小宮有紗、澁谷梓希、徳井青空……相次ぐ“声優DJ”登場の背景 アニクラシーンの現状に迫る

 声優DJが続々と登場する理由ーーそれは、1時間弱のショーケースの中で、自身の出演アニメから個人的な愛好作品まで、様々な年代やジャンルを“横断”してパフォーマンスを展開できる楽しさがあるからだろう。また、キャスト本人でありDJとして、自身の出演作の楽曲を流すと同時に、生歌やダンスの振りを披露するといった数多くの手札から、その場に最適な選択肢を選べるという強みがあることも、声優DJが誕生した背景にあるのだと思われる。声優のDJ活動は歌やダンスと並び、幅広いスケールを備えた新たな表現の形なのだ。

 さらに近似ジャンルとして、声優による音楽制作(DTM)分野も開拓されている。「MIDI検定1級」を所持する小岩井ことりや、ダンスミュージック志向のハード/ソフトウェア「Maschine」を所持する山下まみ、Jack Westwood名義で音楽活動をする武内駿輔など、その顔ぶれは様々。なかでも武内は、インターネットレーベル<TREKKIE TRAX>のMasayoshi Iimoriらを交え、楽曲制作を楽しむ様子がSNSにアップされていたりと、“声優DTM”界隈の動きも楽しみにさせられる。

 最後に、アニクラシーン全体にも視野を広げてみたい。今年8月、DJバー・秋葉原MOGRAが10周年を迎え、「株式会社モグラ」として法人化することを発表。海外に向けてアニソン文化を布教する秋葉原MOGRAの独立は、多くのリスナーにとって一大トピックといえる。また、声優DJの話題に遡れば、同店にてレギュラーイベント『ANISON MATRIX!! -アニソンマトリクス』を主催するchefobaが、中村繪里子にDJレクチャーをしていたことも(参考:NAKAMURA IN THE HOUSE!!)。秋葉原MOGRAなくして、現在のような光景は拝めなかっただろう(参考:『ごちうさ』DJイベントにみる、“アニクラ”文化の歴史と発展)。

 小宮有紗をはじめとする声優DJの登場や、秋葉原MOGRAの法人化といったように、数多くの吉報が飛び交う現在のアニソンクラブシーン。今後もさらなる速度で、文化的成熟の時期へと突き進むことだろう。

(文=一条皓太)

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