EP『WEEKENDER』インタビュー

THIS IS JAPANが語る、迷いを経たバンドの強さ「一回行き詰まったからこそ前向きな気持ちを感じられた」

 THIS IS JAPANが、11月27日にEP『WEEKENDER』をリリースした。2011年、大学在学中に結成以降、常にバンドシーンにメッセージを投げかけてきた彼ら。2017年には、自主企画のコンピレーションCD『NOT FORMAL ~NEW ALTERNATIVE~』、2018年にはミニアルバム『FROM ALTERNATIVE』をリリース。オルタナティブロックを盛り上げるべく順調な活動を続けているように見えた彼らだが、実はその頃から“自分たちのメッセージが伝えられるところには、もう伝わってしまったのではないか”という虚しさを抱くようになっていったのだという。今作は、そんな苦悩や葛藤の日々を乗り越え、メンバーそれぞれがTHIS IS JAPANというバンドに向き合い制作された“過渡期”的なアルバムだ。はたして、彼らはどのようにして現在の境地にまで辿りつくことができたのか。石井恵梨子がメンバーたちの当時の様子を含め、赤裸々な思いを聞いた。(編集部)

今までを壊そう(小山祐樹) 

ーー前作『FROM ALTERNATIVE』は、“俺たちはこれだ!”っていう8ビートの爆音で固めた作品でしたけど、そこからまた変わりましたよね。最初は“あれ? 迷ってるのかな?”と思ってしまって。

かわむら:そこはずっと考えてたところで。まず『FROM ALTERNATIVE』が自分たちから生まれた本当にピュアなものかどうか、っていうのを見つめ直したんですね。当時はオルタナコンピの『NOT FORMAL 〜NEW ALTERNATIVE〜』を企画したり、自分たちが旗持ちとして、って言うんですかね? 掲げたメッセージとかシーンとかを背負って、ちゃんと意識して初めてバンドをやれて。その意味ではすごくエネルギーのあるものができあがったと思ってるんです。

一一はい。ディスジャパが再びオルタナティブロックを鳴らすぞ、と。

かわむら:そう。でもそこを経て、自分たちがそもそもなぜバンドをやっているのか、どんな音楽をしたいのか、モノづくりの原点をすごく意識したんですよ。

小山祐樹(以下、小山):まぁ“迷ってる”って言葉はわかりますし、僕らも迷いが全然ないかって言ったら、迷いのあるアルバムだとは思うんですね。それは悪い意味じゃなくて。前作は8ビートで固めてギターを掻き鳴らして進んでいくスタイルで、それは全然いいものだったと思うし。でも「じゃあ次、何やろうか」って4人で考えたときに、ちょっとスタイルが限定されちゃってる、そこに息が詰まるっていう印象が……口には出さないけどなんとなくあって。

一一あぁ。その感覚は、みなさんにもありましたか。

杉森ジャック(以下、杉森):そうですね。ライブで何回かそういうタイミングがあって。こっちは全力で『FROM ALTERNATIVE』の曲を掻き鳴らしてるんだけど……正直その、伝わるところまでは伝わってしまったのかなって。これはネガティブな意味で。ここまでしか伝わらなかったし、伝えられるところはもう伝わってしまったなって。

小山:ライブでの虚しさみたいなのは少し感じてましたね。5列、6列くらいまではすごく盛り上がってる。確実に動かせてる実感があるんですけど、でもその後ろの人たち、一番後ろの壁にもたれかかってる人までどうやったら動くんだろうって。ほんとに前のほうだけ暴れてたらそれでいいのかな? って、そっちのほうを考えるようになって。

杉森:そう。あとやっぱりTHIS IS JAPANは4人で何か目的を掲げてやるバンドっていうより、まず「4人でバンドやろうぜ」ってところから始まってるんで、何か目的に向かって走り続けることが音楽的に新しい興奮を生み出すことに直結してるのか、っていう疑問が徐々に出てきたのかな。

かわむら:まずあなた、曲書けなくなってたよね?

杉森:そうだ。まず曲が書けなくなっちゃった。書いてはいるけど新しいものができなくて。最初は『FROM ALTERNATIVE』の延長で作ってたんです。でも同じタイプの曲を同じ気持ちで書いても、やっぱり更新できないし、なんかつまんない。それは自分でも思ってましたね。で、そこからはもうスタイルとか考えずに好きにデモを作ってみようって。初心に帰るというか、原点、まっさらな気持ちになって新曲をいっぱい作ろうと。そういうのが今回の背景にあって。

小山:その中で選ばれた曲が今回入ってるから。当然前作の流れとは繋がってないし、むしろ今までを壊そう、ぐらいの勢いで作った曲たちですね。

一一『FROM ALTERNATIVE』と書かれた旗を掲げたはいいけど、それをずっと振り続けることが目的じゃないと気づいていった感じ。

かわむら:そう。あと単純に時代が変わってきたことはすごく感じますね。我々みたいなインディーズのバンドから見たマスの世界、あと同じインディーズの世界、両方を見ても変わってきたと思いますよ。3〜4年前までは何かをぶつけたくなる敵とか、大きな流れがあったんですね。もちろん今もやりきれないこと、くだらないなと思うことはあるんですけど……なんか「そこにエネルギーを注ぐのもったいなくないか?」っていう。

小山:ていうか「敵……誰なんだろう?」みたいな。

一一4つ打ち全盛期なら「カンタンなビートにしなきゃ踊れないのか」って曲をぶつける意味もあったと思う。でも今、オルタナはそれぞれ自由にやってるし、コンピに参加していたバンド、CHAIとかもどんどん外に出ている。

かわむら:そうなんです。コンピに集まってくれたみんなが活躍してる時代一一それは俺たちのお陰ってわけじゃなくて。じゃあ大きいところに目を向けてみたら、たとえば我々は今年フジロックに出演して、大きいステージも見ましたけど、そこで格好悪いものが何もなかったんですよね。だったらマスとか敵のこと考えるより、ちゃんと4人で頭を突き合わせて、今興味あるものをちゃんと伝え合って、改めて自分たちの芯を見つけていくほうが面白いなって。でもそこで、杉森だけは旗持ったまま誰を相手に戦えばいいかわかんなくなってた。

水元太郎(以下、水元):杉森さんがなかなかモードを切り替えられなかったんですよ。「オルタナじゃい」みたいな旗を持ったまま……。

杉森:オルタナ残党兵になってた(笑)。

水元:ほんとはもっとやりたいことあるんじゃないの? って思ってたんですよ。面白いことやりたいだろうし、もっといろいろ聴いてるんだから、ひとつのスタイルに縛られないでどんどん出していったほうが面白い。そう思いながら俺は、ずっと杉森さんの精神のケアをしてました。

かわむら:当時めちゃくちゃピリついてたね(笑)。杉森が完全燃焼して作ったものがちゃんと響かなかったから。『FROM ALTERNATIVE』が我々の予想を超えてもっと大きなものを動かしていったかと言えば、もちろんそんな手応えはなくて。そこも大きかったんじゃない?

杉森:だと思う。前の作品は俺の高校とか中学の頃の憧れをそのままぶつけたものだし、当然俺の書いた曲が多かったし。それこそ旗持ったまま「俺が終わった……!」みたいになって、そのまま残党兵に(苦笑)。それでしばらく曲が書けなくなってた部分もあるでしょうね。

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