LEO IMAI×人間椅子が繰り広げた異色の2マン公演 両者の情熱ぶつけ合う刺激的なライブを見た

 続いてはLEO IMAI。「お経を唱えます」といきなり歌い出し、バンドメンバーの岡村夏彦(Gt)、シゲクニ(Ba)、白根賢一(Dr)も声を重ねる。肉声によるグルーヴから始まったのは、「Omen Man」(アルバム『Made From Nothing』収録)。メンバーそれぞれの音がガッツリとぶつかり合い、強固にしてしなやかなーー矛盾しているようだが、まさにそういう感じなのだーーアンサンブルが立ち上がる。

 人間椅子に匹敵する爆音を突き抜けるようにLEOのボーカルが響き渡り、〈鉄と飯 Metal and food〉という刺激的なフレーズへと結びつく。さらに研ぎ澄まされた近未来的サウンドと古き良きブルースロックが混ざり合う「Bite」、直線的なビートと旧約聖書をモチーフにした歌詞、鋭利な手触りのメロディがひとつになった「Fresh Horses」、「次は呑んだくれの歌を」(LEO今井)と紹介された“ダークなカントリーミュージック”と称すべき「Wino」など、アルバム『VLP』の収録曲を続けて披露。メタル、グランジ、ニューウェイブ、カントリー、ブルースといったLEOのルーツミュージックを内包させたアンサンブル、メンバーそれぞれの個性的なプレイヤビリティが一体化したサウンドは、ここにきてさらなる進化を遂げている。

 この後は『6 Japanese Covers』の曲を続けて演奏。まずはZAZEN BOYSの「ポテトサラダ」。緊張感あふれるファンクネスは原曲に沿っているが、メタリックな音像を加えることで、完全にLEO IMAIの楽曲として昇華されていた。このカバー集に対して向井秀徳は「LEO今井が病的なほどヘヴィーなカバーをブチかました!」というコメントを寄せているが、まさにその通りだ。そして、「ファックミー」(前野健太カバー)では、(なぜかこの曲だけ)サングラスをかけたLEOが豊潤なボーカルを響かせる。破壊的な手触りとロマンティックな表現を併せ持った歌は、原曲の新たな魅力を引き出すと同時に、シンガー・LEO今井のポテンシャルの高さを明確に証明していたと思う。

 『6 Japanese Covers』にボーナストラックとして収録された唯一のオリジナル曲「Fandom(Remix For A Film)」(映画『プリズン13』主題歌)でダークゴシック的な世界を描き出し、ライブは後半へ。強度の高い音がぶつかり合い、確固たる音楽的ストラクチャーへとつながる演奏はまさに圧巻だった。自身の精神と肉体を研ぎ澄ませ、まるで己と戦っているようなLEOのステージングも強く心に残った。

 その頂点は本編ラストの「Tokyo Lights」。都市の光景を描いたリリック、ニューウェイブとヘビィロックが共存するアレンジ、どこにも曖昧なところがなく、すべての音が完全に一体化した演奏と歌は、(現時点における)LEO今井の真骨頂だと思う。

 アンコールでは、まずLEOがひとりで登場し、Black Sabbathの「Changes」を鍵盤で弾き語り。最後は人間椅子のメンバーも参加し、再び「どだればち」をセッション。一夜限りの貴重なライブは大団円を迎えた。人間椅子とLEO今井(LEO IMAI)。ルーツミュージックへの敬意、独創的なクリエイティビティ、ライブにかける鋭い情熱が同時に感じられる、驚くほど刺激的で意義深いイベントだったと思う。2019年10月25日に東京・マイナビBLITZ赤坂で開催される『大都会ツアーファイナル』(LEO IMAI x ZAZEN BOYS +GUESTS:前野健太・呂布カルマ)にも大いに期待したい。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

LEO IMAI オフィシャルサイト

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