『Passion』インタビュー
大原櫻子が『Passion』に注ぎ込んだ“情熱” 洋楽、NY、舞台出演……様々な刺激からのインスピレーションを明かす
大原櫻子が前作『Enjoy』(2018年6月)以来、1年7カ月ぶりとなる4thオリジナルアルバム『Passion』を2月5日にリリースした。大原の初主演作となったドラマパラビ『びしょ濡れ探偵 水野羽衣』主題歌「I am I」、AbemaTV『恋する❤週末ホームステイ』主題歌「未完成のストーリー」といったタイアップソングのほか、一青窈が歌詞を手がけた「電話出て」、水野良樹の作詞作曲による「きらきらきら」、彼女自身が作詞作曲に関わった「Special Lovers」など多彩な楽曲を収録。「とにかく情熱を注ぎ込みました」という本作は、タイトル通り、シンガーとしてのパッションが強く反映された作品となった。(森朋之)
舞台を経験したことで広がった表現の幅と音域
ーーニューアルバム『Passion』が完成しました。楽曲のテイスト、アルバムのアートワークを含め、新たな表現が感じられるアルバムです。
大原櫻子(以下、大原):そうですね。海外で活躍している作曲家、クリエイターの方とも一緒に制作させてもらって、洋楽テイストの楽曲もたくさん出来たので、いままでの感じとは違った印象があるかもしれませんね。
ーー現在の音楽シーンのグローバルポップとも重なってますよね。今作の音楽性は大原さん自身の意向なんですか?
大原:はい。5周年のベストアルバム『CAM ON!~5th Anniversary Best~』(2019年3月)のツアーのとき、Siaの「Chandelier」をカバーしたんです。それを観た新しいディレクターの方が「こういう方向で曲を作るのもいいんじゃないか」と言ってくれて。もともと私は洋楽を聴いて育ってきたし、やっぱり好きなんですよね。1月に行ったツアーも全曲、洋楽のカバーで構成したんですよ。
ーー洋楽がルーツであり、シンガーとしての基礎になっているのかも。
大原:そうかもしれないです。あとは舞台の影響も大きいですね。舞台を経験させてもらうことで、表現の幅がすごく広がったし、音域も広くなって。自分でも「よくこんなに高い音が出せるな」って思ったり(笑)。
ーー1曲目の「Amazing!」は、まさに現在進行型の洋楽テイストのナンバー。
大原:デモの音源は全部英語で(仮歌を)男性が歌っていたんですよ。途中で出てくるラップのパートも良かったし、ぜひ歌ってみたいと思いました。そのときから「これをアルバムの1曲目にしたい」と思っていたんです。ライブ映えもしそうだし、元気でパワフルな曲から始めたかったので。
ーー「Special Lovers」は、大原さん自身が作詞作曲に参加しています。
大原:Sakaiさん(Ryosuke“Dr.R”Sakai)のスタジオで「最近、どういう音楽が好き?」とか「こういう楽器の音が好きなんですよね」みたいな話をするところから始まって。その場で作ったトラックを流しながら、思い付くままにメロディを付けていったんです。
ーー海外のクリエイターのコライトと同じ方法ですね。
大原:そうですね。Sakaiさんもロサンゼルスで制作をしている方なので、私はすごく自由にやらせてもらいました。頭で計算して作るのではなくて、自然と浮かんできたメロディを歌ったんですよ。だからすごく自分に馴染んでいるし、「音を楽しむって、こういうことだな」ってやっとわかった気がして。歌う楽しさはずっと味わってきたけど、音を作る楽しさを実感できたのは初めてだったし、Sakaiさんとの出会いはすごく大きいですね。歌詞は、岡嶋かな多さんにベースラインを作ってもらって、やり取りしながら完成させました。最初はかわいいイメージのラブソングだったから、もうちょっと現実的というか、リアリティを感じられる言葉も入れてもらって。この前24歳になったので、少し大人っぽく、この年齢だから歌えることも入れたいと思いました。
ーーいきものがかりの水野良樹さんが手がけた「きらきらきら」は、“あなたを愛してる”というストレートな思いを描いたナンバー。水野さんらしいメロディですよね。
大原:熱くて、真っ直ぐで、美しくて、私も「水野さんらしいな」と感じました。じつはこの曲、「さよなら」(水野が書き下ろしたシングル表題曲/2017年)を発表したときにはすでに出来ていた曲なんです。すごくいい曲だから、いつか出せたらいいなと思っていて。歌っていても全然無理がないし、水野さんが私の声の良いところをわかってくれていて、聞かせどころを考えながらメロディやフレーズを組み立ててくれています。
ーーこういうストレートなラブソングも大原さんに似合いますよね。
大原:ありがとうございます。私が通っていた高校の影響もあるかも。“清く正しく美しく”がコンセプトみたいになっていて、友達もピュアな子が多かったし、自分のことを振り返ってみても、どこか真面目というか……。
ーー確かに真面目で真っ直ぐな印象がありますね。「コントラスト」は、ピアノと歌だけで構成されたバラード。すごくライブ感のあるサウンドですね。
大原:ブースは別々だったんですけど、同時に録音したんです。(作曲・編曲を手がけた)川口大輔さんと一緒に“せーの”で録って。どっちかが間違えたらやり直しだし、すごく緊張しました。その場で出てくるフィーリングを大事にしながら、ライブに近い感覚で歌って……。緊張感はあるけど嫌いじゃないんですよね、そういう雰囲気。集中力がグッと増すし、その場で出し切る感じが良くて。作詞の永山マキさんも立ち会ってくれて、「〈向かい風の中 わたしを呼ぶよ〉を大切にしながら歌って」とアドバイスしてもらって。そういう(緊張感がある)環境だったからこそ言葉を大事にしながら歌えた歌だと思いますね。
ーー「Grape」は高橋久美子さんが作詞を担当しています。「夏のおいしいところだけ」、「I am I」「未完成のストーリー」に続くコラボレーションですが、今回の歌詞の印象は?
大原:「夏のおいしいところだけ」の歌詞を書いていただいたときから、高橋さんの言葉のセンス、チョイスが大好きで。今回も素敵な歌詞を歌わせていただいて、嬉しかったです。これは私の捉え方ですけど、高橋さんの歌詞には大人と子どもの間というか、切なくて大人っぽい恋愛もありつつ、どこか青春みたいな雰囲気も感じるんです。私自身もまだそういう時期なんですよね。大人になっていかないといけない年齢なんだけど、子どもっぽいところもけっこうあるんです。大人は色んな経験を重ねていくにつれ、「全部わかってる」って冷静に物事を見るイメージがあるんですが、私はまだまだ初めて経験することも多いし、いつも新鮮な感覚でいたいので子どもっぽさも大事にしていたいし。大人と子どもの間にいます。
ーー「By Your Side」はハワイアンテイストのナンバー。このサウンドも新鮮でした。
大原:アルバムを作るときは、おもしろい曲も入れたいと思っていて。砂肝の曲(「いとしのギーモ」/アルバム『Enjoy』収録)、おにぎりの歌(「のり巻きおにぎり」/アルバム『HAPPY』収録)がそうなんですけど(笑)、「By Your Side」も最初は箸休め的な曲にしようと思ったら、すごく素敵な曲になってしまって。ハワイアンのリズム、音階は初めてだったから、歌うのは難しかったですね。