韓国フィメールラッパーの本格シーズン到来? Jvcki WaiからEXID LE、Heizeまでの歴史を追う

 そして2014年にラップサバイバル番組『SHOW ME THE MONEY』(Mnet/2012年放送開始)がブレイクしたことをきっかけに、その翌年にスピンオフ企画として『Unpretty Rapstar』の放送がスタートした。フィメールラッパーのみを集めた同番組では、上述のJolly V、KittiB、Tymeeなどそれまでこのフィールドで地道に鍛え上げてきた者から、アイドル出身や期待の新人まで様々なバックグラウンドを持つ者たちが集結し、実力を競い合った。

[Korean Reality Show UNPRETTY RAPSTAR2] One take Mission ‘Don’t Stop’ MV l Kpop Rap Audition EP.01

 シーズン3まで放送された同番組によって、それまでアイドルを除けばほぼ男性ラッパーのみにフォーカスが当てられてきた韓国ヒップホップシーンに変化が見られるようになった。Cheetah(チーター)、Heize(ヘイズ)、Jessi(ジェシ)、Kisum(キソム)、Giant Pink(ジャイアントピンク)などのフィメールラッパーたちは知名度を一気に上げ、彼女たちが男性ラッパーたちと肩を並べる機会がようやく訪れたのである。

 中でもHeizeは目を見張る活躍ぶりだ。彼女は今やテレビに広告に引っ張りだこで、10~20代の同性が最も憧れる有名人のポジションにまで上り詰めた。Heizeのトラックはラップよりも歌モノが多いのだが、曲の合間に時折披露される短いラップでもその実力をはっきりと確かめることができる。

헤이즈 (Heize) - MIANHAE (Sorry) MV

 同番組は実力派フィメールラッパーがヒップホップシーンでも日の目を見るきっかけとなっただけでなく、元SISTARのヒョリンやAOAのジミンなどといったアイドルのラップの実力を再評価する機会にもなった。時間をかけて大きく発展してきた韓国ヒップホップシーン全体から見た時、フィメールラッパーが長い間盛り上がりに欠けてきたことは事実だ。しかしJvcki Waiのような次世代ラッパーが登場するようになった今、個性の多様化や全体的なスキルの底上げなどを期待せずにはいられない。彼女たちの本格的なシーズンはまだ始まったばかりだ。

■鳥居咲子
韓国ヒップホップ・キュレーター。ライブ主催、記事執筆、メディア出演、楽曲リリースのコーディネートなど韓国ヒップホップにおいて多方面に活躍中。著書に『ヒップホップコリア』。
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