ゲスの極み乙女。、indigo la End、ジェニーハイ…川谷絵音の新曲群に表れた各バンドの独自性

 それぞれの曲の歌詞を見返してみると、この歌詞は他のバンドでは歌わないであろう、というワードがある。〈小粋〉はindigoらしい言葉だし、〈ハートの分譲価格〉はジェニーハイにこそぴったりだ。このように一つ一つのバンドの方向性がより強まっているのは確かである。しかし同時にメロディの面では、どの曲にも聴けば「川谷絵音だ」と思う「キメメロ」のようななものを、彼は着実に作り上げていっているようにも感じる。

 川谷絵音の中に曲が書けないという日はあるのだろうか。これだけ曲を量産していると、一つ一つのクオリティが下がりそうなものだが、数をこなすほどコツを掴んでいるようにさえ思う。提供曲でも、それぞれのボーカリストに合わせた曲を、見事に書き分けている。これはきっと、彼個人の作業のみならず、バンドや編曲者(「さよなら私の青春」では菅野よう子とコラボレーション)などと共作していくことで積み重ねられている技術なのだろう。バンドの方向性を決め、導いていく作業は一バンドだけでも大変なことだろうと想像する。しかし、複数のバンド・プロジェクトを横断しながらアウトプットし続けることは、川谷絵音独自のアイデンティティであるとさえ思う。

indigo la End『濡れゆく私小説』(通常盤)

 10月にはDADARAY『DADABABY』、indigo la End『濡れゆく私小説』、11月には『ジェニーハイストーリー』のリリースも決定。最近では、お笑いコンビ・さらば青春の光の単独ライブに曲を書き下ろしたり、イベントで音楽の未来について語るなど、勢いはとどまることを知らない。インストファンが、気になった曲を調べたら、ichikoro(川谷絵音が参加)だったなどということも、サブスクの普及も手伝って増えているようだ。あなたが聴いているその音楽も、何かの形で川谷が関わっている作品かもしれない。

■深海アオミ
現役医学生・ライター。文系学部卒。一般企業勤務後、医学部医学科に入学。勉強の傍ら、医学からエンタメまで、幅広く執筆中。音楽・ドラマ・お笑いが日々の癒し。医療で身体を、エンタメで心を癒すお手伝いがしたい。Twitter

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