SHINee テミン、“日本語ポップス”としてのクオリティの高さ 『TAEMIN』収録曲のサウンドを分析
「Drip Drop」はいささか極端な例だとしても、たとえば新曲である「ECLIPSE」のコーラスやクライマックスで響くサイドチェインのかかったノイジーなシンセサイザーのサウンドは十分に攻撃的で、テミンの歌声との対比が絶妙だ。近年のレゲトンやチルなサウンドの流行をおさえつつ、ハーモニーや歌詞を通して耽美的な世界を覗かせる「MARS」のソングライティングやプロダクションも興味深い。いわゆるEDM的なビルドアップ-ドロップの構造にも目配せしつつ、より複雑なアレンジや質感を加えた聴き応えのあるサウンドが全編で展開する。
また、指摘しておきたいのは、こうしたサウンドが、単純に日本市場向けにローカライズしたというだけではなく、広く“日本語で歌われるポップス”として高いクオリティを達成しているということだ。もちろんその要因としては、テミンの日本語による歌唱の巧みさが第一にあるだろう。また、日本語詞を手がける作詞家として、J-POPのリスナーに馴染み深い名前としては、たとえばいしわたり淳治などが参加していることも要因のひとつとして挙げられる。巧みなソングライティング、先鋭的なプロダクション、そしてたしかな実力を感じさせる歌唱と三拍子そろった日本語のポップスとして、K-POPやJ-POPというくくりを外して耳を傾ける価値がある。
■imdkm
ブロガー。1989年生まれ。山形の片隅で音楽について調べたり考えたりするのを趣味とする。
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