THE ORAL CIGARETTESの妖艶さのルーツはどこにある? 山中拓也の存在感を軸に考察
そんな山中が親友と呼ぶのが元SuGで現在はsleepyheadでソロとして活動する武瑠だ。この二人が知り合ったきっかけは音楽ではなくファッションだというのだから興味深い。武瑠自身もsleepyheadを“3D音楽”(音楽、映像、小説、デザイン、ファッションをミックスしたプロジェクト)と名付け、“上質の闇”をテーマに活動している。また、彼が手がけるファッションブランド・million dollar orchestrAも“ストリートゴシック”スタイルを提案していることから、山中の根底にあるダークな部分に親和性を感じ、お互いにお互いを似ていると話す。さらに、武瑠はTHE ORAL CIGARETTESの「PSYCHOPATH」のMVにクリエイティブディレクターとして携わり、逆に山中はsleepyheadが9月にリリースする『endroll』に楽曲提供するなど密な交流が続いている。
自らのルーツを大切にしながらも、それを一方向から見るのではなく多角的に見ることで『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』でGLASS STAGEでライブをするようなオーバーグラウンドなバンドへと上り詰めたTHE ORAL CIGARETTES。今でもそのルーツに敬意を払っているからこそ、前述の『LUNATIC FEST.2018』への出演や、記憶に新しい今年の『ROCK IN JAPAN FES 2019』でHYDEのステージへのゲスト出演に繋がっているのだ。そんな彼らは8月28日にバンド初となる2枚組ベストアルバム『Before It’s Too Late』をリリースする。DISC1には彼らの名前を一躍世間に知らしめた「狂乱 Hey Kids!!」や「BLACK MEMORY」を含む全20曲、DISC2には彼らの二面性やダークな魅力をさらに体感できる全19曲が収録されている。
これまでも多くのBKW(彼らがよく口にする言葉で“番狂わせ”の意味)を起こしてきたTHE ORAL CIGARETTESだが、この勢いはまだまだ収まりそうもない。まだ彼らに触れたことがない人は“Before It’s Too Late”つまり手遅れになる前に手に取ってほしい。きっとそう遠くない未来にアンダーグラウンドとオーバーグラウンドの間からその全てを飲み込んでしまうようなとてつもなく大きなBKWを起こしてくれるはずだ。
■オザキケイト
平成元年生まれの音楽ライター。ヴィジュアル系を中心にライブレポートやコラムを執筆している。「Real Sound」や「ウレぴあ総研」、その他バンドのプレスリリースにも寄稿。
ツイッターアカウント:@lellarap__