったヴェンチャーズのことは今も覚えているね。彼らが初来日した時、僕の音楽番組に呼んで、その時にモズライトのギターを3本くれた。当時は僕もザ・ランチャーズというバンドをやっていたからさ。ライトゲージの弦が張ってあって「こんなに簡単にチョーキングできるんだ」って感動してさ。

 ビートルズの4人とは、彼らが初来日したときにただ会っただけなんだけど、ポール・マッカートニーとは2015年に来日した時、家族で会って食事をしたね。当時一緒に撮った写真を見せながら「俺のこと覚えてる?」って聞いたら「覚えてるよ、すき焼き!」って(笑)。すき焼きを食べたこと覚えていてくれた。やっぱり食べ物は大事だね。

ーー(笑)。

加山:ポールは本当にいい奴だよ。びっくりするくらい優しいんだよな。そう言えば、2006年にビートルズの専属カメラマンだったロバート・フリーマン(2019年11月逝去)から電話がかかってきてね。

ーー来日時にビートルズと加山さんの写真を撮影した人物ですね。

加山:彼が「どうしても君に会いたい」って。ちょうど来日40周年記念の時で、当時ビートルズが滞在したヒルトンホテルに呼び出された。そこでまた写真でも撮るのかと思ったら、ビートルズと僕と5人で撮った写真があって、それを自分の写真集に入れていいか、許可を取りに来たっていうんだ(笑)。何でも、ビートルズが4人揃って一人のミュージシャンを囲んだ写真というのは、世界中でこの1枚しかないらしいんだよね。

ーーそうなんですか!

加山:ビートルズの4人のうちの誰かと、一人のミュージシャンを囲んだ写真とか、あるいはビートルズ全員と複数のミュージシャンが一緒に映った写真ならたくさんあるけど。「だから、どうしても掲載したい」って。それで僕が、「別にいいけど、こちらでも(その写真を)使ってもいいね?」と聞いたら「もちろん」って言ってくれて(笑)。それであの写真を僕も自由に使えるようになったんだ。でもまあ、そんな貴重な写真を撮ってもらえたなんて有り難い話だよね。

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