HYが結成から20年に渡り愛され続ける理由 最新アルバム『RAINBOW』とライブの魅力から紐解く

 昨年からHYの周辺は、さまざまな話題に溢れていた。まず8月にリリースしたベストアルバム『STORY~HY BEST~』をオリコンウィークリーチャートでTOP10入りさせると、直後に仲宗根泉がバラエティ番組に出演。「366日」など数々の名曲を書いてきたことで“恋愛の神様”と言われる彼女が、その楽曲のイメージとは少々かけ離れた愛すべきキャラクターを披露、名だたる大物芸能人とトークバトルを繰り広げる様子が大きな話題となり、約20番組からオファーが殺到したという。その勢いのまま突入したHY4度目となる全国47都道府県ツアーは、全50公演が完全ソールドアウト。年末には代表曲「366日」がCMでカバーされるなど、話題に事欠かない1年だった。

 そんな中、結成20年を迎えるHYが、20周年プロジェクトの第1弾として、6月12日にアルバム『RAINBOW』をリリースする。HYは、2001年にミニアルバム『Departure』でデビュー、2003年にアルバム『Street Story』がインディーズでは異例のチャート1位を獲得し、その名を一気に全国区へと広めた。以降、地元の沖縄をベースに活動を続け、「366日」や「いちばん近くに」など多数のヒット曲を世に送り出し、『NHK紅白歌合戦』にも2度出場を果たすなどしている。本稿ではHYが20年に渡って愛され続ける理由を、最新アルバム『RAINBOW』から紐解きたい。

沖縄の自然と親しみやすさが涙を拭う

 まずHYの歌が、聴く人の背中を優しく押してくれる前向きな応援歌であることは間違いないだろう。今作『RAINBOW』で彼らがテーマにした“虹”には、どんなに辛く苦しいことがあっても、雨上がりには虹が掛かるように、きっと笑顔で明日を迎えられるというエールが込められた。そんなアルバムの表題曲と呼べるのが、オープニングを飾る「no rain no rainbow」。彼らの最大の武器である“ライブ”で、みんなで一緒に盛り上がれるポップチューンだ。心地よく響くサビのハーモニーはまるで青空のようで、心の曇りをきれいに拭い取ってくれるような爽快さがある。明るく軽快なピアノのサウンドも、心が弾んで嫌なことを忘れさせてくれそうだ。この曲は、例えるなら花にあげる水や太陽のようなもの。この曲を聴けば、どんなに落ち込んでいても、明日への一歩を踏み出したくなる。

 HYの楽曲には、まるで沖縄の豊かな自然がそのまま楽曲に宿っているかのような、癒やし効果が感じられるものも多くある。気持ちが落ち込んだ時、海に行って波の音を聞きながら心を落ち着かせる代わりに、HYの曲を聴くというファンも多い。今作で言えば「Island」は、三線のカラッとした音色が心地良く、歌詞には〈ハイビスカス〉が出てくるなど、まるで沖縄にトリップした気分だ。

 また、まるで親戚や近所の友だちを迎え入れるような、親しみやすさがあることもHYの魅力に数えられるだろう。自称“友達になれそうなバンドNo.1”らしい。HYと言えば、高校の同級生と従姉妹で結成された、とても仲の良いバンドとして知られるが、そういう近しい間柄であればこそ注ぐことの出来る愛情を、聴く人にも与えてくれる。根底にあるのは、すべてを包み込んでくれるような深い愛情だと言える。

 例えばミディアムバラード「あなたへ」には、誰もが必ず経験する別れの寂しさや哀しみを、後ろからそっと抱きしめるように包み込んでくれるような優しさがある。故郷を離れて暮らしている人の家族や、離ればなれになってしまっている恋人に対する気持ちが根底に流れていて、その人にとっての大切な場所や大切な言葉を思い出させてくれる。聴き終えた後には、そっと涙がこぼれてくるだろう。

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