サマソニのヘッドライナーに通底する独自のカラー 過去20年間のラインナップから考える

 だが、2007年に大きく色が変わる。明らかにロックとは距離が遠いアーティストや、まだキャリアの浅い若手バンドがヘッドライナーに抜擢された。1組はR&B・ポップアクトであるThe Black Eyed Peas。もう1組は、UKロックの新生児だったArctic Monkeysだ。ここからサマソニの「色」に変化が出てくる。2008年こそThe VerveとColdplayがヘッドライナーを取るが、2009年はポップアクトのビヨンセがヘッドライナーに抜擢されている。決定的になったのは、2010年のヘッドライナー。この年は、ジェイ・Zとスティーヴィー・ワンダーという、いわゆる「ロックアクト」以外の二組がヘッドライナーを取ることになったのだ。これは11年目にしてサマソニ初のことだった。ロックバンドをベースにしつつも、ポップアクトも積極的にブッキングしていく、そういうサマソニのカラーが明確になったのだ。

 その後も、年々、ポップアクトが積極的にブッキングされるようになっていく。年度によっては両日とも「ロックバンド」がヘッドライナーを務めることもあったが、その場合でも、重要な位置にポップアクトや、海外の音楽シーンを見通す上で重要な「バンド以外のアクト」「ロックというジャンル以外のアーティスト」を積極的にブッキングしていくようになる。ゼッドやカルヴィン・ハリス、アリアナ・グランデにファレル・ウィリアムス。そして昨年で言えば、チャンス・ザ・ラッパーはその代表であろう。何より、2015年頃から、一日は初期のサマソニの流れを踏襲したオルタナティブ、ラウド、あるいはパンク系の流れを組んだブッキングをメインに、もう一日は今の海外のポップスの流れを組んだブッキングを行うようになった。ロックというカテゴリーだけでなく、アジアで最も海外のポップミュージックが俯瞰できるような、そんなカラーを打ち出すようになったのだ。

 だからこそ、今年は最初にレッチリ、B’zをヘッドライナーとして発表しつつも、最後にはEDMやダンスというジャンルで海外のポップスシーンにその名を轟かせた、The Chainsmokersを発表したのだろう。今年のサマソニのラインナップにも、初期に見せていたような、オルタナ/ラウド/パンクロックのテイストを抑えつつ、きちんとポップミュージックの見取り図になるようなブッキングを行う、そんなメッセージが込められているように感じた。ステージごとに色やコンセプトを変えていくことで、古き良きロックバンドの愛好家にとっても、海外ポップスの最先端に触れたいと望む音楽リスナーにとっても、満足できるようなラインナップが発表されるのではないかと期待するし、3日間サマソニでライブを観ていたら、ある程度は海外トレンドのポップミュージックを俯瞰できるような、そんな贅沢な一日が過ごせるブッキングが発表されるのではないかと筆者は想像している。

 The Chainsmokersの他にも、今世界で人気のDJをブッキングするという話もあるので、その期待はより高まるばかりである。

■ロッキン・ライフの中の人
大阪生まれ大阪育ち。ペンネームにあるのは自身が運営するブログ名から。人情派音楽アカウントと標榜しながら、音楽メディアやTwitterなどで音楽テキストを載せてます。

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