松下優也が明かす、6年ぶりソロアルバムへの想い「影の部分にフォーカスを当てたかった」

今のミュージックシーンには、危うげなものも受け入れられる多様性がある

ーーアルバムの中で、他に印象的な曲はありますか。

松下:アルバムの中で最後にできた曲が、5曲目の「Rendez-Vous」って曲なんです。最近ラップっぽい曲やダンスナンバーが多かったんですけど、最後もう一曲入れるなら懐かしいテイストのR&Bをやりたいなと思って。その日のテンションによって聞く曲って変わるじゃないですか。ラップは攻撃的に勢いづけたい時は良いんですけど、普段なんでもない時に聴ける曲もほしいかったんですよね。それで「Rendez-Vous」を書きました。

ーーどこか懐かしい印象ですよね。9曲目の「Playa Playa」にも通じるものがあるというか。

松下:「Rendez-Vous」は、流行りのR&Bというよりも1990年代後半とか2000年代前半くらいの、懐かしいサウンドのR&Bを意識しています。ライブで盛り上がる曲も欲しかったですし、「Playa Playa」もオールドスクールっぽい感じで、歌詞もそういう風にしてます。1980年代っぽい雰囲気のものを今っぽく落とし込んだイメージですね。

ーー前作からの6年間で日本の音楽シーンも変わってきていますよね。その変化に合わせた部分もありますか?

松下:僕よりもうちょっと下の世代、さとり世代あたりって、闇の要素とか破滅的な要素がウケてるなって、最近感じるんですよ。ただ明るいだけのものじゃなくて、危うげなものというか。たとえば、欅坂46さんのような。アメリカでもそういったダークミュージックが流行っていますよね。ヒップホップとかも「明日死ぬんちゃう?」と思うほどロックなアーティストたちがいて、音楽的にも面白いし、すごくかっこいいなと。ラッパーなんだけどロックスターみたいな(笑)。僕も以前から音楽でそういった影の部分の表現をしていたので、今の日本の音楽シーンにもあっているのかなと思います。

ーーでは、今の音楽シーンに合わせているというよりも、もともと作っていたものをより出しやすくなったという感じでしょうか。

松下:そうですね、多様性が認められやすくなったのかなと。「あ、こういうのでもいいんだ」と思えるようになりました。

ーー曲作りの面でいうと、Jin NakamuraさんやSHUNさんなど長年一緒にやってる方と今回もタッグを組んでいますね。

松下:Nakamuraさんはお願いすると、僕が想像していたよりも遥かに上のものを毎回作ってくださるんですよ。中でも「Painful Romance」は、新曲なんだけど、デビュー当時から僕を知ってくださっている方にとっては、懐かしい雰囲気があるように感じるのではないでしょうか。SHUNは一番の親友なので、好きなことも価値観も似てるんですよ。今回、ようやく組めて嬉しかったです。このアルバムを制作している期間は、舞台本番中だったのですが、SHUNの家に行って「どういうテーマにする?」とか、いろいろと話し合って、意見を出し合いました。でも、SHUN以外の方とも作品を作るときは、トラックダウンのことも含めて、ディスカッションを重ねるようにしています。たとえばラップの曲だと、ラップの重ね方や声のエフェクトのかけ方とかは全部僕が考えています。ラジオっぽいサウンドがいいとか、ピッチシフトで声質を変えたいとか。なんども試行錯誤を重ねて作っているので、案外歌モノよりもラップのほうが時間かかることも多いんですよ。

ーーアーティスト活動以外も忙しいなか、作品づくりにおいて妥協は許さないのですね。

松下:別の現場にいても、スタッフさんから送られてきた音源は必ず聴いてました。自分的に「ここ思ってたのとちゃうねんけどな」と感じる部分があったら、「ここの音もっと上げてください」「ベースの音もっと聴きたいです」などとお願いするようにしていましたね。

ーーそうやって作り上げた『BLACK NEVERLAND』には、R&Bやラップなどいろんな表情の曲が詰まっています。これまでの楽曲と聴き比べると、根本は変わらないけれど幅が広がっているように感じました。

松下:僕は音楽において、とにかくやりたいことが多いので、自分のスタイルは確立していないと思っています。ブラックミュージックは好きなので、そこはブレることはないですが、、今やりたいことを一つひとつやっている感じですね。あとは曲の世界観を意識しながら、松下優也としてどう落とし込むかを常に考えています。

ーーデビュー曲の「foolish foolish」と聴き比べると、曲の世界観や影の部分がより際立ってきたように思います。

松下:あの頃もやりたいことはいっぱいあったし、ダークな世界観も好きだったんですが、まだ18歳だったから、曲に黒い部分がなかったんですよね。素材をどう活かすかを考えていたのかもしれないんですが、ただのマセたガキでした(笑)。その年齢から仕事をしていく上で感じ取った部分もあったんでしょうね。少し前までそういう影の部分を抑え込んでいたんですが、テレビやニュース、SNSとかを見ていると「立場や職業が違ってもみんな悩んでるんだな」、「ぶち当たってる壁って似てるのかもしれない」って思うようになって。だったら、今僕が思っていることを素直に音楽にしちゃった方が僕も良いし、それを求めている人もいるんじゃないかなと。だとしたら、Win-Winだなと思うんですよね(笑)。

関連記事