畠中祐、入野自由、蒼井翔太……優れたアーティスト性を発揮した男性声優シンガー新譜5選
歌手デビュー10周年を迎えた2018年にベストアルバム『MAMORU MIYANO presents M&M THE BEST』をリリース、今年2月には新曲「ぼくはヒーロー」で『NHKみんなのうた』に初登場し、5月には劇場アニメ『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEキングダム』の主題歌を表題曲とするニューシングル『アンコール』のリリースを控えている声優・宮野真守。卓越した歌唱力とダンスパフォーマンス、そして幕間にコント映像を挿む独自のエンターテインメントを追求したライブステージも人気で、今年は台湾と上海公演を含む初のアジアツアーを開催することも決定しています。
そんな彼と同じように、男性声優のなかには、歌手活動を行うことで優れたアーティスト性を発揮している人たちが多く存在。近年の2.5次元的な展開を含めたキャラクターコンテンツの隆盛も相まって、ステージやライブパフォーマンスにおいても華のある人材が続々とデビューを飾っています。ということで今回の新譜キュレーション連載では、男性声優アーティストの作品に絞って5タイトルを紹介します。
個人的にイチ押ししたいのが、『うしおととら』の主人公・蒼月潮や『遊☆戯☆王ZEXAL』の九十九遊馬役などで知られる畠中祐の1stアルバム『FIGHTER』。セガゲームスとランティスの共同制作による音楽アプリゲーム『夢色キャスト』への参加が縁で、2017年7月にランティスから歌手デビューした彼。ハスキーながらも清涼感を感じさせるその声質は、前述の声優としての仕事歴からもわかるとおりナチュラルなヒロイック成分を含有していて、真っ直ぐかつ伸びやかに響く歌声は非常に魅力的なものとなっています。
音楽的にはダンスミュージックの要素を取り入れたポップスを志向しており、デビュー曲「STAND UP」では宮野真守に多数の楽曲(「…君へ」「ヒカリ、ヒカル」など)を提供してきたTSUGEを起用して推進力のあるEDMポップを、佐藤純一(fhana)が作曲した「真夏BEAT」ではA-bee編曲によるトラップのフレイバーも含んだ爽快なエレクトロハウスを歌唱。今回のアルバムも全体的にダンス路線を貫いていて、中土智博の作編曲によるビートの効いたリード曲「Fighting for...」をはじめ、2ステップ調の「Addicted」、パーカッシブなリズムが小気味良い「オド☆リバ〜MUSIC IS MAGIC!〜」など、キャッチーで踊れる曲を満載しています。感謝の気持ちを自作詞で伝えるスケールの大きなバラード「あの日の約束」といった純粋に歌唱力で勝負した楽曲も素晴らしく、音楽的に非常に高いポテンシャルを感じさせる作品です。
続いては『千と千尋の神隠し』ハク役を皮切りに、『聲の形』の主人公・石田将也、『おそ松さん』松野トド松など幅広い役を演じる実力派・入野自由のミニアルバム『Live Your Dream』をピックアップ。今年で歌手デビュー10周年を迎える彼は、昨年発表したシングル 『FREEDOM』にてカップリングを含む3曲すべてをシンガーソングライターの向井太一に提供してもらい、近年のR&B〜アーバンポップス的な作法に挑戦。その前作となる2ndアルバム『DARE TO DREAM』でもMummy-D(RHYMESTER)、尾崎雄貴(Bird Bear Hare and Fish)、TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND、シミズコウヘイ(元カラスは真っ白)らに楽曲提供を受けるなど、多彩なクリエイターの協力を得て自由に音楽の翼を広げてきました。
今回のミニアルバムでは、初めてすべての収録曲の作詞をみずから手がけ(共作を含む)、より自分らしい音楽表現を探求。近年は(K)NoW_NAMEのボーカリストとしても活躍するNIKIIEが作曲したリード曲「誰からも愛されるあなたのように」では、たおやかなメロディとサウンドに乗せて様々な出会いがもたらす人生の豊かさを情感豊かに歌唱。アコースティックギターとサンバ風のリズムが心地良い景色を描き出す「Monet」、『DARE TO DREAM』に続きマツキタイジロウ(SCOOBIE DO)が曲提供したシティーポップ調のファンキーな「Lazy morning」、川谷絵音や休日課長らも参加するインストバンド・ichikoroを率いるichikaの変幻自在なギタープレイが光る「例えば歌が日記だったなら」など、入野自身の優しい視点によって育まれた歌詞と歌声が多彩な曲調で楽しめる一枚になっています。