『BACK TO BACK』インタビュー
Da-iCE 工藤大輝×大野雄大×花村想太 楽曲制作メンバー鼎談 セルフプロデュースの強みとツインボーカルの理想形
2019年は『Da-iCE 5th Anniversary Tour -BET-』にて初の大阪城ホール2DAYS公演に始まり、ベストアルバム『Da-iCE BEST』発売、自身最大級の全国ツアー展開と、さらなる飛躍を遂げたDa-iCEが、ニューシングル『BACK TO BACK』をリリースした。
表題曲はメンバーの工藤大輝が作詞作曲。続く「Damn it!」は花村想太、「Only for you」は大野雄大が作詞を担当。さらに、さかいゆうが楽曲提供した「VELVET EYES」も収録と、もはやEPと呼びたいほどの充実作となっている。前作シングル『FAKE ME FAKE ME OUT』は藤原聡(Official髭男dism)が楽曲提供と、最近は外部クリエイターとのコラボで新境地を開拓している彼らだが、今回はグループの楽曲制作に携わる機会の多い工藤、花村、大野の3人にインタビュー。「BACK TO BACK」に込めた思いはもちろん、日頃の曲作り方法や、ツインボーカルの理想形など、音楽面についてたっぷり語ってもらった。(猪又孝)【インタビュー最後にはDa-iCE 岩岡徹×和田颯の対決動画も!】
「断トツでこの曲がいいね」と思ったら大輝くんが書いていた
ーー最新シングル『BACK TO BACK』は、どのようなコンセプトから制作が始まったんでしょうか。
大野雄大(以下、大野):最初はアップテンポなものという大まかな方向が決まっているくらいでした。その中で、スタッフさんが集めた楽曲を聴かせていただく試聴会があったんです。そのときに「断トツでこの曲がいいね」ということになって。フタを開けてみたら、(工藤)大輝くんが書いていたんです。
ーー楽曲選びの際に、「ベストアルバムをリリース後の1発目」という部分は考えていましたか?
大野:踊れる曲っていうのはありました。ここで勢いを落とす感じじゃないよねっていう話をした記憶はあります。でも、試聴会のときはそこまで考えていなく。良い曲というか、耳に残る曲をピックアップしていこうという感じでした。
ーー工藤さんは「BACK TO BACK」をどのようなイメージで書いたんですか?
工藤大輝(以下、工藤):2019年の2月にストックホルムに行って曲を書く機会があって、そのうちの1曲なんです。これまでのDa-iCEには、コール&レスポンスができて、なお且つ格好良く踊れるという汎用性が高い曲があまりなかったというのがあって。たとえば、ライブの最中にさりげなくイントロを流して、そこからスムーズにパフォーマンスに入るっていう魅せ方もやっていないなと。それができる曲を作っておこうという気持ちで取りかかりました。
ーーストックホルムでは、いろいろなクリエイターとコライトを重ねていったんですか?
工藤:そうです。今回のAlbin Nordqvistと違う日に、別の作家さんと作ったり。自分が考えているテーマに沿った曲を一緒に作れそうな人をあらかじめピックアップしておいて、その人たちに会いに行ったんです。前年度も1回やっていて、そのときは4〜5人に会っていて。そこでDa-iCEの音楽性や自分の方向性に合う人がいるか確かめて、今年改めて挑んだ感じです。
ーー海外クリエイターとのコライトは積極的にやっていこうと考えているんですか?
工藤:やり始めたのは5、6年前で、最初はストックホルムの作家が日本に来たときに一緒に書いたんです。そこからダンスボーカルの曲作りの教科書を少しずつ学んでいったので、自然と海外作家とコライトしていく流れになりました。特にアップテンポをつくるときはその方がより良い曲が作れる傾向があるように思います。
ーー海外の作家と共作したほうがしっくりくる。
工藤:トラックが海外作家でメロディを日本人が書くと、いい塩梅にメロディアスになるし、ゴリっとしたトラックにもなるっていう。特に僕らは、サビをあまり(EDMの)ドロップのようにしない。ちゃんと歌モノとして聴けるものを、というのがテーマにあるので、それに合うのがこの作り方なのかなって思います。
ーーDa-iCEにはドロップNGという暗黙の了解みたいなものがあるんですね。
工藤:「っぽい」ものはありますけど、基本的にボーカルの歌をフィーチャーしたいので。それを前提にした上で、トレンドをどれくらいスパイスとして入れられるかっていう考え方なんです。
「BACKシリーズ」はDa-iCEの決意表明みたいな曲
ーー「BACK TO BACK」の歌詞は、どのタイミングで書いたんですか?
工藤:試聴会のときは英語の仮歌詞を入れていました。シングルになることが決まってから書き始めました。
ーーどのような思いで書いたんですか?
工藤:僕らはわりと下克上体質なところがあって。勝手に「BACKシリーズ」と呼んでいるんですけど、ここから頑張っていくぞとか決意表明みたいな曲に「BACK」という単語がつく曲が多いんです。
ーー各アルバムに1曲は入っていますよね。
工藤:たとえば1stアルバムのタイトル曲だった「FIGHT BACK」は僕らがシングルにしたかった曲だったり、インディーズで最初に出したシングルの曲名も「I’ll be back」だったり、BACKシリーズは思い入れが強いんです。でも、メジャーになってから「BACK」がついたシングルはなかったんです。というところで、ベストを経た1発目で、原点回帰という意味のBACKと、BACKシリーズの総括みたいなことができたらいいよねっていう話をして、そこから取りかかりました。
ーー今回の歌詞に対する印象は?
花村想太(以下、花村):歌いやすかったですね。大輝くんは普段から自分も歌っているので、そういうところが歌詞にも出てるんじゃないかと。
大野:あと、大輝くんが書くことによって、ちゃんと聴いたときに「こういうことなのか」っていう意図が見えてくる。歌詞を見たときにそういうことが伝わるのが、メンバーが書く強みだと思います。原点回帰+新しいスタート。ここからまた新しくDa-iCEを作っていくタイミングにぴったりな1曲になったんじゃないかと思います。
ーー2曲目「Damn it!」は花村さんが作詞していますが、トラック先行で書いたんですか?
花村:そうです。「BACK TO BACK」と真逆というか、すごくキャッチーでポップな曲だったので、当初、どっちが表題曲になるかわからなかったんです。でも、「BACK TO BACK」の歌詞は大輝くんが書くとわかっていたので、こっちは僕が書きたいなと。
ーー歌詞でテーマにしたことは?
花村:ちょっとダメな男の子が頑張っているっていうのがテーマなんですけど、一番のテーマは口に出していることがすべてじゃないとか、目に見えるものがすべてじゃないということを書きたかったんです。豪華に見えていても実はハリボテとか、自信満々な男の子に見えるけど、本当は自信がないから虚勢を張ってるとか、そういう二面性を書きたかったんです。
ーー3曲目の「Only for you」は打って変わってバラードです。これは大野さんが作詞しています。
大野:最初にメロディを聴いたときは家族愛が浮かんで来て、親に対する感謝とか昔の思い出に触れる、切なくてあったかいものをイメージして書いたんです。けど、そのあとにバースデーソングに書き直して、さらにもう一度書き直したのがコレなんです。
ーー紆余曲折を経て完成したんですね。
大野:作業している途中で、『宝石商リチャード氏の謎鑑定』というTVアニメのタイアップが決まったので、その世界感もイメージして書くことにしたんです。友達以上恋人未満の同性の絆を描こうと思ったので、恋愛ソングにも聴こえるけど、決定打になるような言葉は使ってないんです。
ーー「好きだよ」みたいな直接的なワードは入れてない。
大野:そう。それに「自若」なんていう言葉は普段使わないですけど、歌詞だから入れられた言葉だし。言葉をいろいろ調べたり、類義語を調べたり、そういう書き方を初めてしたので楽しかったですね。
ーーある程度縛りがある作業も楽しかったりしますよね。
大野:そうですね。宝石商に付随した言葉も選びたかったし、ちょっと縛りがある中での作業は初めてだったんですけど、これもこれでひとつの楽しみ方だなと思いました。あと、ちょっとフザケて入れたんですけど、意外と面白くなった言葉もあります。〈いつも探すfire〉というフレーズ。これ、歌うと語尾がサファイアに聴こえるんです(笑)。