宗像明将のチャート一刀両断!
乃木坂46、『Sing Out!』で3作目の初週100万枚突破 楽曲に貫かれる“気品と洗練”
参考:2019年6月10日付週間シングルランキング(2019年5月27日~2019年6月2日・ORICON NEWS)
乃木坂46の23枚目のシングル『Sing Out!』が初週で100万枚を突破。乃木坂46にとっては、2018年の『シンクロニシティ』、『帰り道は遠回りしたくなる』に続く初週100万枚突破となりました。『Sing Out!』は、2019年6月10日付の週間シングルランキングでもちろん1位です。
表題曲「Sing Out!」をアイドルポップスとして聴くと、ファンをいきなり盛りあげるような楽曲ではなく、地味にすら感じられるかもしれません。ではJ-POPとして聴くとどうでしょうか? 大きなスケールのなかで、エバーグリーンな魅力に満ちています。
乃木坂46の楽曲を貫いているものとは気品と洗練です。「Sing Out!」もまたその系譜の中にあります。終盤に向けて徐々に昂揚していく構成も魅力的です。
作曲は、乃木坂46の「言霊砲」の作編曲を担当していたRyota Saitoと、欅坂46の「アンビバレント」の作編曲(浦島健太と共作)も担当していたTETTAによる共作。2人ともHOVERBOARDという作家事務所に所属しています。
そして「Sing Out!」で重要なのは、リズムがミニマムなループを基本としていることです。いわゆるブレイクビーツ的な作りで、そこにはヒップホップ以降の感覚があります。音源では5分7秒以降、特にそれが顕著です。「Sing Out!」は、最後はリズムのみとなって終わります。
編曲は野中“まさ”雄一。彼は自身のブログ「“まさ”のたわいもない雑記帳」にこう記しています。
「僕のアイドル系アレンジの中では、かなり音数は少なめ曲かも知れませんね。
乃木坂感出しつつ、手拍子感というかストンプ感みたいなのが豪華になると良いな〜、
と思って作りましたんで、
聴いてくださった方が、手拍子したくなってもらえたら本望です。」
ストンプというキーワードのもと、少ない音数でリズムを強調しているのが「Sing Out!」。MVでも、乃木坂46のメンバーたちがクラップをし続けます。そして、ミュージカルを見ているかのようなMVでもあります。今回の選抜メンバーの1列目には生田絵梨花がいますが、彼女が出演していたミュージカル『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』を見たときの感覚を思い出しもしました。
シンプルであるがゆえに美しい骨格を誇っている。「Sing Out!」はそんな楽曲です。