『OLDFOX』リリース特別対談
チェリコ KAT$UO×さらば青春の光 森田哲矢が語り合う、好きなことを追求するパンクな生き方
KAT$UO&森田の“パンクとの出会い”
ーーでは、ここで音楽についてもお聞きしたいなと思っているんですが、森田さんの音楽遍歴はどういうものなんですか。
森田:音楽は全然詳しくないんですよ。ひとつ自慢があるとすれば、いちばん最初に親に買ってもらったCDが井上陽水さんの『少年時代』なんです。自分でお金を出して買った最初のCDは奥田民生さんの『愛のために』。ここは、音楽ファンも許してくれるところというか。
ーー正統派な流れですね。
森田:青春期はもっぱらハイロウズ(THE HIGH-LOWS)とブルーハーツ(THE BLUE HEARTS)ですね。ロックンロールというものはハイロウズしか知らなかったので。その後、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTとかそのへんも聴くようになって、という感じですかね。自分がカッコいいと思えるものが好きでした。
ーーなぜ最初が井上陽水さんだったんですか。
森田:藤子不二雄Aさんの漫画が映画化されたときの主題歌で、多分それで聴いたんだと思います。小3か小4だったと思うんですけど、単純に僕らの周りで「少年時代」が流行っていたんです。当時、井上陽水という人はまったく知らなかったけど、この曲ええよなっていうので。
ーーKAT$UOさんがパンクロックに目覚めたきっかけは?
KAT$UO:僕は18歳くらいのときに、<Epitaph Records>のバンドが入ってきたときですかね。最初はハードロックから聴きはじめたんです。Mötley CrüeとかGuns N' RosesとかAerosmithとかを聴いていたんですけど、そのあたりはそれ以上掘り進めなかったし、なんか物足りなさを感じてきて。もともと親の趣味で、幼少期からカントリーやブルース、ロカビリーが家で流れている環境だったんですけど。
森田:じゃあ、J-POPは聴いてないってこと?
KAT$UO:聴いてたよ、加山雄三と和田アキ子とか。
森田:いいですねえ。
KAT$UO:でも、どんな洋楽を聴いてもやっぱりロカビリーの方がグッとくるなって気持ちがあったんです。ハードロックを聴いても、ちがうんだよな、ロカビリーの方が熱いんだよなって思ったとき、全然売れなかったバンドなんですけど、当時エピタフにThe Humpersというガレージバンドがいて。そいつらがやけにロックンロールで、なんだこれ? と思って。最初は、これがパンクかと思ったんですよね。それで、いろんなものを聴き漁っていった結果、あいつらは特別だったんだなって思ったんですけど(笑)。それが18歳くらいだったのかな。
ーー森田さんは、ハイロウズやブルーハーツのどんなところにグッときていたんですか。
森田:わからないんです。それまでは世代的にも、Mr.ChildrenやB‘zとか、もっと言えば小学生の頃はWANDS、T-BOLANを聴いていて。17歳くらいのときやったと思うんですけど、友達に「これ聴いてみ?」って言われて聴いたのが、ハイロウズの『ロブスター』という松本人志さんがジャケットのデザインをしたアルバムで。そのアルバムの「不死身のエレキマン」という曲がむちゃくちゃカッコよくて。「あ、これはなんか違う」って、今まで聴いてたJ-POPとは一線を画してる気がしたんですよね。そこから遡ってブルーハーツの存在を知って。「リンダリンダ」とか「TRAIN-TRAIN」を歌っていたのはこの人たちなんだ、と。
ーー感覚的に惹かれるものがあったんですね。
森田:好きになるべくしてなった感じはしました。高校を留年したり、自分の生い立ちにも歌詞が響く部分もあったんじゃないですかね。あとはハイロウズはばかばかしいというか、何も歌ってない感じがして好きなんです。ブルーハーツは社会に対してメッセージがありましたけど、ハイロウズはそういうのをなしに、どうでもいいことを歌っているのが好きでしたね。
森田「僕が死んだら葬式で流してほしい」
ーー今回THE CHERRY COKE$の最新アルバム『OLDFOX』も聴いていただいてるということですが、アルバムはどうでしたか。
森田:めちゃくちゃかっこよかったです、全部! 全部かっこよかったです。
KAT$UO:(笑)。
森田:僕は「Daydream Believer」が好きでしたね。同じタイトルの、THE TIMERSの「デイ・ドリーム・ビリーバー」も好きなので。
ーーこの「Daydream Believer」は今だからこそ歌える曲で、20周年にふさわしい内容でもありますね。
KAT$UO:この20年間、さまざまな段階を経た自分たちへのメッセージソングというつもりで書いた曲ですね。これまで結構メンバーチェンジもあって、10年前くらいからそういったバタバタは続いていますけど。良いときもあれば、全然良くないときもあるし、ここで終わりなのかなとか、これ以上やって何かあるのかなっていう葛藤はみんな口には出さなかったけどあったと思うんです。そういうことに対して、20年経って今こういう景色を見れているよっていうのを当時の自分たちに伝えたいなという曲ですね。
森田:僕は一滴も酒が飲めないんですけど、THE CHERRY COKE$の曲は全部、酒場感があるじゃないですか。酒飲みてえなってなりますね……飲みたくないですけど。
KAT$UO:(笑)。
森田:酒飲んで陽気に踊りたいなっていう気持ちはあります。あと「桜船〜Sail Of Life〜」で途中で歌ってるのはすずさん(SUZUYO/A.Sax&T.Whistle)ですよね。
KAT$UO:そう。
森田:最近、すずさんに会ってないので。そういや。久々にすずさんの声を聞いたなという。
KAT$UO:曲で生存確認ができたと(笑)。
ーーTHE CHERRY COKE$の歌は、人生の重みや、だからこその祝祭感というのが聞こえてきますよね。みんなで盃を掲げたくなる音楽だというのはすごくわかります。
森田:僕は音楽のことをまったく知らないので、アイリッシュパンクというジャンルで身近にいるのがTHE CHERRY COKE$だけなんですよ。だから、自分の中での唯一無二感がある人たちなんですよね。
KAT$UO:アイルランドのトラディショナルミュージックって、ダンスとかの文化もそうなんですけど、迫害や侵略の歴史が背景にあるんですよね。そのなかで大衆酒場であるパブリックハウスで音楽を鳴らして、ひとときの休息や、楽しみがあったりとか。あとは外からはダンスしているのが見えないように、下半身だけで踊る文化とかがあったりと、意味的には悲しい要素が多いんです。それをそのままやろうという気はないんですけど、アイルランド民謡には力があるなって思うんですよね。どこか聴いたことがあるような馴染みもありますしね。THE CHERRY COKE$に関しても、憂いだったり悲しみだったり、そういうものを陽気なメロディで表現するっていうことが多いのかなと思います。
森田:前奏が完璧ですよね、そこだけでも陽気でテンションが上がるっていう。もはや僕が死んだら葬式で流してほしいくらい。で、途中から哀愁が出てくる。
ーーTHE CHERRY COKE$の音楽はどんな時に聴くことが多いですか。
森田:今回みたいにKAT$UOさんができたよって持ってきてくれるときに聴いたりとか、あとはYouTubeで聴くことが多いですね。家にCDを再生するものがないもので(笑)。寝れないときによく聴かせてもらってます。
KAT$UO:寝るときなんだ(笑)。
森田:THE CHERRY COKE$も聴きますし、BRAHMANのTOSHI-LOWさんのMCをずっとYouTubeで聴いたりしてます。で、気づいたら泣いてるときがあるんですよね。