SNS時代に音楽をリスナーへ届ける方法とは? SUKISHA、葉山柚子、夜中出社集団に聞いた

『Feat.』ファイナリスト インタビュー(後編)

夜中出社集団「バズを起こすことは隙間産業に近い」

 ボーカル3名(まさ、ネギ、P助)、マネージャー兼DJ(おばけ)、総合プロデューサー(ゆとり社長)、サウンドプロデューサー(久保木凌多)の6人で構成される夜中出社集団。アカペラアイドルグループ ・The Snatch!の元メンバーでもあり、株式会社yutoriの代表取締役であるゆとり社長がメンバーを集め、昨年結成したBlue Flamingoを前身にしたグループだ。クラウドファンディングで目標金額を大きく上回る71万円を調達するなど、コアなファンを巻き込みバズを起こしてきた6人は、グループの実態やコンセプトなど多くがいまだベールに包まれている。

【左から】おばけ、P助、ネギ、まさ

――まずは、グループを結成したきっかけから教えてください。

ゆとり社長:去年の4月に僕がメインになって結成しました。もともと学生時代にバンドを組んでいて、ファンにチヤホヤされて少し天狗になっている中、いざ社会人になってみたら全く自分の実力が通用しなくて……。その経験をきっかけに、僕と同じような境遇の人に向けてなにかできることがあるんじゃないかと思いはじめて、もう一度音楽をやってみようと夜中出社集団を始めました。

――ゆとり社長さんやP助さんは、The Snatch!として活動されていたんですよね。

ゆとり社長:アカペラアイドルグループで歌っていました。そこから、元グループのメンバーでもあるP助をはじめ、Twitterで面白そうだと思って声をかけたネギを中心に集まったのが、前身のBlue Flamingoです。もともと、アカペラからスタートしたグループだったので、人を癒すことができるハーモニーが僕らの強みになると思っていて。夜寝る前に現れてみんなが快眠できるようなお休みソングを歌うアカペラ集団として活動を始めたのが、ちょうど去年の夏頃です。

万歳!働き方改革!/夜中出社集団

――11月にCAMPFIREでクラウドファンディングを開始し、1カ月で目標の30万円を大きく上回る71万円を集めました。

ゆとり社長:お休みソングを生配信で届けたかったんです。毎日、みんなが疲れている夜10時半に、携帯を覗くと僕らがいて、その日のストレスを対話しながら浄化する。さらに、それを曲にできる存在になりたくて。各々で配信することはできますが、グループで毎日夜の10時半に集合するのって、一緒に住む以外の選択肢以外考えられなかったんです。一軒家に住むとなると、初期費用に60~70万かかるので、クラウドファンディングをすることにしました。クラウドファンディングは、応援してくれている人たちの熱量も高まるので、今後活動を続けて行く上での戦略にもなるかな、と。

――クラウドファンディングを始めた時のファンの反応はどうでしたか?

ゆとり社長:The Snatch!の休止から2年くらい経っていたので、目標金額は初期費用にして低めの30万円で見積もっていたんです。でも、僕らの予想以上の反響があって、スタートから3日で30万円を突破し、最終的にはお釣りがくるくらいの額になってました。

――当時を振り返って、71万円集まった理由はどこにあると思いますか?

久保木:The Snatch!の時に応援してくれたファンが、2年間離れずに根強く待ってくれたのが大きいですね。

痛勤リーマンズ/夜中出社集団

――そこから夜中出社集団にグループ名を変えて、『Feat.ソニーミュージックオーディション』に応募しファイナリストに選ばれた。

おばけ:みんなで仕掛けや戦略、コンセプトを固めていったのですが、夜中出社集団を価値あるアーティストにしていこうという方針に決まって。今回のオーディションのコンセプトである「自分たちをプロデュースできるアーティストを育てたい」という部分と僕らの方針は親和性があるなと感じたので応募しました。

ネギ:ゆとり社長はSNSの使い方が上手なんですよ。

ゆとり社長:プレッシャーをかけるのはやめてくれ(笑)。僕は株式会社yutoriという会社も運営していて、「古着女子」というInstagramのファッションアカウントを作ったところ、約半年で13万人くらいフォロワーが付いたんです。SNS上でみんなが求めているものを察知して、そこにアウトプットしていくことも得意で、The Snatch!の頃に配信した動画も5000~6000のいいねが毎回付いていました。みんなが求めているものに自分の好きな要素を上手く混ぜて、コンテンツを作ることには自信があります。

――ゆとり社長さんの中で、SNSでのバズの起こし方や方法論はありますか?

ゆとり社長:一言で言えば、隙間産業に近いです。意外性のあるものや誰もやったことのない組み合わせを出すと反響は良いですね。例えば、「インスタ×ファッション」はすでにやってる人がたくさんいるけど、「インスタ×古着」をやっている人はいなかったから「古着女子」はバズったし、The Snatch!だったら「アイドル×ダンス」「アイドル×バンド」はあったけど、「アイドル×アカペラ」は誰もいなかったんです。アカペラをやっている人は大人しい人が比較的に多いんですよ。僕は赤髪とか派手なキャラが取り柄だったから、アイドルとして活動することで新鮮さもあったし、より広い層にリーチできたのかなって。今回のオーディションでもその掛け算をどう作るかが重要かなと思っています。

ネギ:今、このグループにおける掛け算はどうお考えになってるんですか?

ゆとり社長:なんでお前が聞くんだよ!(笑)。掛け算として言えるほど、まだ完璧に整ってはいないので、仮説を出して探っていく感じかな。一旦、7月にコンテンツを出してその反響を見てから、答えが出ればいいかなって。コンセプトや企画はもちろん、どんな人にどう広げてもらうのか、それを行うための仕組みはすべて考えています。ただ、それが上手く機能するのか……楽曲面のクオリティや方向性はSNSの施策とは別になるので、そこはチームとして団結して作り上げていくポイントになると思います。

――今、言える範囲ではどのようなものを思い描いていますか?

ゆとり社長:僕たちは代弁者だと思っていて。夜中出社集団と名乗ってますけど、メンバー全員が会社とか社会の中では搾取されている側の人間というか。どうしようもない理不尽とか圧力によって、好きでもないことを強いられている人が感じる違和感っていろんなものがあると思っていて。その人たちの気持ちを代弁していく存在になりたいんですね。イメージはグラフィティーアーティストのバンクシーの思想に近くて、政治的な風刺を曲にできれば、と。

――ボーカルの3人はどうお考えですか?

ネギ:揶揄的で、めちゃくちゃポップっていう部分では、モータウンに近い音楽になるかもしれません。

久保木:社会風刺のメッセージを、例えばヒップホップのようなクールなサウンドに乗せるのではなくて、あえてポップなサウンドに乗せることによって、メッセージをそこまでシリアスにしない、ちょうどいい投げかけができるかなって。

ネギ:聴く側が「そうだ! そうだ!」となるのではなく、「うわ、確かにそうだわ」っていう反応がほしいですね。

P助:僕はこれからライブで人前に立つことも多くなっていくと思うので、観てくれる人の楽しめる空間が作れたらいいなと思っています。

まさ:パフォーマー各々の役割があった上で、お茶目な、わちゃわちゃしている感じを出していけたらいいですね。誰でもできる簡単な振り付けでファンのみなさんと一緒に踊ることで一体感を出したりとか。

ネギ:個人的な考えですが、ボーカルグループの場合は歌やパフォーマンスの面で個性のある人はあまりいないと感じていて。僕らの場合は一人ひとりの個性を引き立てていけたらと考えています。

――最後に、『Feat.ソニーミュージックオーディション』への意気込みを聞かせてください。

おばけ:みんなが興味関心を持って拡げたくなるものを作るという点においては、他のファイナリストの中でも僕らが一番長けていると思うので、ほかのグループよりも大きなバズを作っていけるよう頑張りたいですね。

ネギ:支援金の300万円を使ってバズるものが作れなかったら、この先も一生作れない。

ゆとり社長:使えるお金が今までで一番大きいので、音楽というマーケットでフルに使っていきたいです。ネギが言ったように僕らがこの3カ月で面白いものを出せなかったり、今後に確信を持てない事態に陥ってしまったら、このグループは終わると思っています。

■夜中出社集団 関連リンク
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(取材・文=渡辺彰浩)

■番組概要
『Feat.ソニーミュージックオーディション』
GYAO!  毎週金曜日配信
MUSIC ON! TV(エムオン!)毎週木曜日放送
※MUSIC ON! TV(エムオン!)は一週遅れての放送。
出演者:平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)、池田美優

番組視聴/オーディション特設ページはこちら

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■関連リンク
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Feat. ソニーミュージックオーディションTwitter

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