桜井日奈子、さユり、LiSA…女性ボーカルから求められるMY FIRST STORY Shoのブレない作家性

 以上3曲には2つの大きな共通点がある。ひとつは、Shoを制作者として迎えるにあたり、曲を提供される側が、普段とは毛色の違うアプローチに臨んでいること。もうひとつは、曲のなかの主人公がいずれも強い意思を持ち、悩んだり挫けそうになったりしながらも、前を向いて突き進むような人物であること。逆に言うと、そういう人物像がShoの得意とするハードロック系のサウンドと相性が良いということだろう。

 それを踏まえて考えると、LiSAの「罪人」はやや特殊であり興味深い例だ。「罪人」は作詞がLiSAで、作曲・編曲がSho。LiSAは先述のようなSho制作曲の特徴について「夢や希望に向かう葛藤を歌うのにとても似合う楽曲」と言及。そのうえで「せっかくなら普段MY FIRST STORYさんが歌わないようなLiSAが歌う言葉をのせたい」とし、狂気と紙一重の愛情を女性目線で歌詞に書いた(参照:LiSAオフィシャルブログ)。どうやら彼女は“LiSAというボーカリストをShoの色に染める”というよりはむしろ、“Shoから提供された曲をLiSAの色に染める”という意識で臨んでいるよう。それはおそらく、LiSAが桜井日奈子やさユり、GIRLFRIENDと比べて、他アーティストから提供された曲をこれまでたくさん歌ってきたボーカリストだから――言い換えると、“キャリアのどのタイミングでShoから提供された曲を歌ったか”が前出の3組と違っているから、であろう。これまでのキャリアを通じて、名だたる作家陣による多種多様な曲を歌ってきたLiSAは、表現者として、曲が最も面白くなるようなアプローチを発明しようというフェーズに差し掛かっている。

 バンドのソングライターが外部アーティストに曲を提供するとき、それを課外活動的に捉え、所属バンドとは異なる作風にする人もいるが、Shoの場合はバンドのやり方をそのまま輸出しているような印象。アーティスト性の拡張を狙い、新たな表現の獲得を目指す女性ボーカリストがShoによるハードロックを求めるのは、そのブレない作家性によるところが大きいのかもしれない。

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。

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