NUMBER GIRL、“懐かしさ”と無縁の復活劇 日比谷野音公演を観て感じたこと

NUMBER GIRL、“懐かしさ”と無縁の復活劇

 2019年8月18日、日曜日の夕方。NUMBER GIRLのライブを17年ぶりに観た。

 最近、ライブはどうにも到着が開演ギリギリなことが多くなってしまっていたが、この日は開演までまだ45分ほどもあろうかという頃に、かなりの余裕を持って入場。ビールなど飲み、夏の都心の夕方の野外の雰囲気を堪能しつつ、開演を待った。そもそも、そのくらいの心の準備を一つずつ積み重ねでもしないと、何度NUMBER GIRLが復活するといわれたところで、当日に至ってもあまりにまだまだ信じられなくて、気持ちが整わず、テンションを持っていけるかどうか不安なほどだったのだ。いつまでたってもピンと来ない。実感がない。そのくらい、自分にとっては“復活”から最も遠い存在だったのが、かつてライブがあるたびに足繁く現場へ通っていたNUMBER GIRLだったというわけだ。しかし、開演が近づき段々と野音の座席に人が増えてくると、想像以上に2000年代初頭のライブハウスでよく見かけたような観客たちが大挙して来ていることがわかり、どんどんテンションが上がってくるのを自分でも感じた。「生きていたんだね!!」と互いを称え合うような気持ちである。

 開演時間を5分ほど過ぎた頃、Television「Marquee Moon」のイントロが日比谷野音に流れメンバーが登場すると、自分の近くにいた誰かが「本物だ」と言っているのが聞こえ、ハッとさせられた。この日の野音には、かつてNUMBER GIRLのライブを見たことがある人と、初見の人と、それぞれどのくらいいたのだろうか。

 彼らのインディーズでの1stアルバム『SCHOOL GIRL BYE BYE』に収録されている「大あたりの季節」から緩やかに始まったものの、以降は「鉄風 鋭くなって」「タッチ」「ZEGEN VS UNDERCOVER」と容赦なく畳み掛けてくる4人の演奏に、野音全体がどんどん引き込まれていくのが会場全体の熱や振動で感じ取れた。5曲目の「OMOIDE IN MY HEAD」が終わる頃、この17年分の時差ボケが完治したかの如く、何かが自分の中でカチっと音を立ててはまったような感覚を覚えた。そこからはひたすらに“今”のNUMBER GIRLへと、初見組も古参ファンも同等にのめり込む心地よさに、完全に身を委ねた。

 1999年に「透明少女」を『ミュージックトマトJAPAN』(テレビ神奈川)というミュージックビデオを30分間流す番組で知った私は、当時高校3年生で大学受験に本格的に向かっていく時期だった。夏期講習の合間に録画しておいた第1回目の『RISING SUN ROCK FESTIVAL』のライブ映像を観つつ、「ああ早よ大学入って心置きなくNUMBER GIRLのライブに行きまくりたいぞ……」と受験に挑んだ。そして2000年から2002年までの3年間、本当によく彼らのライブに通い詰めたものだった。彼らが解散した時に21歳だった私は、気づけば37歳になっていた。ちょっと意味がつかめないほどの長い時間である。

 その後、2003年にはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTが解散。個人的にはそれ以降、バンドが20年以上続く、解散があまりない時代になってきたように思っている。当時、NUMBER GIRLは“たったの”7年間(1995〜2002年)しか活動をしておらず、その後、じつに“17年”もの時間が経過したという事実には、正直愕然とするしかなかった。今も活動し続けているバンドの“20周年”を多く経験している昨今において、今回のNUMBER GIRL復活は“続くこと”の価値とは全く別の、不在ゆえに際立つ存在価値について考え直すきっかけにもなっている。“懐かしさ”と無縁の復活劇。この長き不在が際立っていたゆえんとは何なのか、少しは理解できた夜だったようにも思う。

 ライブを見るまでは「私たちはもうNUMBER GIRLを観ることは一生ないだろうし、それでいい」などとたかをくくっていたのだ。言ってしまえばそれは、陳腐な感傷のようなものだったのだと思う。けれども、彼らがいる2019年において、それはあまりにもばかばかしかったと気づかされてもいる。かつて活動した期間が短いこともあり、伝説のように扱われることも多い。一方で神格化されすぎてるな、とも感じていた。そういう部分を、4人は自らの手で塗り替えるべく戻ってきた。しかも「稼ぎてえ」と言いながら向井秀徳はNUMBER GIRLを再始動させた。あの、冗談と本音の境目が曖昧で、洒落の効いた、あの向井秀徳こそが、私たちが熱狂していた姿だったわ、と笑えた。

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