シングル『One Wish』インタビュー
SCREEN mode、『One Wish』を“1stシングル”と語る真意 「自分たちの意思のもとに作られたという意味ではこれが“1”」
ようやくSCREEN modeのイメージが固まってきた
ーーこれはSCREEN modeにとって、大事な1曲になると思います。そしてカップリング2曲目「COLLAGE」は、浮遊感あるミドルロックバラード。これも勇-YOU-さんのファルセットが大フィーチャーされてる。
雅友:3曲目「君といるそれだけで」が先にできて、でも「こういうR&B風なのはもういいかも」みたいなことをスタッフに言われたので(苦笑)。じゃあロックを書くかと思って、書いたのが「COLLAGE」です。勇-YOU-の高音域が出るようになったことで、それこそソウルとかだと、頭から最後までファルセットとか、あるじゃないですか。そういうものをやってみたいと思って書いた曲です。楽器も同じなのですが、高い音はどうしても力んで出しがちですけど、弱い力ではっきり出すのが一番難しい。そういう表現に挑戦してほしいと思って書いた曲です。ずっと高いところにいて、それでも張らずに、抑揚を付けていく。結果的に、チェット・ベイカーみたいな中性的な感じになりましたね。歌詞はいろいろ考えた末、松井五郎さんにお願いしたんですけど、男目線なのか女目線なのか、どっちにも取れるように書いてくれて。
勇-YOU-:松井さんといろいろお話をさせてもらって、すごく大切な人がいるんだけども、お互いに何かしら昔にトラウマを抱えていて、一緒にいるけれども、未来への不安を歌った曲にしたいという話をさせてもらったんですね。それで書いてくださった歌詞がーーそこが松井さんのすごさですけど、そういう心情とも読めるし、別れてしまった心情とも取れるし、聴き手によって奥深さを感じる楽曲になったんじゃないかな? と感じてます。歌に関しては、ファルセットが出るようになったからこその、声をクリアに出すことを求められた楽曲で、こだわって一回録り直してます。高いところに行っても、クリアで、張らずに、たゆたう感じの歌を意識しました。
ーーいい曲です。「COLLAGE」(コラージュ)というタイトルも意味深。
勇-YOU-:「性質の違うものを組み合わせる」という意味なので、僕の最初のテーマがよく出てますね。繋がってるけど、繋がってないのか? みたいな。お互い信じ切れているのか? ということにもなるし。ワードのチョイスがすごいと思います。
ーーそして3曲目「君といるそれだけで」。
雅友:今回からSpotifyやApple Musicや、サブスクリプションにSCREEN modeの曲が入るということで、あれって日常に溶け込むメディアじゃないですか。でもSCREEN modeの曲はメロディがはっきりしすぎて、他事しながら聴くよりも、しっかり聴いちゃう曲が多いから。普段会社に行く時にパッと聴けるような曲がいいなと思って、書いた曲です。
ーーこういう明るいR&B調の曲は得意でしょう。
勇-YOU-:こういう曲調は今までにも歌ってきたので、「COLLAGE」より時間はかからなかったですね。いい曲だと思います。この歌詞も「COLLAGE」同様、自分でテーマを出して、村野直球さんに書いてもらったんですけど、「COLLAGE」とは真逆の内容で、夢や希望に向かって行く時に、叶わないこともあるけど、本当に大切な人がいて、その人と過ごす何気ない日常に幸せはあるんじゃないか? と。そういうことを歌いたくて、こんな感じの曲になりました。
ーー三曲三様、充実のシングル。これで2019年は暮れていくわけですけど、あらためてひとこと。今年はどんな1年でした?
勇-YOU-:今年の1年は、単独ライブをやらせてもらって、フェスにも出させてもらいましたけど、この間のライブ(8月4日/下北沢GARDEN)で、同じ声優でもあり、尊敬している人でもある豊永利行くんをゲストに迎えた、それが非常に印象深いですね。一人では見えないことが、彼と一緒にライブを作っていくことで、彼の引き出し、彼のやり方、彼のモチベーションを間近で見られて、非常に刺激になったし、それをSCREEN modeのライブにも生かせたらと思いました。たとえばですけど、大きな夢を言うと、SCREEN modeが主催のフェスとかやってみたいなという思いはあるし、あるいはコラボ、対バンとかもできたら嬉しいなと感じている今日この頃です。
雅友:「SCREEN modeってこういう感じだよね」みたいなものが、ようやくできてきたと思いますね。初期は「極限Dreamer」とか、四つ打ちで打ち込みの曲みたいな、要は従来のアニメソングのフォーマットに近いものをやっていて、それはそれでSCREEN modeだったんですけど。ここ何作かで、勇-YOU-のファルセットだったりとか、サウンド的にも音数を減らして表現したりとか、コード感にジャズっぽいボイシングが出てきたりして、でもメロディはポップでキャッチーで、ようやく「こういう人たちなんだな」というものが固まってきたかなと思います。
ーーなるほど。確かに。
雅友:今までは、普通に林勇という人がいて、歌がうまいだけだったんで。でも「歌がうまい」から一歩出るというか、「ファルセットすごいですね」とか、サウンド的にも同じことが言えると思います。歌詞についても、今回僕が単独で書いて、今後は勇-YOU-にももっと書いてもらいたいし、作家の先生に書いてもらうにしても、頼み方がだいぶ変わってきて、主人公の立ち位置が明確になってきた部分があるので。やっと固まってきたなという、遅すぎるんですけど。
ーーいやいや。むしろ幸せなことじゃないですか。
雅友:レコード会社が、10代のバンドを見つけてきて、5年ぐらい育成してデビューみたいなことをよく見てきましたけど、やっぱり5年はかかるんだなと思いました(笑)。そんなこと言ったら駄目なんでしょうけど。本当はね、こういうことがはっきりしてから、「極限Dreamer」や「Naked Dive」を出すのが良かったのかもしれないですけどね。ベースはここで、出かけて行ってそれをやって、また戻ってくる。でも最初はそこが定まってなくて、来た球を打ち返すのに精いっぱいだったから。
ーーそうでした。
雅友:自分たちの曲がサブスクに入って、あらためて古い曲を聴くと、意外とカップリングには今みたいな曲が入ってるんですよね。「COLLAGE」や「君といるそれだけで」のような曲が。だから、その要素はずっとあったはずなんですけど、「これが僕たちです」という意識がないから、ただ曲があっただけ。サブスクリプションで、シャッフルで聴いて、今さら反省してます(笑)。自分たちが気付いていなかったことに対して。『SOUL』『1/1』『約束の空』という3枚のアルバムから、そういうことを考えるようになったので、そこから数えるとまだ2年ちょっとですよ。
ーーそうなんですよね。まだまだ始まったばかり。
雅友:今回で11thシングルですけど、1を取って「1stシングル」と言ったほうがいいかもしれない。僕的には、それぐらいの気持ちがあります。歌詞も、サウンドも、歌い方も、何もかも「こうでなければいけない」という自分たちの意思のもとに作られたという意味では、これが「1」ですね。「One Wish」の、「One」だけに。
ーーうまい。
雅友:そんなにうまくないです(笑)。でも、そんなことを考えさせられた1年でした。今、やってて面白いですよ。楽しいです。2020年の予定は、まだ決まってないですけど、ライブをできるようにしたいですね。待っていてほしいです。
(取材・文=宮本英夫)
■リリース情報
『One Wish』
発売:2019年11月27日(水)
価格:¥1,430(税抜)
TVアニメ『警視庁 特務部 特殊凶悪犯対策室 第七課 -トクナナ-』エンディング主題歌
新曲「One Wish」を含むSCREEN modeの楽曲が主要サブスクリプション型(定額制)配信サービスにて配信開始
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