宮本浩次と横山健が共鳴した理由 映画『宮本から君へ』主題歌に収められた“真剣勝負”の記録

 エレファントカシマシの宮本浩次(Vo)が、10月18日の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に出演する。今回宮本は10月23日にリリースする最新シングル曲「Do you remember?」を披露する予定だ。

宮本浩次-Do you remember?

 近年、椎名林檎や東京スカパラダイスオーケストラなど、様々なミュージシャンとの共作楽曲を積極的にリリースしている宮本。今作は初のコラボレーションとなる横山健(HI-STANDARD/ken yokoyama(KEN BAND))をギターに迎えての楽曲となった。横山のほかにも、KEN BANDでベースを務めるJun Gray、ソウル・フラワー・ユニオンのドラマーとして活躍しているJah-Rahといった、歴戦の覇者たるミュージシャンをサポートに迎えた今作は、9月27日に公開された映画『宮本から君へ』の主題歌に起用されたことでも話題を集めている。

 楽曲の中でまず最初に印象に残るのは、横山のギターの一音目を合図としたようにゆったりとした調子ではじまる宮本の歌だ。巻き舌を駆使し、じわじわと熱度を増していく歌声がなぞるのは、聴く者の耳に優しい、いっそ牧歌的なほどの唱歌のようなメロディ。骨太で安定感のある横山のギターがどこか懐かしさすら覚えるメロディと宮本の歌声に鮮やかな色を付け、聴いているだけで体温が上昇するかのような、血が滾るような衝動が緩やかに掻き立てられていく。

 日本のメロコア/パンクロック界を長年牽引し、その礎を築く一員として圧倒的な存在感を持ち続けている横山。彼が奏でる強力無比なギターサウンドとともに鳴らされる、バチバチ弾ける命の火花のような熱さを孕んだ宮本のトップボイスは、間違いなくエレファントカシマシの楽曲やその他ソロでリリースしてきた楽曲のものとは一線を画している。

 宮本の歌声は一見類まれな個性の塊のようにも聴こえるが、これまでの名だたるミュージシャンとのコラボレーション楽曲からもよくわかるように、曲調やメッセージ、そしてバンドやソロなどコンテクストによって表情をガラッと変える柔軟性も有している。それは時に暖かく燃える炎のように、時に人々を包み込む太陽のように色合いや温度を変え、リスナーの胸に迫る。「Do you remember?」から垣間見える彼の新たな表情を引き出したのは、紛れもなく横山のギターであると言っていいだろう。

 宮本と横山の共通点と言えば、何より長年シーンの最前線を走り続け、どこまでも“バンドマン”でい続けているその姿であるが、そんな活動の中で手に入れた唯一無二の個性を、彼らはこの楽曲の中で思い切りぶつけ合っているように聴こえる。約4分半の楽曲の中に詰め込まれているのは、そんなふたりによる手加減なしの真剣勝負の記録だ。だがしかし、初めてのコラボレーションとなった二組の個性は決して喧嘩することなく、互いの全力をもってしてその魅力を引き立て合っているかのように聴こえるのが素晴らしい。

関連記事