SHERBETSはなぜ“宝物”なのか 結成20周年記念オールタイムベスト盤から麦倉正樹が考える

 浅井健一率いるSHERBETSが、結成20周年を記念したオールタイムベスト盤『The Very Best of SHERBETS 「8色目の虹」』をリリースする。CD3枚組+DVDで構成される初回生産限定盤と、CD1枚の通常盤の2フォーマットでリリースされる本作。初回盤の3CDは、初期・中期・後期に分けて、メンバー選出による、それぞれの時代の名曲が収められている。そこで本稿では、そのベスト盤のラインナップを眺めながら、改めてその歴史をひもときつつ、SHERBETSというバンドが辿ってきた道のりと、なぜSHERBETSが“宝物”と称されているのかについて、考えてみたい。

 BLANKEY JET CITYの浅井健一が、自身のソロプロジェクトとして立ち上げた“SHERBET”を母体として、1998年、浅井健一(Vo/Gt)、福士久美子(Key/Cho)、仲田憲市(Ba)、外村公敏(Dr)の4人で、正式にスタートした“SHERBETS”。SHERBET名義ですでに発表されていた名曲「水」をはじめ、当初はBLANKEY JET CITYの言わば“オルタナティブ”として、浅井の持つ詩情や繊細さにフォーカスを当てたプロジェクトと目されていたSHERBETSだったが、2000年にBLANKEY JET CITYが解散して以降は、浅井のメインプロジェクトとしてアグレッシブに活性化。とりわけ2001年には、「SANLIN BUGGY」、「カミソリソング」、「Black Jenny」という、いずれもロック色の強いシングルを立て続けにリリースするなど、ロックバンド=SHERBETSの名を改めてシーンに知らしめることになった。今回の初回盤ベストの「DISC1」は、この時期の楽曲が中心となっている。

 しかし2002年、浅井は渡辺圭一(Ba)、池畑潤二(Dr)と3ピースバンド、JUDEを結成。それに伴い、SHERBETSは、しばしのあいだ“冬眠”状態に入るのだった。そして、2005年、再び活動を始めたSHERBETSは、それから約3年のあいだに、4thアルバム『Natural』をはじめ、3枚のアルバムをコンスタントにリリース。それらはいずれも、すでに確立しつつあったSHERBETSの世界観を、より深化させる方向のアルバムになっていたように思う。というのも、この時期、浅井はSHERBETSと並行して3ピースのロックバンドであるJUDEを、そして2006年からは、パーマネントなメンバーを置かない自身のソロ名義での活動をスタートさせており、それら多彩なアウトプットを持つ状況のなかで、ソロで音楽制作も行っている福士久美子をはじめ、実はいわゆる“王道ロックバンド”とは異なるルーツとプレイヤビリティを持ったSHERBETSのメンバーが生み出す音楽の独自性ーー換言するならば、「この4人でしか生み出せない音楽」を、深く探るような時期だったのではないだろうか。今回の初回盤ベストの「DISC2」には、主にこの時期の楽曲が収められている。

 そんなSHERBETSに、ある変化が起こったのは、2011年のことだった。ファンクラブの会報誌で突如SHERBETSの解散を発表、その1カ月後にそれを撤回するという事件が起こったのだ。今では笑い話のように語られているこの騒動だが、それは不定期ながらも続いてきたSHERBETSというバンドが、いかに奇跡的な存在であるか(SHERBETSは、現在に至るまで、どのタイミングにおいても、“続けること”を目的としたことは、一度もないバンドなのだ)を、メンバーはもちろん、リスナーにとっても改めて感じさせるような出来事だった。一度は解散の方向へと傾きかけたSHERBETS。それを救ったのは、紛れもないその“音楽”だった。かくして2011年にリリースされた7thアルバム『FREE』以降、SHERBETSは、「その世界観を掘り下げる」と言うよりも、さらなる可能性を求めて、これまでとは異なるタイプの新しい音楽を、積極的に生み出すようになった。その時期から、現時点においての最新作である10thアルバム『CRASHED SEDAN DRIVE』までの楽曲をセレクトした「DISC3」。その冒頭に置かれた新曲「愛が起きてる」は、そんな彼らの“今”を、いみじくも表した一曲となっている。結成当初はあまり感じられなかったニューウェイブ的なアプローチや大胆なダンスビートの導入などーーそう、近年彼らは、またしてもさらなる活性化の時期を迎えているのだ。

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