PRIZMAX、7人で示した類を見ないエンタメ性 ひとつの時代の到達点を見せた『Level 9』

PRIZMAX『Level 9』で見せたひとつの到達点

 役者として幅広い活躍を見せる森崎ウィン(以下、森崎)を擁するダンス&ボーカルグループ、PRIZMAX。12月29日に、彼らの約半年ぶりのワンマン『PRIZMAX Live Level 9 ~CIRCUS WINTER EDITION~』が豊洲PITで行われた。この“Level”と銘打たれたライブシリーズは、その回ごとに歌&ラップやダンス、そして演劇的要素も併せ持つ彼らのパフォーマンス面の成長を刻むものとして続けられてきた。この日はグループ最年長メンバー・福本有希(以下、福本)の卒業公演でもあったのだが、その部分も含めて、彼らのひとつの時代の到達点をステージで示したのだと感じた。本稿では当日の2部を中心にレポートする。

 直近のインタビューでは、今回のライブが7月に行われた『Level 8』の続編的な内容で、裏テーマが「心臓」になると明かされていた。果たして『Level 8』と同じ衣装、同じ楽曲「Light The Night」でスタートしたこの日。まず森崎が1人でステージに登場し、その後パフォーマー4人が1人ずつソロを見せていくという流れまで同じだったのだが、島田がアクロバティックなソロを見せるなど『Level 8』とはまた違ったフルスロットルぶりに目を見張った。森崎のボーカルを力強くサポートしている新ボーカルのケビン、森 英寿(以下、森)の立ち姿からも気合いと自信が感じられた。

 ちなみに2曲目も前回と同じ「DADADADADADA」。同曲でラップを担当するケビンはもちろん、メインボーカルの森崎もラップテイストに歌をアレンジしたりと攻撃的なニュアンスで、たちまちホリックたちを熱気の渦に巻き込んでいく。この日もセンターステージが設けられていたが「DADADADADADA」で森崎を騎馬戦のように担ぎ上げるような動きや、清水がまるでキングのようにメンバーの腕に腰掛ける「Are You Ready?」など、印象的な振付をさまざまな角度から見られるというのもなかなか面白い趣向ではなかっただろうか。

 前回の『Level 8』ではメンバーが客やスタッフとして集う架空のカフェバー“PRIZMAX CAFE”が登場したが、そのストーリーに続きが!? という設定でスタートしたのが“winter love LATTE STORY”ブロック。ここからは、2018年の『Level 7』を盛り上げた女性ダンサーのHana、ANRIも出演。森=店で働く年上女子に一目ぼれ中、清水=店のオーナーの幼馴染で結婚を考えている女性がいる、福本=店で働く年下女子とデートをする仲(※この伏線が後半の「GO!」でも回収される)、森崎=オーナーの幼馴染で元カノが今は幼馴染の1人と付き合っている、などの設定があり、2人の女性をめぐるストーリーがボッサアレンジの「カフェオレ」でミュージカルのように繰り広げられていく。森が気になる年上女子にLINEスタンプを送り、得意のマジックで出したバラを(彼女と付き合っている設定の)清水がさっと奪って彼女に差し出す、というくだりに客席からも笑いが。続く「Angel」では、店で鉢合わせた森崎とその彼女が実は昔恋仲で、今カレである清水が浮かない様子……!? というまさかの展開にも客席から歓声が上がった。

 また今回のライブのポイントとして、各メンバーのプロデュースコーナーが設定されており、当日の1部では清水大樹(以下、清水)、ケビン、新パフォーマーの小川史記(以下、小川)が自作曲などを披露し、会場を大いに盛り上げた。2部では人気曲「take me」のアレンジバージョンに合わせて福本のソロコーナーがスタート。シャツのボタンを1つずつ外し、Hanaと激しくも官能的なパフォーマンスを展開。観客を“お騒がせ”したあとには、森崎が自身の作詞作曲した「抱きしめて行く」を情感豊かにギター1本で弾き語った。中盤の島田のソロコーナーはまさにサーカスのキャストのような雰囲気で、躍動感あふれるチャールストンを踊って楽しませる。そして最年少・森のソロコーナーでは、彼のストレートな歌声がハマるパンキッシュなアレンジの「I Believe」を披露していた。

 島田プロデュース楽曲「rewind」をバックにした映像(表参道でワンカット撮影というチャレンジングな企画!)を挟む、このライブで初お目見えのシックなボルドーの衣装で登場した7人。この日の試みの中でもひときわユニークだったのは、彼らの持ち曲とEBiDANの後輩グループの楽曲を融合させるカバー&ミックス企画。1部ではM!LKの「コーヒーが飲めません」と「UP<UPBEAT」の組み合わせで観客を驚かせたが、この2部ではジャジーにアレンジされたSUPER★DRAGONの「Don't Let Me Down」と、自身の楽曲「OUR ZONE」のラップ部分を融合させて歌い踊るという離れ業(?)を繰り出した。これには客席からも大きなどよめきが。

 セットのベッドを中心に踊る「BAD LOVE」では、各パフォーマーがHana、ANRIとそれぞれペアでパフォーマンスを展開。先ほどの福本のソロコーナーの延長線上のようなセクシーな世界観へと観客たちを誘っていく。最後の森崎の熱を帯びたロングトーンの響きも、このコーナーの高揚感にいっそう彩りを添えていた。

 『Level 8』と同じハンガーラックとトレンチコートが小道具としてステージに置かれた「Never」で、森崎、清水、福本、島田、小川の5人でオリジナルの振付で披露したり、「my girl」で客席からメンバーが登場してサビの〈Kiss me, get it on!〉をホリックたちと息ぴったりで叫ぶなど、これまでのPrizmaXのライブを思い出させるくだりでは、ほんの少し懐かしさにも浸った。

 同ライブの制作の裏側を追ったドキュメンタリー映像に続く最新シングルの表題曲「愛をクダサイ」は、この1年弱でさらに安定感を増した森崎を中心に、ウェットな歌い回しが光るケビン、ハスキーさが際立つ森の3人の歌声の個性が熱く絡み合い、音源を超えるスケール感に圧倒された。同曲に限らずだがパフォーマー勢も、ダンスリーダーの島田を中心に、ラップを含めパフォーマンス面でグループをリードする清水、アクロバティックな動きに磨きをかけた福本、そしてさまざまなジャンルを器用に踊りこなしラップパートも担うようになった小川と、観客を楽しませることに主軸を置きつつも随所に意識の高さを感じさせるポイントがあったように思う。

 「俺ら7人とホリックで、最高のパワーを見せましょう!」という清水の煽りから、曲は「Mysterious Eyes」へ。いつも最高潮の盛り上がりを見せるこの曲では、福本が投げキッスを客席にお見舞いし、悲鳴が巻き起こる。この高いテンションをキープしたまま、血のように赤いライティングの中で披露されたのが、アッパーな最新シングル収録曲の「Beginning」。両手のひらを丸く組み合わせ心臓に見立てたような印象的な振付や、ハイトーンが売りの森崎が“とにかくキーが高い”と語っていた絶唱レベルの歌い回しなど、客席の体感温度を上げるだけ上げて、本編が終了した。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる