YUIMETAL脱退のBABYMETAL、ユニットの変化と彼女の存在意義を追う

脱退が発表された今、改めて思うYUIMETAL像

 さて、ここからは筆者の主観を交えた意見に、少しばかりお付き合いを願いたい。YUIMETALが休演してから脱退するまでの約11カ月間は、BABYMETALにとっての過渡期だったように思える。Twitterを中心にさまざまな議論も繰り返されているのだが、なかでも目を引いたのは「BABYMETALとは何かが問われている時期」という意見だった。

 かつてBABYMETALの界隈では、その尖ったパフォーマンスや位置付けもあいまって「アイドルなのかメタルなのか」という議論が繰り広げられていた。しかし、2014年夏に行われたイギリスの大規模ロックフェス『Sonispere Festival UK』への出演などをきっかけにして以降、活動の軸足が海外へ移行してからは、本人たちの「BABYMETALというジャンルを作りたい」という意思へ誘われるかのように、次第にユニットそのものの存在感が強調されるようになった。

 しかし、YUIMETALが不在となって以降、今なお続いているのは「BABYMETALのあるべき姿とは何か」という問いである。誰もが納得する答えの出ない問題であるのは明白で、新たな体制を前向きに受け入れる声や、いまだ彼女のいないユニットに悲しさをおぼえる声など、さまざまな意見も交わされているが、少なくともYUIMETALの脱退やそれに伴う変化がある種の“踏み絵”となり、ファン同士であつれきが生じていることには若干の寂しさをおぼえる。

 また、昨年12月から現在までのBABYMETALを振り返るなかで、やはりどうしても出てくるのは「YUIMETALとは何だったのか」という一つの問いだ。これについてはBABYMETALそのものを考える以上に悩めるほどの難題であるが、あえて挙げるとするならば、ユニットの中でもっとも“成長”を味わえるメンバーだったのではないかということである。

 他のメンバーをみると、SU-METALはユニットの絶対的な象徴であり、MOAMETALは彼女がに付けられた“菊地プロ”という愛称からも分かるとおりのアイドル性の高さが端々から垣間見えていた。

 一方のYUIMETALは「YMY(=ゆいちゃんマジゆいちゃん)」という彼女を称える言葉からもにじみ出るほどの愛らしさがあり、もちろん優劣を付けるわけではないという前提ではあるが、ある種の“未熟さ”を兼ね備えていたことからBABYMETAL自体のアイドル性、すなわち“BABY”のフレーズに関連するユニットの核を担っていたような印象も受ける。

 しかし、彼女がいなくなった今、BABYMETALは新たな道を進み始めている。今年はアイドル界でも解散や脱退が目立ったものの、人数が3人から2人に減るというのはきわめてまれな例でもあるが、ダンサーの追加によりスケールダウンを防ぐなどの努力を続けているようにもみえる。

 また、一方で気になるのはYUIMETALの今後であるが、水野由結名義で出された脱退発表時のコメント「水野由結としての夢」という言葉は、2015年3月29日に行われた彼女たちの出自であるさくら学院の卒業式でも語っていたことだった。

 BABYMETALのメンバーとしても数々の功績を残してきたが、彼女はまだ19歳である。表舞台に帰ってくるのか否かなど、想像すればキリがなくなるほどだが、あどけない笑顔を浮かべつつみずからの可能性を広げていってほしいと願うばかりである。

■カネコシュウヘイ
編集者/ライター/デザイナー。アイドルをはじめ、エンタメ分野での取材や原稿執筆を中心に活動。ライブなどの現場が好きで、月に約数万円はアイドルへ主に費やしている。単著に『BABYMETAL 追っかけ日記』。執筆媒体はWeb『ダ・ヴィンチニュース』『クランクイン!』『ウレぴあ総研』、雑誌『日経エンタテインメント!』など。

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