『ラブライブ!サンシャイン!! Aqours 3rd LoveLive! Tour ~WONDERFUL STORIES~』
Aqoursが全国ツアー初日で見せた、『ラブライブ!サンシャイン!!』2期総集編のような世界
劇中のキャラクターの個性が忠実に再現されるAqoursのライブでは、過去にも『ラブライブ!サンシャイン!! Aqours First LoveLive! ~Step! ZERO to ONE!!~』で桜内梨子役の逢田梨香子が、「想いよひとつになれ」で実際にピアノ演奏を披露したことも記憶に新しいが、Aqoursのライブの2次元/3次元の高いシンクロ率は、そうしたメンバーの様々な努力によって実現している。アニメの劇中のAqoursが様々なことを経験し成長していくのと同様に、シリーズ開始当初は駆け出しの新人声優だった実際のAqoursのメンバーも、その活動の中で様々な挑戦や経験を乗り越えて、「自分たちだけの輝き」を見つけてきたのだ。
続いてメンバーのソロ曲に突入すると、浮かび上がるのはAqoursの楽曲の多様性。ジュディ・ガーランドを筆頭にした往年のミュージカル映画曲を思わせる高海千歌の「One More Sunshine Story」からはじまり、国木田花丸のおっとりした魅力が絶妙に表現されたポップ曲「おやすみなさん!」、“堕天使ヨハネ”こと津島善子の魅力を全開にした、ワブルベースを取り入れたEDM「in this unstable world」、μ’sと同じ音ノ木坂学院からの転校生で、劇中でAqoursの作曲を担当する桜内梨子の「Pianoforte Monologue」などを次々に披露。以降は映像を挟んでAqours全員のライブが再開し、斉藤朱夏(渡辺曜役)がメインを務める人気曲「恋になりたいAQUARIUM」などを披露すると、続いて2期のダイジェスト映像もいよいよクライマックスへ。浦の星女学院の統廃合が決定した後の閉校祭で、全校生徒から「『ラブライブ!』で優勝し、学校の名前を残してほしい」と伝えられる印象的なシーンを経て、Aqoursのライバルとして知られる北海道の姉妹ユニット、Saint Snow(鹿角聖良/田野アサミ、鹿角理亞/佐藤日向)が登場! 2期の第9話で実現したコラボユニット・Saint Aqours Snowとして、円形のサブステージで「Awaken the power」をライブ初披露する。ここではサブステージの床がステンドグラスの柄に彩られ、アニメ本編でも披露された光景が再現された。
続く映像パートでは『「ラブライブ!」本大会』前の「Aqours!サンシャイン!!」という掛け声で観客が一緒に声を合わせ、舞台は『「ラブライブ!」本選』会場に。第12話で描かれた『「ラブライブ!」本大会』での披露曲「WATER BLUE NEW WORLD」がはじまり、ここまでで一番の祝祭感が広がっていく。とはいえ、この日何よりも印象的だったのは、続いてはじまった本編最後の映像パート以降の展開だ。スクリーンにテレビアニメ放送時には描かれなかった「ラブライブ!」決勝直後のシーンが映し出され、それぞれのキャラクターがAqoursや「ラブライブ!」への思いを語る見たことのない映像に観客がどよめいていると、大会MCによる「優勝したAqoursには、もう1曲披露していただきます!」というアナウンスが。より一層どよめく観客を前に「私たちは、優勝したんだ!」というセリフとお馴染みのイントロが響き渡り、Aqoursが登場して1期のOPテーマ「青空Jumping Heart」がスタートする。最後は〈はじまったときの/ときめきずっと大事にね〉と歌われるこの曲が、『「ラブライブ!」本大会』の優勝後に歌われていた事実に興奮を抑えきれない観客に、「みなさん、今日は本当に、本当に、ありがとうございました!!」と告げて本編を終えた。
アンコールは『Aqours NEXT Step! Project』のテーマ曲「Landing action Yeah!!」でトロッコに乗って会場を周回し、続いて2期のEDテーマとして物語を彩った「勇気はどこに?君の胸に!」を歌ったあとに、完全新作劇場版の公開日とタイトル、11月の東京ドーム公演の予定、最新シングルのリリースなどを発表。2期最終話のラストシーンで、別々の道を進むことになるAqoursが最後に浦の星女学院の体育館に集まって歌った今回のツアーのタイトル曲「WONDERFUL STORIES」を披露して、3時間を超える圧巻のステージを終えた。
新作アニメパートも加えて表現されたこの日の雰囲気は、Aqoursのライブでありながら、同時に新規カットを加えた2期の総集編のようでもあり、劇場版で物語が新たな場所に向かうその前に、Aqoursのメンバーと観客とが手を取り合って『ラブライブ!サンシャイン!!』の魅力を改めて振り返るような、メディアミックス作品ならではの魅力と可能性に溢れていた。11月に迫る『ラブライブ!サンシャイン!! Aqours 4th LoveLive! SAILING TO THE SUNSHINE』の会場・東京ドームは、彼女たちの先輩にあたるμ’sがかつてファイナルライブを開催した『ラブライブ!』シリーズの大切な場所のひとつ。それだけに、メンバーの公演に向けるプレッシャーも大きいことだろう。けれど、今のAqoursならば、『ラブライブ!サンシャイン!!』の劇中のキャラクターたちと同じように、きっと自分たちらしいやり方で、彼女たちにしか描けない景色を見せてくれるんじゃないか。ますますギアを上げていくグループの熱気が全編から感じられるような、素晴らしいツアー初日だった。
■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。