SOIL&“PIMP”SESSIONS 社長が語る、『BEM』音楽での挑戦やサントラ制作がバンドに与える影響

SOIL、サントラ制作から受ける影響

テクノロジーとオールドスクールの両方を持っているのが特性

ーーSOILの現在の方向性とも合致していた、と。

社長:はい。たとえばトリガーという機材を使って、打ち込みの音と生ドラムを同時に鳴らしたり、シーケンスをリアルタイムでコントロールしたり。テクノロジーを使った、ダンスミュージック寄りのジャズですよね。一方では、今回のサントラに入っている「Before The Dawn」のようなオールドスクールのジャズもあって。その両方を持っているのが我々の特性だし、『BEM』のサントラを作ったことで、それがさらに増強された感覚もあります。

ーーなるほど。SOILがテクノロジーを導入した楽曲制作をはじめたのは、どんなきっかけだったんですか?

社長:2017年にメンバーが脱退して、一時活動休止したタイミングだったかもしれないですね。翌年、再出発するにあたって、「この先、自分たちはどういう音を鳴らすべきか」ということを考えていて。その時期に「デジタルの導入もひとつの方法だよね」というアイデアが出てきたので。

ーー偶然かもしれませんが、世界的にもジャズとエレクトロが接近していた時期ですよね。

社長:この2年間くらいで増えましたよね、そういうスタイルが。おそらく、同じような感覚をみなさんが持っていたんじゃないですかね。あとは単純に、テクノロジーの発達もあると思います。シーケンスを流して演奏するだけではなくて、尺を自由に変えるような演奏にも対応できるようになっているので。ただ、SOILの軸は“フィジカルなライブ”なんですよ。生でライブをやることを前提にして、その表現を広げるためにテクノロジーを取り入れているので。そのバランスは今後も変わらないでしょうね。

ーーリズムの動向についてもう少し聞きたいのですが、社長がいま気になっているビートはどういうものですか?

社長:まず、UKジャズはアフロビートが主流になってるんですよね。人種の混ざり方が背景にあるんだと思いますが、サウスロンドンにはアフリカ系、アラブ系の移民が多くて、そのリズムとジャズが融合していて。クラブシーンでもアフリカ系のリズムが盛り上がってるみたいなんですよね。アフリカンミュージックをサンプリングしたハウスは以前からあったけど、BPMが120くらいに落ちていて、そこにトライバルなリズムが絡んできて。そういう流れには興味があるし、もう少し研究したいと思ってます。トラップに関しては、ブームを超えて、いまやスタンダードになりつつあって。もっとおもしろいことになりそうな気もしますね。

ーーそういうトレンドも意識している、と。

社長:一応、気にはしますね。ただ、いま流行っているものを参照して曲を作っても、出来上がった頃には古くなってるじゃないですか。もう少し前倒しするというか、「次はこんな感じかな」というリズムを捉えることが大事なのかなと。そんな意識もありつつ、一方では「我々は我々」というスタンスも忘れず。その両方を持っている感じでしょうか。「おもしろいな」と思う音楽があればメンバーともできるだけシェアしているし、ライブにもマメに足を運ぶようにしています。

ーーでは、SOILの活動を続けるにあたって、“東京発のジャズ”を意識することはありますか?

社長:そういう時期もありましたね。初めてグラストンベリーに出たとき(2007年 『Glastonbury Festival』)などは、自分たちが「日本代表」みたいな気持ちもあったし。海外のリスナーがSOILの音に興味を持って、「おもしろい」と思うのは、東京のバンドだからという理由もあるみたいなんですよね。自分たちは意識していないけど、旋律がどこか東洋的だったりするようで。ビジュアルも含めて、東京的、日本的な要素はあるんでしょうね。

ーー最近は若手のジャズミュージシャンも次々と登場していますし、LA、ロンドンのように“東京のジャズシーン”も形成されつつあるのでは?

社長:うーん、そこが難しいところですよね。確かにいまの20代にはおもしろいミュージシャンがいるし、上手いんだけど、それがロンドンのトゥモローズ・ウォリアーズ周辺(Jazz Warriorsのゲイリー・クロスビーによって1991年に設立されたアーティスト開発プログラム)や、ウエストコーストのゲット・ダウン(ケンドリック・ラマー、フライング・ロータスなどの作品を支えるLAのジャズチーム、ウェスト・コースト・ゲット・ダウン)のような動きにつながるかというと、そこまでのレベルには達していないのかなと。もちろん、日本にもすごいプレーヤーがいますけどね。石若駿とか、BIG YUKIとか。そういうミュージシャンに続く人がさらに出てくれば、もっとおもしろくなると思います。

ーー最後に、今後のSOILの活動について。昨年5月にリリースされたアルバム『DAPPER』は、様々なゲストアーティスト(RADWIMPS・野田洋次郎、EGO-WRAPPIN'、Awich、Yahyel・Shun Ikegai&Kodama・Kiala、Nao Kawamuraなど)を招いた作品でしたが、アニメ『BEM』のサントラを経て、次の方向性はどうなりそうですか?

社長:いま、まさにそれを話していて。スタジオに入ったときとか、ご飯を食べているときに、「こういうのはどう?」とか情報を共有しているところなんです。そのなかで方向性をザックリと決めて、制作しながら絞り込んで。いつもそういう感じですね。

(取材・文=森朋之/写真=林直幸)

■リリース情報
TVアニメ『BEM』オリジナルサウンドトラック『OUTSIDE』
発売:8月28日(水)
価格:¥2,500(税抜)

<収録曲>
01. Phantom of Franklin Avenue
02. Blue Eyed Monster
03. Tracking
04. The Light and The Shadowland
05. Shapeshifter
06. Before The Dawn
07. Wanna Be A Man
08. Out of Control
09. Thinking of you
10. In The Gloom of The Forest
11. Inside
12. A Sence of...

SOIL & "PIMP" SESSIONS OFFICIALサイト

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる