メジャー初フルアルバム『ドリーム銀座』インタビュー

サイプレス上野が語る、仲間と作ったシーンとこれからに向かう姿勢「気持ちは青春時代のそのまま」

【サ上とロ吉】サイプレス上野とロベルト吉野「Yokohama La La La (Pro.DJ PMX) 」MUSIC VIDEO

これが地元の大人としての姿勢なんじゃないか 

ーー今回、苦労した曲とかはありましたか?

サイプレス上野:「Yokohama La La La」は、初めてオートチューンを使ったので、感覚を掴むのが大変だったかな。あと「青春の決着」は、メロディを考えたりもしたし、語りっぽい雰囲気のラップは今までやったことがなかったから。トラック的には今っぽいものなので、乗せ方としてリズムに合わせて乗せればいいんだけど、テーマ的にそういう雰囲気でもないなと思ったし。かと言って、普通にあるような語りっぽくなっても面白くないから、そこはすごく考えました。

ーー「青春の決着」は、どうして青春をテーマに?

サイプレス上野:「青春の決着」という言葉自体は、『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』を手がけた岡宗秀吾さんというテレビディレクターさんの『煩悩ウォーク』という本に出てきた言葉なんです。「この人たちは青春の決着を探してるんだな」みたいな一文があって、それがすげえ響いたんです。それで、そういう曲を作ろうと思って。

 あと、最近思ったこともあって……。地元の友だちとか仲間と飲み屋をやってるんですけど、そこの店には俺らと同じ世代から、フリースタイルから入った20代の若手まで、世代関係なくけっこう店に来てくれていて、気づいたらけっこう後輩も増えていて。そんな中で思ったのは、「未だにずっとやってんな」ってことで。もちろん俺らの先輩もいるけど、そこのクルーは「上ちょ(俺のあだ名)が仕切るたけし軍団」とか言われたりしつつ年齢的には俺らが上の立場にいるわけで。そこでのくだらないいざこざがあったりするし、昔話をしながら後輩に威張ってる奴とかが見えちゃったりとか。

ーー今の若手は、先輩の武勇伝を嫌がりますよね。

サイプレス上野:そう、めちゃくちゃ嫌がるじゃないですか。でも昔話をするほうは、めっちゃ楽しいんですけどね(笑)。だから、そういうことはもう止めましょうって、同世代に向けて歌ってるみたいなところがあります。過去にすがることはもう止めて、次に行こうぜって。

ーーヒップホップというもの自体が、ある種の青春の輝きのようなところがあるのでは。

サイプレス上野:ヒップホップはユースカルチャーですから、気持ちは青春時代のそのままって感じですよね。ただそんなことを言ってると、後輩が社長になってたりするから、年に一度会った時に「え!」って驚くことになるんです。「戸塚から離れたらこんなになるんだ!」みたいな。地元に居座ってるやつは、みんなボンクラばっかりなんで(笑)。一緒にいて楽しいんですけどね。

ーー上野さんの青春には、いつ決着が付くんでしょうか。

サイプレス上野:ずっと決着がつかないまま、永久に続いていくんだろうなって感じですよね(笑)。でも、馴れ合いになるのは嫌で。店に行くといつものメンバーがいつものようにいるし、作品を作れば作るほど、何だかそれを感じる。結局地元の夏祭りでもライブをやらせてもらったりとか、地元のじいちゃんばあちゃんとも付き合いがあるわけで。地元の小学校の低学年の子とかが、セッティングしてるところから興味津々で、「何やるの?」って聞いてきたりするんです。でもそこで、未だに「ヒップホップだぜ! イェー!」って自慢してる場合じゃないっていうか。ちゃんとしたライブを観せてあげることが、地元の大人としての姿勢なんじゃないかと思うし。

ーー周囲の反響はいかがですか?

サイプレス上野:「Yokohama La La La」なんかは、車好きなやつがめちゃめちゃアガると言ってくれていて。「ウェッサイ〜」って言いながら聴いてくれていて、それを聞いて「変わんねえなこいつら」って思ったり(笑)。とは言え、どこか少し大人になった感は、みんな感じ取ってくれているみたいで、その点では作って良かったなって思いました。今までみたいなゲラゲラ笑えて面白いでしょ! っていうだけじゃなくて、「渋いアルバムだな」って言われたりして。実際に「面白いだけじゃない」という部分も意識としてあったし。

ーー上野さんと吉野さん自身が、少し大人になったということでは?

サイプレス上野:どうなんでしょう(笑)。キャッキャするのも好きなんで、「ザ・グレート・カブキ」は、昔好きだったバンドのガスボーイズのオマージュみたいな感じで、俺と吉野の中学生時代を思い出しての遊びみたいなもので、未だにそういうことをやってると言う。電気グルーヴさんとかスチャダラパーさんとかが持ってるような、中学生の時の内輪ネタをやってるみたいなノリも出ていると思います。

ーー最後に『ドリーム銀座』というタイトルについて。ここにはどんな気持ちを込めましたか?

サイプレス上野:自分たちの地元に横浜ドリームランドという遊園地があって、2002年に閉園してしまったんですけど、そのすぐ横にあった商店街の名前が『ドリーム銀座』なんです。ドリームランドが閉園後は、どんどんお店がつぶれて寂れてしまったんですけど……。俺らにとっては、子どもの頃から買い物や遊びと言えばそこで、連絡を取らなくてもそこには誰かしら知り合いがいて。スケボーやってたり、ダンサーがガラスに姿を写して練習していたりして。何をするわけでもなく集まって、朝までダラダラしていると近所のおばちゃんが犬を散歩させていて、「あんた達まだいたの?」なんて言われたり。おじいちゃんとか会えば「おはようございま〜す」って挨拶して、一緒にワンカップ飲んだりとかしていて。そういう自分たちにとってのたまり場、遊び場みたいな意味です。「みんなもここに遊びに来れば?」みたいな(笑)。

(取材・文=榑林史章)

サイプレス上野とロベルト吉野『ドリーム銀座』

■リリース情報
『ドリーム銀座』
発売:2018年11月28日(水)
価格:¥2,778(税抜)
収録内容:
1.Intro (Pro.サイプレス上野、ロベルト吉野)
2.Yokohama La La La (Pro.DJ PMX)
3.メリゴ feat. SKY-HI (Pro.岩崎太整)  ※TVアニメ「グラゼニ」主題歌
4.上サイン (Pro.藤原大輔)
5.PRINCE OF YOKOHAMA 2222 (Pro.MurderFaktry)
6.2018⇄2222 (Pro.MurderFaktry)
7.ヒップホップ体操第三 (Pro.Yasterize)
8.ホラガイHOOK (Pro.石野卓球)
9.ザ・グレート・カブキ (Pro.Yasterize)
10.新生契り(Pro.STUTS、ロベルト吉野)
11.ムーンライト feat. mabanua (Pro.mabanua)
12. RUN AND GUN pt.2 feat.BASI,HUNGER (Pro.LIBRO)
※B.LEAGUE YOKOHAMA B-CORSAIRS 2018-19シーズン公式ソング
13.青春の決着 (Pro.ZOT on the WAVE)
14. NO LIMIT (Pro.DJ MISTA SHAR)

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