常田大希、石若駿、小田朋美……芸大出身アーティストたちが生む音楽シーンの新たな潮流

 石若駿を含むジャズ出身の若手によって2015年に結成されたのがCRCK/LCKS(クラックラックス)だ。ボーカルを担当する小田朋美は芸大の作曲科を卒業。ともすればプログレッシブに傾斜しがちな演奏をポップなテイストに着地させているのは小田のボーカルに負うところが大きい。

 シンガーソングライターとして、また菊地成孔とのDC/PRGやSPANK HAPPY、映画・ドラマの劇伴など小田の活動は多岐にわたるが、なかでも3人組バンドceroへの参加は特筆される。2018年のハイライトになったアルバム『POLY LIFE MULTI SOUL』については多くの場所で語られているため詳細は割愛するが、ブラックミュージックのグルーヴ解釈をポリリズムに敷衍させる“離れ業”をやってのけた同作で、前述した角銅とともに小田のコーラスと鍵盤が色彩豊かなサウンドのキーになっている。

cero / Poly Life Multi Soul(Live At Zepp Divercity Tokyo 2018.06.17)

 3人に共通するのは豊富なアイデアと強度の高い演奏によってポップミュージックを内部から更新していることだ。ポピュラーシーンに対するアートサイドからの橋渡しとして理解できる一連の流れの中で新しい世代も登場しており、ピープルツリーをたどることでより濃密なネットワークに行き着くだろう。

 もとより出身大学は音楽家にとって本質的ではないが、この国の音楽をおもしろくする存在として彼らの活躍に期待したい。たとえるなら、はっぴいえんどからティン・パン・アレーを経てYMOに至る流れが日本語ポップスの豊穣な実りをもたらしたように。その流れはすでにはじまっている。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

関連記事