ゴールデンボンバー、『トクサツガガガ』主題歌がオタクの胸を打つ理由 ドラマとの相性を紐解く

 「ガガガガガガガ」はドラマのために書き下ろされた楽曲。ゴールデンボンバーのすべての曲のアレンジを担当しているtatsuo氏は、仮面ライダーなどの特撮ソングも多数手がけているだけあって、特撮ソング調のイントロから思わず熱くなってしまう。MVもデパートの屋上のヒーローショー。

ゴールデンボンバー/ガガガガガガガ Full size

 歌詞も、ドラマの内容とリンクしたものとなっており、好きという気持ちは抑えられないものの、〈but! but! but!ガ!ガ!ガ!However!!言えない!〉と逆接を重ねに重ね、世間や身内からの視線を怖がっている様子が綴られる。この過剰な「が」(=逆説的表現)の連続がゴールデンボンバーの持ち味でもあり、ドラマ内の仲村叶の人間関係に対するおっかなびっくり感があらわれているように思えるのだ。

『ガガガガガガガ』

 『トクサツガガガ』は、仲村叶の身にふりかかるオタバレの危機や人間関係などのトラブルを、(彼女にしか見えない)特撮ヒーローに勇気づけられ、大好きな特撮から得たヒントで解決していくドラマだ。隠しているけど愛してやまない趣味が、自分を助けてくれる。本楽曲の2番では〈昨日疲れ果てて死にそうなとき助けてくれたのは 誰にも理解されない御趣味で〉と、その心強さを高らかに歌い上げているところもポイントだ。

 身内も世間も悪意を持っているわけではない、しかしそれゆえに対処に困ることもある(『トクサツガガガ』において、とくに過干渉な母親の存在がそのように描かれている)。きっと和解もできない、勝てるわけでもないこの世の理不尽と真っ向対決することを鼓舞するわけではなく、ただ素朴に「好きって言っていいかい?」と呼びかける。

 以前、「金爆の根底にあるのは持たざる者の情念と、それに対する優しさ」(ゴールデンボンバー楽曲の根底にあるもの 最新作『キラーチューンしかねえよ』から読み解く)と書いたことがある。やはり本楽曲も、鬱屈を抱えながらも、それを優しくつつみこみ、そして少し前向きになったところで締めくくられている。ドラマのテーマともリンクしているし、普遍性もある。大変いい仕事だなあ、としみじみ感じ入ってしまうのだ。

■藤谷千明
ライター。ブロガーあがりのバンギャル崩れ。執筆媒体は「ウレぴあ総研」「サイゾー」「SPA!」など。Twitter

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