欅坂46『21人の未完成』は写真展のよう? 平手友梨奈、志田愛佳、原田葵らの写真から感じたこと

 今回の写真集でやはり注目したいのは、卒業生の中でも志田愛佳×細居幸次郎の「青い車」。境遇そのままに、作品からも、田舎に帰って昔の仲間に会ったような空気感が漂っている。あの頃の志田をキープしつつも、アイドルの魂が抜けた一般人に近い雰囲気で、まさに“今の志田愛佳”が見られる作品だ。このタイトルがスピッツの曲から来ているのであれば、最初の花束のカットといい、色々と意味深な作品だと感じる。実際に写真集が出版される直前に志田はグループを卒業した。

 そして休業中の原田葵×熊木優の「花を食べる」。かつて、植物に囲まれた部屋で過ごし、花を食べる少女「植物少女」という原田葵の個人PVがあったが、その世界の延長線上にあるような作品だ。内容の美しさはさることながら、それ以上に原田の成長した容姿にまず驚かされる。休業前にはすっかり小学生っぽさはなくなっていたものの、休業中にここまで大人っぽくなっていると、1期生最後の希望と言っても過言ではないほどのワクワク感が芽生え、復帰が楽しみで仕方ない。

 今回紹介したのはごく一部だが、作品それぞれに深く語れる要素が詰まった、実に読み応えある写真集に仕上がっている。カメラマンが自分の個性をどこまで出せるのか、またメンバーのセクシーな姿をどこまで見せられるのか、試行錯誤しながら限界ギリギリのラインで挑む姿が想像でき、そういったカメラマンとしての戦いが垣間見えるのもまた面白い。たとえ欅坂に興味がなくても充分楽しめる、むしろ写真好きの人にお勧めしたい内容になっている。またポートレート写真における一通りのパターンが網羅されているので、写真を学んでいる人、写真に関係した仕事をしている人には、ぜひ手元に置いてもらいたい一冊だ。

 こういう形で最後に21人が揃うというのもまた欅坂らしい。21人全員の集合が実現したこの写真集は、ファンへの最高のプレゼントであることは間違いない。

(文=本 手)

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