安月名莉子×ボンジュール鈴木「Whiteout」対談 『ブギーポップは笑わない』EDテーマの“二面性”

 昨年11月、TVアニメ『やがて君になる』のオープニングテーマ「君にふれて」でデビューを果たしたシンガーソングライター、安月名莉子。彼女が2019年の第1弾リリースとなる2ndシングル曲「Whiteout」を完成させた。この楽曲は、上遠野浩平によるライトノベルの金字塔を原作にしたTVアニメ『ブギーポップは笑わない』(AT-X、TOKYO MX、テレビ愛知、KBS京都、サンテレビ、BS11)のエンディングテーマ。「君にふれて」でも作詞/作曲を担当したボンジュール鈴木と引き続きタッグを組み、アニメの世界観と自身の魅力の両方を楽曲に詰め込んでいる。リアルサウンドでは、前作のリリース時に続いて、ふたたびボンジュール鈴木との対談を企画。「Whiteout」の制作過程や楽曲の魅力を聞いた。(杉山仁)

安月名さんが『ブギーポップ』の中に登場したら、どんな存在かと考えた

安月名莉子

――安月名さんとボンジュールさんは「君にふれて」での対談時に「りこちゃんと話すのは
初めて」という話をしていましたが、今回2連続で楽曲をともにすることになりました
ね。

安月名:運命だと思います(笑)。本当に嬉しいです。

ボンジュール:とても嬉しいです。

――その後、2人でゆっくりと話せる機会はあったんですか?

ボンジュール:ないんですよ(笑)。私は安月名さんのMVを観たり、ご活躍を拝見していたので、勝手に距離が近くなっている印象なんですけど、実際にはゆっくりお話できていなくてあれ以来ですよね。

安月名:そうですね(笑)。

――「Whiteout」がEDテーマに起用された『ブギーポップは笑わない』は1998年のライトノベル刊行以来長く愛されてきた作品ですが、この作品にはどんな魅力を感じますか?

安月名:私にとってはエンディングテーマのお話をいただいたときに初めて知った作品でした。これまで読んだライトノベルの中でも初めての印象を受けました。主人公がひとりとは限らなくて、色々な視点から物語が描かれている雰囲気も独特ですし、読んでいくうちに「あっ、ここはこうなんだ」と色々なことが重なっていって、それを理解できたときの感動を覚えています!

――パズルを解いていくように、物語が徐々に分かってくるような作品ですよね。

安月名:物語が繋がった瞬間に感動しました。それに、学生生活を舞台にしながらも、何か不気味な魅力を感じるという意味では、現実的でありながら非現実的なところに入り込めるようでもあって、そこが素敵だと思います。

ボンジュール:思春期ならではの闇や心理状態って、大人になればそこまでたいしたことではなかったな、と思うことかもしれないですけど、その時期の子たちにとってはそれがすべてなんですよね。そこがすごく魅力的に描かれているな、と思いました。現実にはなさそうで、でも現実とも繋がるような雰囲気があって。もちろん、現実世界では人を食べたりはしないですけど……。心理的な意味では色々な人に通じるものが描かれた作品だと思います。

安月名:タイトルからして謎が深い(笑)。

――劇伴もすごくさりげなく入っていて、セリフもゆっくりしていて。

安月名:それに、原作を読んでいるとグッとくる名言が、アニメでもたくさん描かれていてそこにも惹かれます。私が特に好きなのは、「君たちは、泣いてる人を見て何とも思わないのか?」「呆れたものだ。これが文明社会ってわけか?」というブギーポップのセリフです。刺さる言葉が色々とあって、「戦う覚悟を持たなきゃいけないんだよ」というセリフは「自分に言われてるのかな」と思ったり。

ボンジュール:あっ、私も同じ!

――哲学的なセリフが多いですよね。いわゆる世界の敵のようなものが、人の中から湧き上がってくるという意味でも複雑な作品だと思いますし。

ボンジュール鈴木

ボンジュール:私の場合、作詞をやらせていただくことも多いので、曲の世界観を、台詞から連想していくことも多いんです。それを自分の言葉にしていく作業をするんですけど、その中でも「思春期はもろくてとても危うい」という言葉は、『ブギーポップは笑わない』という作品を、ものすごく語っているように感じました。その脆くて危ういダークサイドと、正義感を持つ少女たちの葛藤のようなものが魅力的に描かれているな、と毎回感じます。

――人の中にある二面性が描かれているということですね。ボンジュールさんは曲を作るときにも、そうしたことを意識して曲を作っていったんでしょうか?

ボンジュール:そうですね。ただ、それだけではなくて、どれだけ歌う方と作品を「いい形でその2つを結び付けられるか」ということを考えて制作させていただきました。安月名さんはすごく純粋で、『ブギーポップは笑わない』に出てくるようなダークサイドはあまり感じられないように思うんです。でも、それを演じる力はある方だと思うので、安月名さんがその世界観の中にいたらどうなるだろう?ということを考えながら、曲をイメージしました。安月名さんがクラスメイトにいたら、どういう存在かな、と想像したんです。

安月名:ああ……!!

――安月名さんが『ブギーポップ』の中に登場したら、どんな存在になるだろうか、と。

ボンジュール:絶対にいい子なんですよ(笑)。戦いはしないかもしれないけど、きっと人を救う子になるんじゃないかな、って。でも、そのときに悪とも向き合わなければいけない――。そういうことを想像しました。

安月名:実際、私は学校で『ブギーポップ』のようなことが起こったら、きっと何が起こっているのか興味を持つ気がします。謎を探っていきそうな気がする。末真(和子)タイプ(笑)。

ボンジュール:そんな気がする(笑)。そこに主人公にあたる(宮下)藤花ちゃんのことも加えながら、2人(安月名&藤花)を合致させて書いていきました。物語に忠実でありつつ、安月名さんの歌でもあると思うので。

安月名:今初めて聞きました。もっと色々お話ししたいです……!

ボンジュール:あとは、『ブギーポップは笑わない』ほどダークではなくても、聴いていらっしゃる方が実生活で感じる何かに当てはめて聴けるようなものにもしたいと思っていました。

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