変化を乗り越えたBABYMETAL、二人の証言から伝わるユニットとしての“強さ”
BABYMETALがゼロ地点へと戻った。一度はユニットの“崩壊”すらも頭をよぎった彼女たちの物語、メタルレジスタンスは今再び動き出そうとしている。
さて、少しばかりごくごく主観的な感想にお付き合い願いたい。時が経つのは早いもので、振り返るとここ一年ほどは、彼女たちに対する気持ちのやり場にとまどっていた。中央のSU-METAL、両翼のYUIMETALとMOAMETALの三位一体で客席を虜にしていた片翼がステージを去り、道中では、ギターの神が永遠の存在となる悲しみにも打ちひしがれた。
そして、2018年10月にYUIMETALが脱退を発表して以降。いや、正確にいえば時間はもっと前からで、2017年12月に彼女が広島グリーンアリーナ公演を欠席し、ステージに姿を現さなくなって以降は、思い出を引きずるべきなのか、それとも変化を受け入れるべきなのか。二者択一を迫られながら、その時々でいずれかの選択肢に心の中の針がふれ続けていた。
その後、ようやく気持ちの整理が付いたのは、彼女が脱退を発表した直後に行われた幕張メッセイベントホール(『WORLD TOUR 2018 in JAPAN』)と、さいたまスーパーアリーナでの公演(『BABYMETAL WORLD TOUR 2018 in JAPAN EXTRA SHOW “DARK NIGHT CARNIVAL”』)を目にしたのがきっかけだった。フロントのメンバーが2人となるも、みずから“ダークサイド”と称する先手を打って、変則的な7人体制のフォーメーションを構えた彼女たち。背後からは、従来どおり神バンドの面々がステージを支えていた。
あるべきと思われていた形が変わろうとも、BABYMETALはステージ上でたしかに求められるべき“体”をなしていた。では、舞台裏で彼女たちは何を思っていたのか。SU-METALとMOAMETALの独白が掲載された雑誌『ぴあMUSIC COMPLEX Vol.13』(ぴあ)の内容を、読み解いていきたい。
みずから“ぶち壊した”1年を乗り越えて強さを示すSU-METAL
国内のメディアで、彼女たちの声が伝えられるのはきわめて珍しい。同誌でも2016年10月発売の「Vol.7」で掲載したメールインタビュー以来の約2年5カ月ぶりで、先述した最新号では、SU-METALとMOAMETALのそれぞれ1万字にも及ぶ貴重なインタビューが収録されている。
激動だった2018年の活動について「自分が置かれている状況を見つめ直した1年だった」と振り返ったのは、SU-METALだ。YUIMETALがいなくなった状況に「今までは1+1+1=100ぐらいになっていたものが、ふたりだとどうがんばっても2にしかならなくて」と語る彼女は、なおも「私としては100%の力を出していたけど、それがお客さんにまで届いていないんじゃないか」と不安も味わっていたという。
しかし、変化のさなかでは「大人になったらこういうダンスを見せていきたい」と、新たな目標も生まれたと述べる。
それは新たにダンサーを迎え入れたのがきっかけで、ライブ後に自分たちを振り返るにあたり異なる視点が加わったことで、例えば、代表曲の一つである「メギツネ」では「大人な部分の見せ方」を、その存在を広く知らしめた「ギミチョコ!!」でも「今までは小さい子が踊るかわいい曲だったのに対して、大人の方が踊ることによって『大人かわいい』みたいな表現をすることができる」と学んだと話している。
さらに、昨年は2017年12月に20歳を迎えたことから「大人とは」と、自問自答していたというSU-METAL。「今までは『学ぶ』立場だったのが、今は人に与えていく立場になってきている実感はあります」とみずからの成長も伝えるが、自分たちの活動についても従来の形を前向きに「ぶち壊したのが去年」だったと振り返りつつ、「私たちはずっと挑戦者」と述べながら今年からは「新たなBABYMETALの形を提示できると思います」と強い意思を示している。